現在放送中のTBS系日曜劇場『アトムの童(こ)』(毎週日曜21:00~)で、山崎賢人(「崎」は「たつさき」が正式表記)演じる安積那由他と、松下洸平扮する菅生隼人の前に立ちはだかるIT企業SAGASの社長・興津晃彦役のオダギリジョー。余裕しゃくしゃくで不敵に笑うヒール役は、作品に深みを与えている。以前から俳優としての評価は高かったオダギリだが、近年さらにその勢いは増しているように感じられる。本作の中井芳彦プロデューサーが、作品を共にして改めて感じたオダギリの魅力について語った。

  • 『アトムの童』IT企業SAGASの社長・興津晃彦役のオダギリジョー

オダギリ演じる興津は、那由他と隼人が「ジョン・ドゥ」という共同名義で作ったゲームを、契約を盾に自身の会社から発売してしまったという因縁がある。そんな興津が次に目を付けたのが、新たなゲーム開発のために必要な特許を持っている「アトム玩具」という老舗おもちゃメーカー。業績が傾いていたアトム玩具を会社ごと買収しようとした興津だが、那由他と隼人の「ジョン・ドゥ」がそれを阻止。さらに深い対立構造になる。

中井プロデューサーは興津という役について「あまり完全ある悪という役にしたくなかったんです」とコンセプトを明かすと、「那由他たちも興津も、自分の信念に基づいて行動をする人で、どちらが悪いというわけではない。正しいと思っている者同士がぶつかり合うことによって、対立する構図にしたかったんです」と述べる。

そして、オダギリについて「とにかく台本の読み方がすごいというか、こちらが想像していない角度から興津という役をアプローチしていただきました。現場で見ていても『オダギリジョーってやっぱりすごい』と思うほどアイデアに富んでいるんです」と感嘆する。

そもそも興津のコンセプトとして、山崎や松下という若く勢いがある俳優が演じるキャラクターが、興津の前に出ると「負けるかもしれない」と思えるような存在感やカリスマ性を求めていた。その意味で「本当にオダギリさんがスマートでありながら圧倒的な存在感の興津を演じてくださっています。とても素敵なキャラクターになっていると思います」と絶賛する。

現場でのオダギリの立ち振る舞いについて「リハーサルをやって、こういう感じのお芝居でいきましょうという話になると思うのですが、本番でもそんな感じでやったあと、オダギリさんが『こういうパターンもやってみてもいいですかね』とご提案くださるんです。もちろん大歓迎で、こちらも『どんな芝居になるんだろう』と楽しみに見ていると、想像しないような角度のお芝居をされて、見ている方も心奪われてしまう。急遽そっちのカットを使いましょうという風になったことが結構ありました」と、中井プロデューサーはエピソードを披露する。

さらに中井プロデューサーは「その提案が決してウケ狙いとか自分を面白く見せたいとかではなく、オダギリさんなりにキャラクターを深掘りしたうえで提案してくださるんです。僕らってほぼ1年台本とずっと向き合っているのですが、それでも『そうきたか!』と思えるぐらいのものを出してくださるんです」と称賛は続く。

これまで放送された具体的なシーンを問うと「第1話の冒頭のゲームイベントで優勝賞金を渡すところで、興津が英語で呼びかけたりするところや、社長室で秘書と2人きりになったときの雰囲気とか、オダギリさんらしい役へのアプローチ方法だなと感じて面白かったです」と語った。

奥行きと懐の深さを見せるオダギリ。そんな巨大な敵と対峙する山崎や松下、(那由他と隼人が務める「アドム玩具」社長・富永海役の)岸井ゆきのにも大きな影響を与えているのだろうか――。

「直接本人たちに聞いたわけではないのですが、やっぱりすごさを感じているとは思います」と中井プロデューサーは語ると「このドラマの直前まで(オダギリが脚本・演出・編集・出演のドラマ『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』で)犬になっていた人が、今回はヒール役を演じているわけで、その振れ幅というのは現場のみんなも驚いていると思います。第5話の冒頭で、(那由他、隼人、海の)3人を呼びつけるシーンで、しゃべっている間に携帯で3人を撮り始めたんです。周りもびっくりしましたが、受け手の3人もすごく面白がっていました。ああいうのを見ていると、山崎さんたちもどこか触発されているのかなという印象はありましたね」と現場での存在感も大きいようだ。

今後は那由他たちと興津の関係性にも変化がみられるという。「今後キーパーソンとなる人物が登場し、オダギリさんもさらに面白いお芝居をしてくれています」と中井プロデューサーは期待をあおっていた。

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