“健気で明るい役”のイメージが強かった俳優・桜井日奈子。今回、テレビ朝日系金曜ナイトドラマ『余命3ヶ月のサレ夫』(毎週金曜23:15~ ※一部地域を除く)で挑むのは、夫を裏切り、不倫におぼれる“悪女”というこれまでにない役どころだ。
節目の30歳を目前に控え、「もう一皮むけたい」という思いから飛び込んだ本作。視聴者のフラストレーションを一身に背負う覚悟や、役への葛藤、そして演じることの面白さ——そのすべてを受け止めながら、“奔放系悪役ヒロイン・美月”という人物を体現していく。俳優としての転換期に立つ今、桜井が見据える“次のステージ”とは。
夫の死を願う“悪女”役に抵抗感も「役として割り切って見てもらえないことも…」
――今作の出演オファーを受けた理由を教えてください。
実は、前の冬に出演していた舞台『シャイニングな女たち』をプロデューサーさんが観てくださっていて、そこからお話をいただいたんです。これまで元気で健気な女の子、活発で明るいな役をいただくことが多かった中で、20代ラスト、来年30歳という節目に向けて、もう一皮むけるような役をやりたいと思っていたところだったので、「このタイミングで悪女が来たか!」と。これは絶好のチャンスだと思って、覚悟が必要な役だと分かったうえで、お受けしました。
――今回の役は、不倫をしている妻であり、さらに遺産を目的に夫の死を願う一面も持つ、いわゆる“悪女”です。演じるにあたって抵抗はありませんでしたか?
あります。余命幾ばくもない夫を裏切ることだったり、自分の幸せのために手段を選ばないところだったり……。私から見ると美月の魅力でもあるんですが、視聴者の方からすると嫌な女に映ると思うんです。
これまで良いイメージの役を演じることが多かった分、役として割り切って見てもらえないこともあるのかな、と不安もあります。ネガティブな反応が来る可能性も考えました。 でも今回は、見ている方のフラストレーションを引き受ける役割だと思っているので、そこはしっかり全うして、悪女としてきちんと葵くん(白洲迅)を裏切りたいと思っています。
“悪女”美月に共感できるポイント「本当は、美月も……」
――そんな中でも、美月に「ここは共感できる」「行動としては納得できる」というポイントがあれば教えてください。
美月ばかり悪く見られがちなところがあるかもしれないんですけど、そうさせた原因は葵くんにもあるよね、という話を白洲さんともしていて。
葵くんは一見良い旦那然としていますが、ややモラハラ気質なところがあったんじゃないか、とか。美月から見れば、彼は“幸せな家庭”が好きなだけで、美月のことをちゃんと見ていたのか、気にかけていたのかは怪しいところもあるんです。
本当は、美月も普通の幸せを夢見て、ずっと葵くんと一緒にいたいと思っていた過去があるんですよね。でも、一緒に過ごす中で気持ちが変わっていってしまった。
私は結婚や出産の経験もないですし、共感しきれる部分ばかりではないですが、自分の知っている感情を引っ張り出して、人を好きになる気持ちや「好きなだけじゃ一緒にいられない」という気持ちをひねり出して、役に重ねて演じています。
――「特にここを見てほしい」というポイントはありますか?
たくましく、自分の目的のために突き進む美月の“図太さ”を見てほしいです。
見ている方からすると、何も疑わない旦那を裏切ることだったり、すごくかわいい子どもを愛せないことだったり、理解しづらい部分が多いと思います。そんな中で、「自分は悪くない」と思いながら、自分を正当化して突き進んでいくのが美月というキャラクターかなと。
見ている方には、美月がどんどん追い込まれて壊れていく様をエンターテインメントとして楽しんでもらえるように、しっかり昇華させたいと思っています。
――白洲さん演じる葵との“幸せな夫婦”は、演じてみていかがですか?
葵くんは、本当に“きれい”すぎるんですよね。エリートサラリーマンで、毎朝早く起きてご飯を作って、家には大きな庭があって、週末は子どもと家庭菜園をして……。まさに幸せの象徴のような存在で。
だからこそ、「これはしんどいかもしれない」と感じるんです。この家庭を維持するには、“良い妻”でい続けないといけない。その息苦しさは、セットにいるだけでも伝わってきました。
物語が進むほど、2人は決別していくので、直接会うシーンも減っていくんです。電話越しのやり取りが増えて、久しぶりに会ったと思えば激しく言い合って、また別れる、という流れで。長セリフの言い合いは、プレッシャーを感じながら演じています。
30代を目前に控えて――「今が転換期」
――最初にもおっしゃっていたように、今年29歳で、来年30歳を迎える節目のタイミングを迎える中で、今回のように演じる役柄が広がっていることについて、どのように受け止めていますか?
とても嬉しいです。何年か前はまだ学生役だったり、元気な役が多かったのですが、最近は、今回のような悪女だったり、映画『SAKAMOTO DAYS』(公開中)でアクションをやらせてもらったりと、今が転換期だと思っています。
正直に言えば、これまでは「俳優業をやっているのに、お芝居で期待されていないんじゃないか」と感じることもあって、このままじゃいけないとも思っていたんです。だからこそ、このタイミングで「おもしろい役者だ」と期待してもらえるようにならないといけないなと。今が本当にチャンスだと思っています。
――そうしたチャンスに対しては、どう向き合うタイプですか?
思い切って飛び込むタイプだと思います。今回の作品も、かなり覚悟を決めていますし、自分にとって大きな挑戦です。これまで応援してくださっていた方には「ごめんなさい!」と思う気持ちもありつつ(笑)、でも前に進みたいなと思っています。
――SNSのコメント欄を拝見しましたが、新たな挑戦に対してファンの方からの前向きな反応も多く見られました。
本当にありがたいなと思いました。昔から応援してくださっている方にはドキドキさせてしまう作品になるかもしれない……ただ、役者としてもっとワクワクさせたいので、この挑戦を受け入れてもらえたら嬉しいです。
求められる役者とは「内面や人間性も含めて磨かれている」
――お話を伺っていて、お芝居が本当にお好きなんだなと感じました。この先の俳優としてのキャリアをどんな風に見据えていらっしゃいますか?
お芝居はずっと続けていきたいですし、できれば、生涯俳優でいたいと思っています。
私自身、「この人が出ているなら、この作品は絶対おもしろい」と思う俳優さんがいらっしゃいますけど、自分もそう思ってもらえる存在になりたい。生涯俳優でいられるのは、やっぱり求められ続けないとできないことだと思うので、「おもしろい役者だ」と思ってもらえることが大事だと思います。
――桜井さんにとって、求められる役者とはどんな役者だと思いますか?
役者としてどんな役でも演じられる、といったことももちろん大事ですが、それに加えて、お芝居にはその人の人間性が出ると思っていて。「お芝居はおもしろいけど、この人はちょっと……」と思う人の作品って、あまり見たくならないと思うんです。だから、内面や人間性も含めて磨かれている人が、求められる役者なんじゃないかなと思います。
■桜井日奈子
1997年4月2日生まれ、岡山県出身。2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」でグランプリを受賞し芸能界入り。2016年に俳優デビュー以降、ドラマ・映画・舞台と幅広く活躍。主な出演作に、ドラマ『そして、誰もいなくなった』『マル秘の密子さん』、『人事の人見』、映画『殺さない彼と死なない彼女』、『聖☆おにいさん ホーリーメンvs悪魔軍団』『SAKAMOTO DAYS』、舞台『パルコ・プロデュース2025「シャイニングな女たち」』など。6月26日には、主演映画『死神バーバー』の公開が控えている。




