――『仮面ライダーBLACK SUN』の原点というべき『仮面ライダーBLACK』はご覧になっていましたか。

オンエアしていたころは観ていなかったので、今回のお話をいただいてから、初めて観てみました。

  • 『仮面ライダーBLACK SUN』に出演する西島秀俊

――『仮面ライダーBLACK』は今から35年前となる1987年の作品でした。映像をご覧になったとき、どんな感想を抱かれましたか。

画面から、なんとも言えない迫力が伝わってきました。当時はこんな場所で、こんな危険な撮影をしていたのか……という驚きと感動です。生身の人間による動きをできるだけ尊重している、今の視点で見ると実に「豊かさ」を感じました。白石監督をはじめとする全員が、オリジナル『仮面ライダーBLACK』のいいところをどんどん吸収し、ちゃんと踏襲をした上で、新しい『仮面ライダーBLACK SUN』を作ろう、という意識を持っていました。 

――『仮面ライダーBLACK SUN』では過去(70年代)と現代、2つの時代にまたがって人間と怪人との争いが描かれるとうかがっています。ストーリーを知ったときのお気持ちはいかがでしたか。

50年間、ずっと愛され続けている仮面ライダーの「時間」を、白石監督や制作チームがしっかりと意識したからこそ、過去と現在、50年もの時間の流れを描くストーリーにしようと決まったのかもしれません。50年もの時の「重さ」を描くため、仮面ライダーと同じ齢の僕が呼ばれたのかなと思っています。

――撮影現場に入られたとき、特に印象的だった出来事は何でしょう。

特撮チームの経験値の高さが、現場ですごく反映されていたことです。撮影の段取りを組み立てながら、ここはリアル(現物)の煙を使おう、このシーンはCGで表現しようとか、経験の積み重ねを経ていなければ作り上げられないものを作っている様子が、とても印象に残りました。

――光太郎が劇中で乗っているオートバイ「バトルホッパー」は本作のハードな世界観を表すかのように、外観だけでも「凄み」を感じさせるマシンとなっています。バトルホッパーへの思いを聞かせてください。

光太郎のバトルホッパーと、信彦のロードセクターを作られた黒須嘉一朗さんには、以前からお世話になっていました。少し前まで、黒須さんが3年かけてカスタムしてくださったバイクに乗っていたんです。バトルホッパーを作られたとき、黒須さんは誰が南光太郎を演じるがか知らなかったそうで、「誰が乗るんですか」と聞いたら僕だったという(笑)。その後、黒須さんから「バトルホッパーをよろしくお願いします」というメールをいただきました。一度バトルホッパーにまたがったら、ものすごい迫力で怖いくらいだったんです。黒須さんに「このバイク、怖いんですけど」と言ったら、「それはそうでしょう。魂を込めましたからね」って(笑)。黒須さん自身も、仮面ライダーのバイクを作るにあたり、いつも以上に強い思いがあったんです。

――仮面ライダーとゴルゴム怪人との戦いは、他の白石監督作品に観られるようにバイオレンス色の強いものになっているそうですね。アクションシーン撮影時はどんな感じだったのでしょう。

今回のアクションチームの方々も白石組で、しかも仮面ライダーだということで、気合いが入っていた印象です。通常のアクションシーンだとカットを割っていくものなんですが、この作品では「ワンカットで行きます」ということがけっこう多く、段取りを覚えるのが大変でした。アクションディレクターのこだわりもあって、きれいでスマートな戦いというよりは、泥くさく、生々しい戦いを意識して、生きるか死ぬか、本能や感情をむき出しにして争うアクションを求めていました。今回、どの役者さんもすばらしい演技をされていて、非常に重いテーマ、今日的な人間社会の問題を描いているだけに、それぞれのキャラクターが「覚悟」を持ってぶつかっている感じがすごくあります。どの芝居も、どのアクションも生々しい迫力に満ちています。

――仮面ライダーファン待望の『仮面ライダーBLACK SUN』、西島さんから本作の見どころを教えてください。

スタッフみんながオリジナル『仮面ライダーBLACK』を愛し、尊敬しながら作っていました。昔からの『BLACK』ファンのみなさんに喜んでいただけるところがたくさんあると思います。そして、これまで仮面ライダーに触れたことのない方々でも、白石監督によるリアリズムを重視した「人間ドラマ」に引き込まれ、胸に響く作品になるのではないかと確信しています。ぜひ配信で、第1話を軽い気持ちでふと(笑)観ていただけたら嬉しいですね。そうしてくだされば、第2話、第3話……と面白さが加速していき、すべてのエピソードを楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。『仮面ライダーBLACK SUN』をぜひ楽しんでください。

(C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT