藤井聡太竜王に広瀬章人八段が挑戦する、第35期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)の第1局が、10月7・8日(金・土)に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で行われています。

前期の竜王戦は豊島将之竜王に藤井聡太三冠が挑戦。激戦となった第1局を藤井三冠が制すと、勢いに乗って一気の4連勝、初の竜王奪取とともに四冠を達成しました。その後、藤井竜王は王将も奪取して五冠、今年度はここまで叡王戦、棋聖戦、王位戦をいずれも防衛して、今回の七番勝負に臨みます。特に竜王戦のような持ち時間8時間の2日制ではめっぽう強く、これまで同条件の七番勝負は前期の竜王戦を含めて5回戦っていますが、20勝2敗という圧巻の成績を残しています。

対する広瀬八段は第31期竜王戦で竜王初戴冠。羽生善治九段を27年ぶりの無冠に追い込んだシリーズとして有名です。翌32期では豊島挑戦者に敗れて失冠しましたが、3期ぶりの番勝負登場で、復位を目指します。

両者の対戦成績は藤井竜王の5勝1敗。初手合いは2018年の朝日杯決勝で、角換わりから藤井竜王が名手▲4四桂を放って自身初の棋戦優勝を達成した一局で、鮮烈に印象に残っているファンも多いことでしょう。2局目が19年の王将リーグで、矢倉から広瀬八段が藤井竜王に最終盤で逆転勝ちを収め、藤井竜王の最年少タイトル挑戦を阻止した一局として知られています。両者の対戦は昨年10月の王将リーグ以来となります。

本局は開幕戦なので、藤井竜王の振り歩先による振り駒が行われ、広瀬八段の先手となりました。戦型はするすると角換わり腰掛け銀に進みます。

先手の広瀬八段が飛車先を2六の地点にとどめておいているのが広瀬八段の工夫。後に2五の地点に桂を跳ねる余地を残しています。古くからある工夫ではありますが、最近は早めに歩を伸ばす形が主流なので新鮮に映ります。

広瀬八段の工夫に相対することになった藤井竜王ですが、4筋で銀がぶつかった反動を利用して8筋で継ぎ歩攻めを見せるなど積極的な対応を見せており、局面は早くも中盤戦の難所を迎えました。手の進み具合を見る限りでは、藤井竜王も「十分に対策済みですよ」と言っているような展開です。

本局は2日制で持ち時間は各8時間。終局は翌8日の午後以降になる見通しです。

相崎修司(将棋情報局)

竜王防衛戦に臨む藤井竜王(右)と広瀬八段(提供:日本将棋連盟)
竜王防衛戦に臨む藤井竜王(右)と広瀬八段(提供:日本将棋連盟)