きょう5日にスタートする日本テレビ系ドラマ『ファーストペンギン!』(毎週水曜22:00~)に主演する奈緒。ファーストペンギン(=最初に荒海へ飛び込む勇気ある1羽目)のように、縁もゆかりもない漁業の世界に飛び込むシングルマザー・岩崎和佳(いわさき・のどか)を演じる。
古い常識や慣習を次々と打ち破り、しがらみだらけの業界で、まさかの大革命を巻き起こすという実話をモデルにしたサクセスストーリーが描かれる今作。先日、尊敬する吉田拓郎に「若いみんなのエネルギーが刺激になる」という言葉をかけられ、自身も「もっともっといろんなことに挑戦していこうという思いになれました」と決意したことを語る――。
■民放GP帯連続ドラマ初主演は「ヒーローになれるチャンス」
――今回のオファーが来たときの心境は、いかがでしたか?
最初にお話を頂いたときは、率直にすごくびっくりしました。民放GP帯連続ドラマの主演というのは夢にも思っていなかったことだったので、緊張もありましたし、ワクワクと不安な気持ちが混じった状態で企画書を頂いたんですけど、 (未知の世界に)飛び込んでいった主人公が、自分がいつかなりたかったヒーローの姿で、そのヒーローになれるチャンスを頂けるかもしれないという気持ちがすごく芽生えたんです。だから、この主人公、そしてモデルとなった坪内知佳さんの生き方に背中を押されるような気持ちで、この作品に参加させていただきました。
――森下佳子さんが脚本を担当されるドラマは初めてということですが、台本の印象はいかがですか?
森下さんが脚本をお書きになっているドラマを拝見して、会話からその人の中に眠っている気持ちがぶつかり合う瞬間に胸を熱くしていたのですが、今回の脚本でも1話の段階で和佳の本当の気持ちがあふれ出るシーンが最後にあるんです。私自身、自分が怒ったときとかに気持ちを強く言えるほうではないので、「このセリフを片岡さん(堤真一)にぶつけるんだ」と思うと、ちょっとドキドキして不安のような気持ちもあったんですけど、思い切り楽しんでやりたいなと思うワクワクする脚本でした。
――役柄に共感できる部分は、どんなところですか?
和佳は、“誰かのために頑張れる人”だというのをすごく感じたんです。私も自分のために頑張ることが結構苦手で、自分1人だったら「ここまででいいか」って限界を決めてしまうところがあるんですけど、みんなが幸せになれるかもしれないと感じられたときに、そばにいてくれる人のために頑張れるとか、自分ひとりじゃ出ないパワーが発揮されるというのは、すごく共感するところがあります。『ファーストペンギン!』というタイトルですが、決して和佳1人がファーストペンギンではなくて、一緒に事業立ち上げに挑む漁師たちみんなが漁業のファーストペンギンになるんだという気持ちが感じられる役柄だと思います。
■漁業へのイメージ変化「命と隣り合わせというのを痛感」
――「漁業」をテーマにしたドラマというのは、なかなか珍しいですよね。
そうですね。物語の説明で、「主人公がひょんなことから漁師たちのボスになる」とあるんですが、本当にこんな“ひょんなこと”があるんだと驚いて、“ひょんなこと”の意味を調べました(笑)。クランクイン前に山口県萩市を訪れ、そこで主人公のモデルとなった坪内さんとお会いする機会があったのですが、その時に、坪内さんがお世話になった方たちにご挨拶するというので同行させていただいたら、魚を食卓に届けるまでに一緒に試行錯誤して考えてくれた人たちがこれだけいるんだと思ったんです。「ありがとうございます」と言い合える関係の人たちがたくさんいることにも、すごく驚きました。
――今回の作品を通じて「漁業」に対するイメージに変化はありますか?
「漁」と聞くと、体力勝負ですごく大変なものだというイメージはあったんですけど、先日萩市を訪れた際に、夜、漁に出た船が戻ってくる様子を見に行かせていただいたんです。そしたら遠くに小さな光が見えて、一緒に来てくださった坪内さんが「あれは港に戻ってきてる船の光なんです。ここであの光を見ると、『ああ、今日も生きて帰ってきた』と思って、すごく安心するんです」とおっしゃったんですよ。そのひと言で、そこまで命と隣り合わせで、皆さん1回1回漁に出てらっしゃるんだというのを痛感しました。
――実際に坪内さんと対面されて、どんな印象を持ちましたか?
これまでいろんなメディアに出ていらっしゃって、私も元々は「たくましい」とか「強い」という印象を持っていて、それはきっと皆さんもそうじゃないかと思うんですけど、実は芯には「平和主義で優しい」というところがあるなというのを、すごく感じました。メディアに出ているときは、片岡役のモデルになった長岡秀洋さんと言い合いをしてるところが映っていて、男社会の中で強く、時には戦って生きている方という印象だったんですけど、坪内さんご自身も、「平和主義者なんです。普段は怒ることもそんなにないんです」とおっしゃっていたんですよ。
――そうした部分は、役にも取り込んでいるのですか?
そうですね。和佳という役にはもちろん脚色があるんですけど、ケンカしたり、ぶつかるシーンも多いので、そのときに根底に持っていたいのが、怒り慣れている人じゃなくて、強い思いがあるからこそそれがあふれて、ぶつかっているんだというところ。自己中心的じゃなくて、相手のためを思って叱るとか、もっと未来のことを思ってその気持ちが怒りとしてあふれ出るというところは、大切にしたいですね。