ホラン千秋が72%、後藤輝基が58%――これが何の数字かわかるだろうか。正解は、10代への“ニンチド”。顔写真やコンビ名を出さず10代にフルネームだけで調査したニンチドの結果に後藤は「逆に58%もあったんだ」と驚いていたという。

タレントの世代別のニンチドを切り口に、過去に一世を風靡したものを若い世代は知っているのか、逆に今流行っているものを上の世代は知っているのか、あらゆるものの「各世代でのニンチド」をクイズ形式で紐解いていくのが、後藤とホランがMCを務める『ニンチド調査ショー』(テレビ朝日系毎週木曜19:00~29日スタート、初回は2時間スペシャル※一部地域を除く)だ。今年4月、6月に特番として放送され反響を巻き起こしたクイズバラエティが早くもゴールデンのレギュラー番組としてスタートする。

今回は番組プロデューサーの増田哲英氏に、企画誕生の経緯やどの世代も楽しめる番組にするための工夫を聞いた。

  • 左からホラン千秋、後藤輝基=テレビ朝日提供

    左からホラン千秋、後藤輝基=テレビ朝日提供

■タレントのニンチド調査は「いつか怒られるんじゃないか(笑)」

――出演者のニンチドを発表するという禁断の取り組みが番組のフックの1つになっていますが、タレントさんに提案するのは怖くなかったですか。

いつか誰かに怒られるんじゃないかなと怯えながら始めましたが、まだ怒られずに済んでいます(笑)。少し前の時代なら、テレビはたくさんの人に見られているものだからそこに出ているタレントさんの名前は皆知っていて当たり前だという前提があったので、ヒヤヒヤすることはなかったと思うんです。でも「テレビ離れ」だと叫ばれている今の時代では、テレビによく出ていたとしても10代のニンチドはどうだろう……とタレントさんもドキドキしながら楽しめる。今やってみることで、新しく見えてくるものがあるのではないかと考えています。

――ニンチドを調査した中で印象的だったタレントさんを教えてください。

まずは梅沢富美男さん。60代以上は予想通りほぼ100%に近い数字を取っていたのですが、10代も96%ととてもニンチドが高かったんです。たくさんの番組に出演しているだけではなく、そこで必ず目立つ発言をされていて視聴者に大きなインパクトを与えているんだなと改めて感じました。

――ただ出演されているだけではなく、しっかりと成果を残すことでニンチドに繋がっているのが伺えます。

大久保佳代子さんは若手芸人さんたちと同じ回に出演してくれたのですが、10代にニンチド調査したところ、若い子に人気がありそうな若手芸人さんの誰よりもニンチドが高かったんです。大久保さんが「もっと頑張れよ!」と気持ちよさそうに激励しているのが印象的でした(笑)。

――お2人ともテレビで大活躍されているイメージが強いタレントさんなので、テレビの可能性を感じました。「テレビ離れ」と言われていますが、まだまだテレビが見られているということなんでしょうか。

「この番組を毎週必ず見る」とテレビに対して前のめりな若い子は少なくなってきたかもしれません。でもこの結果から、意外と皆テレビを見ていて、誰がどういうことをやっているかちゃんと記憶に残っているんだな、まだキャッチしてくれる環境はあるんだな、と。ということはあとはテレビが面白いボールを投げるだけじゃないか? と気持ちが引き締まりました。この番組でも、タレントさんのニンチドを調べるという切り口のボールを投げることで、若い世代にも「ちょっと変わったことしている番組だな」とキャッチしてもらえたらうれしいと思っています。

■『新春かくし芸大会』を10代が1人も知らなかった

――タレントさん以外にも、さまざまなものの世代別ニンチドを調べてクイズにしていますが、この企画はどのように生まれたのでしょうか。

毎年お正月に放送している『おしょうバズTV』という特番の中で、昔は当たり前に皆知っていたものを、10代の子が知っているか聞いてみようというコーナーを企画したのがきっかけです。他局の番組なんですけど『新春かくし芸大会』や『忠臣蔵』について聞いたら、なんと100人中1人知っているか1人も知らないかという結果でした。それがすごく衝撃で。他にもこういうものがたくさんあるだろうから、いちコーナーではなく番組の規模でやってみたいなと企画書を作り始めました。

――『かくし芸大会』のニンチドは衝撃です。番組化を目指す上でこだわったポイントを教えてください。

昔のものを10代の子が知らないことを上の世代が馬鹿にするような目線ではなく、時代がこれだけ変わってきていて、上の世代が古いのは自分たちなんだと気付くことができる番組作りを目指しました。「昔は景気が良くて楽しかったよね、それなのに今は」という閉塞的な考えは排除して、「これだけ変化があってさらに面白い時代になっているよ、だから新しいものを知っていこう」と今の時代に対して前向きな気持ちになっていただきたいというのがテーマです。だから若い世代に昔のものについて聞くだけではなく、上の世代にも今流行のアーティストを聞いたりと、それぞれの世代について知ることのできる番組を目指してます。

昔は新しい世代の若者を表現する「新人類」という言葉がありました。「これまでの価値観が通じない奴ら」というネガティブな意味で使われることも多かった言葉です。大人が若者を区別するために作った言葉は使いたくないなと思ったので、同じく「Z世代」という言葉もこの番組では使っていないんです。上の世代が昔を振り返るとき「自分が10代の頃は」という言い方はできますが、「自分がZ世代の頃は」という言い方はできませんしね。誰にでも訪れる「10代」「20代」という言葉を使うことで、上の世代と若い世代が繋がっていることを表現していきたいと考えています。