甘さと優しさ、そして力強さの同居した特別な歌声で愛を歌い上げる唯一無二の表現者として、常に輝き続けているChara。ディズニープラス「スター」の日本発オリジナルドラマシリーズとして9月14日より配信される『すべて忘れてしまうから』では、1996年公開の『スワロウテイル』以来、実に26年ぶりとなる女優業にトライ。彼女の心を突き動かしたものは一体、何だったのか。デビューから30年を超え、50代となった今の心境までを語った。

  • Chara 撮影:蔦野裕

燃え殻の同名エッセイを原作に、ハロウィンの夜に突如姿を消した恋人をめぐる、ミステリアスでビタースイートなラブストーリーとなる本作。阿部寛演じる、ミステリー作家“M”が、消えた恋人“F”を探すうちに、“M”の知らなかった“F”の一面や秘密が明らかになっていく。ドラマ作品への参加自体、初となったCharaは、“M”が通う行きつけの店であり、ハロウィンの夜に“F”が消えた場所でもある、物語のキーとなる舞台“Bar 灯台”のオーナー、カオル役を演じた。

岩井俊二監督による『PiCNiC』と『スワロウテイル』で女優としても強烈な存在感を発揮して、観客を魅了したChara。久々に女優としての彼女が見られるというニュースが舞い込み、驚きと喜びを味わった人も多いはずだ。本作のオファーを受けた理由とはどのようなものだったのだろうか。

Charaは「3人の監督さんとプロデューサーの方が、会いに来てくれて」と監督を務める岨手由貴子氏、沖田修一氏、大江崇允氏、プロデューサーらの熱意が伝わったそうで、「まずはこんな私でもいいのか、確認しなきゃいけないじゃん? そうしたら『そのままのCharaさんでいいんです』と。“そのまま”というのがまた難しいなと思ったんだけど」と笑いながら、「カオルさんが、音楽を愛している役だったことも大きいかな。あと今回のドラマには、エンドソングに毎回違ったアーティストさんが登場して、演奏するシーンがあって。音楽の使い方もとても面白いドラマだなと思った」と音楽と密接に関わった作品、役柄だったことが大きな理由だという。

Charaの存在が惚れ惚れとするような特別なカラーを作品に加えているが、26年の間、女優業に携わっていなかったことについては、「音楽と俳優、両方やったら大変じゃん?」とにっこり。「元旦那さんが役者さんだったので、同じ畑にいるのはあまりよくないなとも思って。もう離婚してから長いし、あとは時間の使い方というか、音楽をやる時間しかなかった感じかな」と素直な胸の内を吐露する。

■役者とミュージシャンは「全部が全部違うとは思っていない」

久々の女優業とはいえ、Charaは「私は、日常からありのままで生きていきたいタイプ。音楽の人間がやってきて、逆にスタッフさんの方が緊張していたんじゃないかな?」と自然体で現場に臨んだという。

「役者とミュージシャンって、全部が全部違うとは思っていなくて。私はソロで音楽活動をしているけれど、セッションをする時もあるので。誰かと『ローリン!』ってなるのは、いつもやっていることもでもあるんだよね」と集合体でものづくりをしていくという意味では、役者とミュージシャンに壁を感じていない様子だが、「今回はとても人数の多い現場だったし、いつもとは畑の違う人たちと会うこともできる。メンバーが変わって、たくさんの人と集中して『ローリン!』となると、また新しい面白さがありました」と新鮮な刺激を受けたと話す。

演じたカオルとの共通点は、「女性でシングルマザーで、息子もいるところと、音楽を愛しているところ」と思いを巡らせたChara。

自身と音楽は切っても切り離せないといい、「娼婦のグリコという役を演じた『スワロウテイル』は、彼女が『YEN TOWN BAND』というバンドのボーカルになっていくお話だったんです。そういう役は演じやすいけれど、私は根っからの役者魂があるタイプではないから」と告白。続けて「これは人に言われて気づいたことなんだけど、やっぱり私は音楽的に生きているんだと思う。『話している時も、歌っているように聴こえる』って言われたことがあって。そう言われてみたら、そういうところがあるかもね。逆にいうと、歌う時は“話すように歌いたい”と思っている」と明かすが、たしかに彼女の歌声が優しく、時に力強く心に響くのは、話しかけられているような体温が伝わってくるからだと感じる。