コロナ禍のこの数年間で、働き方は大きく変化しました。「リモートワークを導入するか」「テレワークでの効率的な働き方とは」「従業員をどのタイミングでオフィスに戻すか」、そして、感染症が再度広がりを見せる中、「従業員の健康を守りつつ、生産性とエンゲージメントを高めるにはどうしたらよいのか」など、企業は課題を突きつけられています。

2022年4月に日本生産性本部が発行した「第9回働く人の意識調査」によると、在宅勤務の満足度は84.4%と過去最高を記録しています。また、これまで在宅勤務のメインの課題は椅子や机などの環境でしたが、今回はそれらが減少し、代わりに「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」が微増しました。

今では「会議の時だけ出社」や「暑いから在宅」など、ハイブリッドな働き方が広がりつつあります。しかし、「全員オフィスワーク」や「全員リモートワーク」よりも、「一部の人がオフィスワーク」「一部の人がリモートワーク」のほうが、あらゆる面で管理が難しくなります。

ハイブリッドワークに必要なスキルは”共感力”

全員がテレワークしている時は全員が同じ境遇にいるため、全員でオフィス出社している時と似たような環境です。しかし、ハイブリッド環境は異なります。何気ない雑談を通した情報の共有がテレワーク中の従業員には伝わらない、出社中の従業員の移動時間を配慮した会議時間の設定が必要であるなど、配慮すべき部分が増えることは必然です。

しかし、Citrixが最近行った調査「Work Rebalanced(ワーク・リバランス)- The Citrix Hybrid Work Report(シトリックス ハイブリッドワーク・レポート)」によると、ビジネスリーダーの63%、従業員の69%が、心の豊かさには対面での交流が欠かせないと回答しています。さらに、社員とリーダーの両者の61%が、対面して仕事をすることで創造性と革新性が高まると回答しています。

リモートワークの柔軟性を生かしながら、対面での仕事による心理的なメリットも得られる環境はハイブリッドワークの大きな利点とも言えます。そのハイブリッドワークの利点を生かすには、対面・非対面の境遇の差を埋めるソフトスキル、共感力が必要と言えるでしょう。

遅れをとる日本の働く環境

テレワーク勤務には、自己管理能力や、コミュニケーション能力など、これまでとは違った面でさまざまなスキルが求められました。しかしハイブリッドワークを成功させるには、企業側の働く環境づくりにおけるスキルアップ、すなわちテクノロジーによる変革もまた求められます。

Citrixは、前述の世界8カ国・8業種に及ぶ世論調査「Work Rebalanced」において、この変革の最中にある従業員とビジネスリーダーの意見をまとめました。同調査は、テクノロジー、柔軟性、信頼性、コラボレーションという4つの主要な柱を活用し、組織が直面する課題と再編成を理解することを目的とした調査を行いました。

日本を含んだ本調査では、ほぼ全てのカテゴリーで日本が最下位にランクインしています。テクノロジーの側面だけではありません。従業員が組織への「信頼と共感」を評価したスコアリングでも日本が最下位となっています。この状態を打破するためには、どうしたら良いのでしょうか?

テクノロジーが支えるハイブリッドワーク

まずテクノロジーの側面ですが、ハイブリッドワークの時代には、ビデオ会議、文書コラボレーションツール、仮想デスクトップ、メッセージアプリなどのテクノロジーは、単に仕事の遂行を支援するためのツールの集合体ではなく、組織をまとめる存在です。

例えば過日、Microsoft Teamsの世界規模の障害で、半日仕事ができず途方に暮れ、ひっそりとパソコンを閉じ、何も過ごさず終わった人も多かったのではないでしょうか?

それほどまでにテクノロジーがビジネスの要となっているのにもかかわらず、会社が提供するテクノロジーが期待に応えていると答えたのは日本ではわずか12%で、他の7カ国と比べ最下位となっています。

必要なのは、時間を捻出できるテクノロジー

ITはあくまで私たちの仕事を支えるツールです。障害やソフトウェアアップデートのために、数時間仕事ができない状況などあってはなりません。同調査では、ファイル検索、パスワード紛失、二段階認証など、テクノロジーによって失われている生産性が1日あたり約1時間にも及ぶ可能性があると示されています。

ハイブリッドな働き方が進むにつれ、テクノロジーの力がより必要となってきます。どこからアクセスしても同じ使い易さを提供しつつ、ハイリスクな環境でもユーザーに不便さを感じさせずデータを脅威から守る必要があるからです。

かつてはメールだけ見ていればよかった連絡方法も、Microsoft TeamsやSlackなどさまざまなアプリが乱立しています。こうした乱立は生産性とエンゲージメントに悪影響を及ぼします。テクノロジーは、この複雑な環境を簡素化・合理化することで従業員の仕事の生産性を上げていく力となる必要があるのです。

そのためにも、仕事上で使うテクノロジーもソーシャルメディアやゲームといった消費者用のアプリのような使い易さを実現し、自宅からでもオフィスと同じ環境で働けるようになることが重要です。

従業員のITスキル向上を求めるのではなく、企業が従業員の生産性を高め、よりセキュアな環境を提供するDX(デジタルトランスフォメーション)を行い、より使いやすいツールを提供することによってテクノロジーによる時間のロスを減らすことが必須なのです。