緊急事態発令後、会議やセミナー、採用面接までリモート会議で行われるようになりました。各社さまざまなリモート会議システムを導入し、リモート会議を設定する際に「普段お使いの会議ツールはなんですか?」と質問し、私たちは打ち合わせをする相手に合わせて、会議ツールを使い分けるようになりました。

メールの代替ツールとして、積極的に導入が進んでいるチャットアプリも同様です。仕事のスタートは「メールチェックから」だったのが「Slack, Teams, Chatworkの確認、そしてメール」といったように、私たちの働く環境は便利になると同時に複雑になっています。

全米のIT関連経営者1,000人と従業員2,000人を対象にCitrixが行った調査 「Work YouWay」によると、64%の従業員が、新型コロナウイルスによるパンデミック前よりも多くのコミュニケーションツールやコラボレーションツールを使用し、33%が1日に10~20個のツールを使用していることが分かりました。また、71%がこれらのツールによって仕事がより複雑になったと回答しています。

勤怠システム、営業管理システムなどアプリケーションの切り換えを1回行うのに5分から10分要すると言われていますが、1日に10回アプリケーションを切り換えるとすれば50~100分が失われることになります。さらに、アプリケーションの起動を待つために、20~50分が無駄に費やされていることになります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、いつでもどこでも仕事ができるようになった代償の一つが「集中した作業時間の確保」です。リモート会議中に資料作りをしたり、セミナーを聴講しながらメールやメッセージの確認をしたりすることが可能になり、私たちはこれまで以上に注意散漫になっています。

より大切になってくる従業員のためのユーザーエクスペリエンス

コンシューマーアプリケーションのユーザーエクスペリエンス(UX)は日々改善されています。例えば、Amazonで買い物をした時のリコメンド機能の進化により、「気がついたら思っていたよりも多くの物をカートに入れていた」なんて経験をした人は多いでしょう。デリバリーサービスはお昼頃になれば通知機能でランチの配達を検討するよう促し、銀行のアプリは大きな取引が発生した時に知らせてくれます。

売り上げや利益に直結するため、UXは頻繁にアップデートされています。しかし、業務で使用する機関システムはどうでしょうか?私たちは、勤怠ソフト、会計ソフト、顧客管理ソフトなど、さまざまなアプリケーションを切り替えながら仕事をしていますが、アプリケーションはそれぞれ使い勝手が異なります。それに加え、テレワークの普及で、複数の会議ソフト、コラボレーションツール、ファイル共有ソフトなど、多くのツールがその環境に追加されています。

そして、私たちはより多くのタスクをこなすことに執着し、新しいイノベーションやアイディアを考え出す時間を奪われつつあるのです。

  • コロナ禍に導入されたデジタルツールが与えた影響は? 資料:調査「Work Your Way」

創造性も向上するワークプレースとは?

私たちの働き方は変化しており、人々は以前のような働き方には戻れません。同調査では、回答者の約90%が、パンデミック後も自宅やオフィスで仕事を続けられる柔軟性を求めていると答えています。調査対象となった意思決定者の46%が、オフィスはチームのつながり、コラボレーション、イノベーションの拠点であり、自宅は個人の作業や活動に集中する場だと考えています。そして、従業員の49%がそれに賛成しています。

働き方がよりハイブリッドになる中、企業は、物理的な場所を問わず、一貫して安全で信頼性の高いツールを従業員に提供し、一人ひとりに最適な方法で仕事ができるように環境を整備する必要があります。

テクノロジーが従業員エクスペリエンス(EX)の妨げになる可能性は否定できません。従業員が求めているのは、よりシンプルな働き方であり、テクノロジーによって日々の人間関係におけるすれ違いや雑音が排除されることです。

そして、新しいやり方の習得を強いられるのではなく、自分のワークスタイルに適応するテクノロジーを求めています。さらに、従業員がビジネスの成功を望むのであれば、企業はそれを提供する必要があるのです。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング統括本部 エンタープライズSE本部 本部長
グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。