災害大国の日本において、防災対策はとても重要です。9月1日からスタートした防災週間では、多くのメディアが災害時の対策や防災グッズの確認など、災害対策への意識向上のための情報発信を行いました。

これまでも企業は、BCP(事業継続計画)の一環として、防災対策に取り組んできました。オフィスに全社員が出社して働いていた時は、避難訓練などを通して防災に対する意識を向上させることが可能でしたが、テレワーク中の従業員の対策はできているのでしょうか?災害時のガイドラインや事業継続のための連絡などの手順などは定まっていたとしても、実際は豪雨や地震といった自然災害が発生した際は、自己判断で対策をとることになっている企業が大半だと思います。

企業は、従業員とその家族の命と生活を守るために、個人の状況に合わせた危機管理体制の構築と事業継続計画の実行を行う必要があります。

防災に対する意識の向上を

まず、企業が行える防災対策の一つが、意識向上への取り組みです。急遽始まったテレワークがなし崩しに1年以上続いているという方も多く、働く環境は整っているとしても「もしもの時」への対策を意識して働く環境を整えている人は少数派です。

快適なテレワーク環境を実現するITソフトウェアを提供し、テレワークによる働き方改革を支援するシトリックスでは、従業員の安否確認システムの導入や危機管理委員会の設置だけにとどまらず、普段のコミュニケーションを通して、防災への意識を高める活動を行っています。

シトリックスでは、従業員エンゲージメントの向上を目的としたイベントを行っています。その1つである「テレワークに効くロジカルインテリア セミナー」では、防災の観点からのインテリアのアドバイスを組み込みました。また、イベントに合わせてテレワーク中の従業員に防災グッズを配布するなど、意識向上に向けて積極的に取り組んでいます。結果的に、Great Place to Work Institute Japanが行った調査では、労働環境の安全面が高く評価され、2021年版の日本における「働きがいのある会社」への認定にも結びつきました。

テレワーク下での避難訓練の実施

オフィスで行っていた避難訓練や防災ガイドライン確認などをテレワーク環境下でも徹底し、危機の事前事後における行動のとり方を個々の従業員に合わせて管理し、事業計画を設定していくことが重要です。

これは、安否確認メールを送付してそれにきちんと回答するかを確認するだけではなく、実際の避難訓練と同様、想定された災害時にテレワーク中でも適切な行動が取れているかを確認する必要があります。

このような訓練を通して、緊急事態時に、企業と従業員が自分の身の安全を最優先に確保して良いという共通認識をすることが可能になります。テレワーク中は実際の被災状況の詳細を企業側で確認することは難しく、従業員の判断に任せなければならないことも多くあると考えられます。だからこそ、そのような機会を設けることは、重要になります。

ITのBCP(事業継続計画)も忘れずに

働く従業員を守る対策は最重要事項です。しかし、IT資産管理も保護が必要です。本部が被災してしまった際の重要なデータのバックアップやセキュリティなどは以前から検討されています。しかし、テレワークをしている従業員が被災してしまった場合、どのように事業を継続、補完していくことができるでしょうか。企業はシミュレーションし、検討する必要があります。

柔軟な働き方を後押ししてきたクラウドやVDIの活用は、災害時の備えとしても適しており、たとえ端末に被害があったとしても、データの紛失故障などによる長期的な事業の中断から企業を守ることが可能です。

テレワークに伴い、働き方は多様になってきています。だからこそ、個々の仕事拠点の災害リスクを事前に把握し、危機が迫った時には会社側から避難勧告や危機管理体制をとるように指示をすることが不可欠です。そして、災害時に従業員が「自分は大丈夫」といった認識のもと仕事を続け、被災することにならないように会社側が避難指示を出せるような仕組み作りが重要になります。

宮澤敏明(みやざわとしあき)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング統括本部 ネットワークSE部 部長

ダイヤルアップやメインフレームの時代からネットワークを担当。様々な基盤で活用されるアプリケーションインフラのソリューションを提供し、企業WANからオンプレデータセンターやクラウドまでエンタープライズITの進化を支援。