何かを思い出すシーンなどで使われる「彷彿とさせる」という表現。テレビや書籍などでも見聞きする言葉ですが、意味や「彷彿させる」との違いがよくわからない人もいるでしょう。
本記事では、「彷彿とさせる」の意味や使い方などを例文つきで解説。また、「彷彿とさせる」と「彷彿させる」の使い分けや、「彷彿とさせる」の英語表現などに関してもあわせてご紹介します。
「彷彿」とは? 読み方と意味
まずは、「彷彿」の読み方と意味を確認してみましょう。「彷彿」は「ほうふつ」と読み、3つの意味があります。
1つ目は、「ありありと想像したり、あるものを思い浮かべたりすること」。2つ目は、「ぼんやりしていることやぼんやりしているさま」。3つ目が「よく似ている様子」となります。
「彷彿とさせる」の意味は「思い起こさせる」
「彷彿とさせる」の形で「彷彿」を使う場合は、3つの意味の中でも「思い浮かべること」の意味で主に使用されます。
「はっきりと脳裏に浮かぶこと」や「目の当たりにみる思いをするさま」などのニュアンスを含んでおり、「思い起こさせること」を意味する表現となっています。
「彷彿とさせる」と「彷彿させる」の違いとは?
「思い起こさせる」という意味の「彷彿とさせる」ですが、テレビや書籍などでは「彷彿させる」という表現が使われることもあります。
「彷彿とさせる」と「彷彿させる」の使い分けには悩みがちですが、実は意味や活用の仕方によって、間に「と」を入れる場合と入れない場合、どちらでもいい場合の3パターンに分かれます。
ここからは、「彷彿とさせる」と「彷彿させる」の違いや使い分けに関して解説しますので、用法を確認しておきましょう。
「彷彿とさせる」を使う場合
「と」を入れるパターンとしては、副詞的に使う場合が挙げられます。例えば「彷彿としてよみがえる」や「彷彿としてあらわれる」などという場合、間に「と」を入れる形で使用されます。
これは「愕然として」や「漠然としていて」などの表現と同じ使い方です。例えば「愕然として言葉を失った」などという場合に、「と」を抜いて「愕然して」ということはありません。
このようにほかの表現の用法に当てはめて考えると理解しやすくなりますので、覚えておくといいでしょう。
「彷彿させる」に使う場合
「彷彿」を「はっきりと眼前に見せる」というニュアンスで使う場合は、基本的に「と」が間に入りません。
例えば「彼の部屋の様子は、彼が最後に見た情景を彷彿している」という文章の場合、「(部屋の様子が)彼が最後に見た情景を眼前に見せている」という意味になるため、「彷彿している」の形で使われます。
これは「~を再現している」や「~を示唆している」などと同じ使い方です。「再現としている」や「示唆としている」などの言い回しがないことに気づくと、理解しやすくなるでしょう。
「彷彿とさせる」「彷彿させる」どちらも使える場合
「と」を入れる場合と抜く場合がある「彷彿とさせる」ですが、「~が眼前に見える」や「脳裏に浮かぶ」のニュアンスで使う場合はどちらでもかまいません。
この意味の場合は、語構成が「彷彿と(タリ活用形容動詞)+する(動詞)」のパターンと、自動詞「彷彿する」のパターンの2種類に及ぶためです。
例えば、「父の振る舞いに祖父の面影が彷彿とする」という文章を「祖父の面影が彷彿する」に言い換えても問題はありません。
「彷彿とさせる」、「彷彿させる」の両方ともよく流通しているのは、このようにどちらも使えるケースがあるからでしょう。
「彷彿とさせる」の類語・言い換え表現
言葉の意味について理解を深めるには、類語や言い換え表現を知っておくことが効果的です。
「彷彿とさせる」にも似た意味を持つ言葉がいくつかありますので、それぞれの使い方などを確認しておきましょう。
(1)連想させる
「連想」は、「ある事柄からそれと関連のある事柄を思い浮かべること」という意味です。
例えば「山」と聞いて「川」を思い浮かべる、「青」というと「空」を思い浮かべるなど、言葉や事柄から別のものを想像している様子を表す時に「連想」が使われます。
「思い起こさせる」というニュアンスの「彷彿とさせる」と似た表現のため、言い換えられるシーンは多いでしょう。
(2)想起させる
「以前にあったことをあとで思い起こすこと」という意味の「想起」。過去に経験した物事や、それに関する表象を思い出す時に使われる表現のため、「彷彿」の類語となります。
例えば、「彼の作品は昭和の時代を想起させるデザインだ」や、「故郷の写真に少年時代を想起させられた」のように使用します。
(3)脳裏をよぎる
「脳裏をよぎる」という言葉は、「脳裏」と「よぎる」の2つに分解して考えると、意味を理解しやすくなります。
「脳裏」とは、「頭の中」や「心の中」のこと。「よぎる」は「前を横切る」や「通りすぎる」という意味で、「不安が心をよぎる」や「思い出が頭をよぎる」のように、感情・記憶などに対しても使われる言葉です。
つまり、「脳裏をよぎる」とは「頭の中や心の中を思い出などが通りすぎる」という意味で、「彷彿とさせる」の類語となります。
文脈や状況によっては言い換え表現として使えるため、覚えておくようにしましょう。
「彷彿とさせる」の使い方と例文
物事を思い浮かべたり思い出したりする時に使う「彷彿とさせる」は、日常生活ではもちろん、テレビや書籍などでもよく使われる表現です。
誤用を避けるためにも、例文で使い方や使用シーンなどを確認しておきましょう。
例文
- 祖父の家には、高度経済成長期を彷彿とさせる数々の品があった
- 今日の試合は、父の全盛期の頃を彷彿とさせるものであった
- かつての文豪を彷彿とさせる素晴らしい作品だ
- 今日の彼女のファッションは、バブルの時代を彷彿とさせるものだ
「彷彿とさせる」の英語表現
下記で「彷彿とさせる」の英語表現をご紹介します。
be reminiscent of
「be reminiscent of」は、「思い起こさせる」という意味で、「彷彿とさせる」と同じニュアンスで使用することができます。
■例文
The new designs are reminiscent of cityscape of Italy.
(新しいデザインはイタリアの街並みを彷彿とさせる)
remind (someone) of
「remind (someone) of 」は「(人)に~のことを思い出させる」となるため、こちらも「彷彿とさせる」のニュアンスで使えるでしょう。
■例文
He reminds me of my high school years.
(彼は私に高校時代を思い出させる)
「彷彿とさせる」の意味を理解して正しく使おう
「彷彿」には3つの意味があり、「彷彿とさせる」の形で使われる場合は「思い起こさせること」という意味になります。
「彷彿させる」との使い分けについて悩む人もいるかもしれませんが、意味や活用の仕方によって「と」を入れる場合、入れない場合、どちらでもいい場合の3パターンに分かれることを覚えておきましょう。
「彷彿とさせる」を使った例文や類語・英語表現なども覚えておき、正しく使用できるようにしましょう。