――ドン16話「やみおちスイッチ」でいきなりジロウが「闇堕ち」状態になって、いきなりはるか、真一、つよしの能力を奪ったり、タロウに攻撃を仕掛けたり、とんでもない展開になりますが、これについてはどう思われますか。

ファンの方から「スーパー戦隊シリーズ最速闇堕ち」と言われたやつですね。出てきて3週目ですし、自分でも早いと感じています(笑)。でも、あんなのは序の口で、これからジロウはもっともっととんでもないことをしでかすんじゃないかと思います。みなさんにとって、ジロウがより「目の離せないヤツ」になってくれるのを期待しています。

――今までのスーパー戦隊との違いが大きい『ドンブラザーズ』ですが、先の読めない展開が大人のファンに受け、さらには明るく極端なキャラクターたちが子どもたちの人気を集めているようです。

敵を前にして、メンバー全員がそろって変身とかは皆無ですからね(笑)。変身したあとで、強制的に同じ場所に集められるという、新しいパターンが刺激的です。『ドンブラザーズ』って、大人にはいつもの戦隊じゃないぞ、おいおいなんだこれと突飛な部分を面白く観てもらいながら、毎回のストーリーの中に散りばめられた伏線や謎の部分について「こうなるんじゃないか」と考察する楽しみ方があると思います。そして子どもたちには、敵をカッコよく倒すヒーローやロボの活躍を純粋に楽しんでほしい。僕がいま子どもだったら、ぜったい「ドンオニタイジン」や「龍虎之戟」の玩具が欲しくなるでしょうから(笑)。

――ヒーローに憧れ、自分もヒーローになろうとするジロウを演じるにあたって、撮影現場で意識していることは何ですか。

一般のドラマや映画では、登場人物の感情をいかに自然な形で表現できるかが求められるので、演技では「こういうこと、あるよね」と共感できる感情を強く意識します。しかし特撮ヒーローを演じるにあたっては、実際に世界を守ったり怪物と戦った経験がありませんから(笑)、役を演じる上で「ゼロから感情を作り出す」ことが必要です。このような演技の仕方は、スーパー戦隊の現場だからこそ学べるところだと思います。

――ヒーローキャラクターに声を入れる「アフレコ」をやってみた感想はいかがですか。

アフレコは得意なほうといいますか、好きなんですよ。以前にも経験がありましたし、最初に監督から言われた「ドンドラゴクウはこういうテイストで」といった指示が、自分のイメージしていたものと似ていたこともあり、わりとすんなりこなすことができましたね。

――ドンドラゴクウのスーツアクターさんとは、綿密な打ち合わせをするのでしょうか。

ドンドラゴクウを演じているシゲさん(伊藤茂樹)とは、撮影のときずっと一緒にいて、よくお話をさせていただいています。ジロウからドンドラゴクウにチェンジして戦う際、ジロウの感情のレベルを上げたまま、勢いを乗せてほしいですとか、変身前と変身後の「つながり」をスムーズにするためにもコミュニケーションは大事です。シゲさんはずっとスーパー戦隊ヒーローを演じ続けているのもあって、すべてが分かっている方。だから僕の演じるジロウがシゲさんのキャラクターに合わせることも多々あります。

僕とシゲさんの二人三脚というか、2人でひとつの役を作り上げていることがとても楽しく、ワクワクや感動をもたらしてくれます。現場でシゲさんのアクションをずっと見ていると、だんだん動きもつかめてくるんです。ここで、こんなかけ声を入れたいなとか、ここのカッコよさをアフレコでどう表現しようかとか、楽しみながら撮影に臨んでいます。

――ジロウ役でテレビに登場したことで、親しい方たちから何か反応があったりしましたか。

地元の友人には情報解禁のタイミングを待って「俺、ヒーローになるよ」と言ってたんですよ。でもドン14話で初登場したときは変身しなかったから「お前、ヒーローじゃなくて敵のほうじゃないの?」って疑われたりもしました(笑)。あとは母のお友だち、いわゆるママ友の方からカッコいいねとか、頑張ってねと応援の声をいただいたとき、しみじみ「俺はヒーローになったんだなあ」という実感がわいてきました。ギアが一個ガチャンと入って、やる気につながった感じです。

――今後、各種イベントで子どもたちの前に登場される機会があるかもしれません。石川さんご自身が幼少のころ、ヒーローイベントやアクションショーを見に行かれたことなんてありますか。

どのヒーローかは記憶にありませんが、アクションショーの思い出はおぼろげに残っています。本気でヒーローを応援していたし、敵の怪人を本気で憎んでいました(笑)。ヒーローがやられそうになると、すごく悲しくなったり……。今ヒーローを演じることになり、あのころの感情は忘れてはいけないと強く思います。僕がイベントに出演するときには、現在の子どもたちにどんな「感情」を伝えることができるか、精一杯やってみたいです。

――オンエア当日にはSNSなどでファンの方がさまざまな感想を語り合うやりとりが増えています。このような反響の大きさについてはどう思いますか。

とてもありがたいですね。エゴサーチして、たくさんの方たちの意見を読むようにしています。ジロウについては当初、観ている人が「怖い」とか「苦手」とか思ってもらうようなキャラだと監督から言われて演技をしていましたから、まさにそういったご感想をいただくと、自分の狙いが伝わったなと安心するんです。サイコパスのような怖さを持ちながら、一方で「かわいいやつ」という部分も意識していたんですが、「弟感がある」ってコメントを見つけまして、そういうところもきちんと分かってもらえているなと、嬉しく思ったりもします。初めて特撮ヒーローを演じるので、みなさんの感想はどんなものでも参考になります。今後も多くの声をいただいて、演技に反映させていきたいです。

――石川さんが『ドンブラザーズ』で今後、挑戦してみたいことがあれば、ぜひお願いします。

やはりアクションを思いっきりやりたいですね。いつかは武器を手にして立ち回るとか、ぜひチャレンジしたいです。普段から筋トレをしたり、走り込んだりしていますので、体力には自信があります。今も撮影現場で時間が空いたときなど、アクション部のみなさんから武器の扱い方や剣の扱い方を教わったりしています。「これ、どうやるんですか」と尋ねると、福沢さんがすごく丁寧に教えてくださるので、とてもありがたいです。練習を続けてアクションも上達していきたいので、ジロウの大アクション回が作られるのを楽しみに待っていてください。