近畿日本鉄道は17日、新型一般車両を2024年秋に導入すると発表した。4両編成を10編成、計40両を新造し、奈良線、京都線、橿原線、天理線へ投入。以降、他線区への展開も予定している。投資額は約84億円(1両あたり約1.85億円。設計費等は除く)とされている。
近鉄は昭和40年代に製造した車両約450両について、利用状況を見極めた上で必要分を置き換える計画としている。新型一般車両は、「ご利用いただくあらゆる方々に使いやすく、お客さまと地球環境に優しい車両」をコンセプトに、車内防犯対策や省エネルギー化、バリアフリー対応を進め、車内の快適性向上を図った車両となる。
外観デザインは近鉄伝統の赤色をより鮮やかにすることで、新しいイメージを創出する。ホームから編成連結部への転落を防止するため、編成先頭部に転落防止幌を設置。従来車両と比べて車両床面の高さを挙げ、駅ホームとの段差を軽減する。
車内の座席はロング・クロス転換シート(L/Cシート)を採用。混雑時に乗降しやすい横並びのロングシート、進行方向に向かって着席するクロスシートを切り替えて運用するなど、車内の混雑度に応じて最適なシート配置を提供する。花柄の座席表布や木目調の壁を採用し、明るく優しい印象の内装に。座席表布などに抗菌・抗ウイルス機能を付加し、深紫外線LEDによって車内空気の除菌を行う装置も導入する。
優先座席は各車両の両端に配置。うち1カ所は車いすスペース併設とする。ベビーカー利用者やキャリーバッグ・スーツケース等の大型荷物を持った利用者に向け、周囲に気兼ねなく過ごせるスペースを1両あたり2カ所設置。ベビーカー・大型荷物に対応する座席付きスペースの導入は日本初とされ、ベビーカーや大型荷物を持たない利用者も利用できる。ドア上に大型の液晶ディスプレイも設置。停車駅をはじめ、次の駅や駅構内設備など多言語で表示し、列車の運行情報も案内する。
戸閉力を制御することで、閉まる扉に荷物が挟まった際の抜き取りを容易にするほか、利用者が個別に扉を開閉できるスイッチを設置し、酷暑期・厳冬期の車内保温を図る。車内照明や前照灯をLED照明として省エネルギー化を進め、新型のVVVFインバータ制御装置を採用することで、消費電力を従来車両比で約45%削減。効率的に車両の保守を行うため、省メンテナンス性を考慮した各種機器も採用する。
近鉄の新型一般車両は2000(平成12)年に登場した「シリーズ21」車両以来、24年ぶりとのこと。「引き続き、安全・安心・快適な鉄道輸送サービスの提供に努めてまいります」としている。