近畿日本鉄道の新たな観光特急「あをによし」が、4月29日から大阪難波~近鉄奈良~京都間で運行開始する。特急車両12200系をベースに、古都・奈良をイメージさせる内外装へ大幅リニューアルを実施。車両形式は「19200系」となった。

  • 近鉄奈良線を観光特急「あをによし」が走る

観光特急「あをによし」は、1号車から「19301」「19251」「19351」「19201」の4両編成。ベースとなった車両(12256編成)は1974(昭和49)年12月に製造された。1号車(19301号車、12200系車両時は12356号車)は1975(昭和50)年5月、京都~五十鈴川間・鳥羽~近鉄名古屋間で特別列車を運転した際、英国のエリザベス女王が乗車した車両だという。

投資額は約3.3億円。近鉄グループの近創が「あをによし」のデザインを担当した。外装は紫檀(したん)メタリックをメインカラーとし、金色の帯を配したデザインに。紫は「冠位十二階」において最高位の色であり、天平時代にも高貴な色とされていたことから、高級感を演出するためにこの色を採用した。車体前面に掲げられたエンブレムは、天平文様にも使われた「花喰い鳥」を参考にデザイン。「花喰い鳥」は幸せの兆しとされ、縁起の良い吉祥文様としても使われている。車体側面に正倉院の宝物をイメージしたラッピング等の装飾も施した。

  • 外装は紫檀メタリックに金帯で高級感を演出。車体前面に「花喰い鳥」がモチーフのエンブレムを掲げ、側面に正倉院宝物をイメージしたラッピングを施した(4月12日の報道関係者向け試乗会にて撮影)

内装も「和」をイメージできるデザインとしており、古都・奈良の「和」を際立たせるため、正倉院宝物にも使用される天平文様を各所に散りばめた。天井の柄と照明は、正倉院宝物からヒントを得たオリジナルデザインとなっている。

1・3・4号車のツインシートは横2列(1列+1列)とされ、大阪難波駅から近鉄奈良駅への走行時、進行方向左側となる座席は窓向き、進行方向右側となる座席はテーブルを挟んで向かい合わせの配置となった。「通路を挟んで1列+1列」の座席配置は近鉄において初とのこと。座った人を包み込むようなシートは、家具メーカーによる特注デザイン。観光特急ならではのあしらいで、上質な時間を体験できる。4号車の運転席側にライブラリーを設け、ソファシートも設置。沿線に関する書籍を自由に閲覧できるスペースとした。

2号車のサロンシートは、パーテーションで区切った3~4名用のグループ専用席を3組設け、半個室のようなプライベートな空間としている。アーチをあしらい高級感を演出した通路も特徴。同じく2号車に設置された販売カウンターは、正倉院にも用いられる「校倉造(あぜくらづくり)」をイメージしたデザインに。専属のアテンダントが乗車し、「シェラトン都ホテル大阪」特製の車内販売限定スイーツ「あをによしバターサンド(レーズン&マロン)」をはじめ、奈良県産品を使ったスイーツ、クラフトビールなどアルコール類とソフトドリンク、「あをによし」グッズを販売する。

  • 1・3・4号車はツインシート。コンセントは全席に装備している(4月12日の報道関係者向け試乗会にて撮影)

  • 2号車のサロンシートは3~4名で使用可能。半個室のようなプライベート空間に(4月12日の報道関係者向け試乗会にて撮影)

  • 2号車の販売カウンター。アテンダントが乗車し、「あをによしバターサンド」など販売(4月12日の報道関係者向け試乗会にて撮影)

全席にコンセントを装備し、フリーWi-Fiも利用可能。1号車の車端部に洋式トイレと洗面所、3号車の車端部に男性用トイレと洗面所、車いす対応トイレを設置した。3号車の客室内に車いすスペースも設けている。荷物置場は1・3・4号車に設置。定員は1号車24名、2号車12名、3号車20名、4号車28名。1編成あたりの定員は84名となる。

車両名称となった「あをによし」は「奈良」にかかる枕詞で、平城京の華々しい様子を表す言葉として万葉集などに用いられている。日本屈指の世界遺産や国宝建造物を有する歴史ある奈良県へ向かうことを目的とし、奈良を象徴する観光特急となることを願って「あをによし」と命名された。

列車に乗ること自体を目的とする旅行や、国内から京都経由での奈良観光、さらにコロナ禍後のインバウンドのニーズも見据えた列車として運行され、近鉄の担当者によれば、「いまはインバウンドの利用が少なくなっていますが、関西空港から来られる外国の方々、大阪ミナミに宿泊される方々が奈良・京都へ行きやすい列車となることをめざし、このルートとしています。将来的には、ぜひ外国の方々にもご利用いただきたい」とのことだった。

4月29日から運行開始し、原則として木曜日を除く毎日、大阪難波~近鉄奈良~京都間で計6便を運行(5月第1・2週は木曜日も運行予定)。朝夕の第1・6便は大阪難波~京都間を直通し、乗換えなしで利用できる。日中時間帯の第2~5便は京都~近鉄奈良間を往復する。

なお、近鉄における大阪・京都間での直通運転に関して、1973(昭和48)年から1992(平成4)年まで大和西大寺駅折返しの直通特急を設定していたという。「あをによし」の運行開始により、約30年ぶりに大阪・京都間を直通する近鉄特急が復活することになる。

  • 観光特急「あをによし」の車内・外観(4月12日の報道関係者向け試乗会にて撮影)