ビートラベルの主催で、4月10・11日の2日間にわたり、今年3月に営業運転を終了した神戸市営地下鉄2000形の引退記念イベントが開催された。昨年7月の3000形引退記念イベントと同様、参加者は神戸市交通局職員の解説に熱心に耳を傾けていた。

  • 神戸市営地下鉄2000形。引退記念イベントでは、一時期運行された「快速」幕も見られた

2000形は神戸市営地下鉄西神・山手線と北神急行電鉄(現・神戸市営地下鉄北神線)の相互直通運転開始に合わせ、1988(昭和63)年にデビューした車両。製造本数は4本にとどまったが、30年以上の長きにわたり西神中央~谷上間で活躍した。2019年に6000形がデビューした後、新型車両の置換えが進み、3000形に続いて2000形も営業運転を終了することとなった。

2000形は神戸市営地下鉄の開業時にデビューした1000形を基本としつつ、最も大きな違いとして、車体前面に大型曲面ガラスを採用した点が挙げられる。これにより、デザイン性を高めるだけでなく、運転手の視認性向上にも寄与した。曲面ガラスを導入した背景には、製造当時の鉄道業界における流行もあったという。2000形以降、6000形に至るまで丸みを帯びた前面デザインを採用したことを考えると、2000形が神戸市営地下鉄の車両デザインにおける礎になったと言えるかもしれない。

  • 2000形は前面に曲面ガラスを採用

  • 現在、営業運転では見られない「快速」幕

  • 片側3扉、1段下降窓を採用している

  • 2000形と1000形が並ぶ。前面の塗装が若干異なる

  • 車体側面を見ると、2000形が1000形を踏襲していることがわかる

  • 車番の字体は神戸市電からの伝統を引き継いでいる

その他の特徴として、車体前面の貫通扉が向かって左側(運転士から見て右側)に寄り、運転席の空間が広くなった。前照灯・尾灯は1000形の丸形に対し、2000形は四角形に。尾灯のLED化も実現している。塗装に関して、1000形で見られた車体前面のラインがなくなり、緑色が明るくなった。

車内は1000形と同じ片側3扉・ロングシートだが、化粧板は1000形と比べて白みが増し、より明るくなった。座席端部にモケット張りの袖仕切りも採用している。

制御機器に関して、製造当初は1000形と同じ電機子チョッパ制御を導入したが、ブラシに埃(ほこり)が入ることによる直流モーターの故障に悩まされたという。その後、ブラシが不要な交流モーターを使うVVVF制御方式に変わり、問題は解消した。

  • 2000形に掲出されたラストランヘッドマーク

  • 貫通扉を(運転士から見て)右側に寄せることで、運転席の空間が広くなった

  • ダイヤル式の行先・案内表示器の操作盤

  • 西神・山手線ではATO運転を基本とする

  • 2000形の車内。1000形を基本としつつ、違いも見られる

  • モケット張りの袖仕切りを採用している

2000形は同じく1988(昭和63)年にデビューした旧北神急行電鉄の車両7000系を強く意識して製造されたという。その結果、7000系とともにハイレベルな車両に仕上がった。両形式とも、沿線住民らの神戸市営地下鉄に対する満足度を高めた車両と言えよう。

今回のツアーは神戸市営地下鉄名谷車両基地で開催され、2000形の外観・車内を公開。ラストランのヘッドマークを掲げた22号車が展示され、1000形とも並んだ。現在は運行していない「快速」幕も見ることができた。

車両見学の他に、車両工場見学や洗車体験なども実施。車両工場では、4年に1回の重要部検査や、8年に1回の全般検査を行うが、6000形への置換えにともない1000形・2000形・3000形は検査切れと同時に廃車となることから、この4年間、重要部検査・全般検査は行われていないという。6000形は無塗装のため、塗装設備も廃止となった。

  • 今回展示された22号車は1988(昭和63)年の製造

  • イベント時に書かれた2000形へのメッセージ

なお、ツアーを主催したビートラベルによると、3000形・2000形に続き、1000形についても引退イベントも検討するとのことだった。