JR東海の新型車両315系が今年3月にデビューした。中央本線中津川~名古屋間の快速・普通列車に投入され、2023年度中に同区間の既存車両を置き換える。デビュー間もない315系に乗車したので、乗り心地や車内の様子についてレポートしたい。

  • 雪の積もる山々をバックに、中央本線を走る新型車両315系。沿線の風景にもしっかりとなじんでいる(筆者撮影)

新型車両315系は3月5日から営業運転を開始。3月12日のダイヤ改正後、中央本線中津川~名古屋間を走る快速・普通列車の約3割が315系による運転となった。各駅の時刻表では、315系で運転予定の列車に「☆」印が付けられている。

筆者は3月の連休を使って名古屋へ。315系で運転される中津川行の快速に、名古屋駅から乗車した。発車前のホームでは、こどもから大人まで幅広い年齢層の人々が先頭車付近に集まっている。先頭車の撮影を行ったり、感想を口にしたりと、思い思いに新型車両を楽しんでいる様子だった。

315系の外観は直線的なデザインといわれるが、前面を見ると親しみを感じさせる柔らかい顔立ちが目を引く。313系と比べて柔和な印象を受ける。夕陽を思わせるグラデーションを用いたオレンジの帯も、車両全体を引き締めているように感じられた。

先頭車の車内に入り、ロングシートの座席に座ってみると、固すぎないしっかりとした座り心地だった。315系の特設サイトでは、既存の211系と比べて1人あたりの座席幅を1cm拡大し、腰への負担が少ない理想的な姿勢をアシストする形状を採用したと紹介されている。車内を見渡すと、次の停車駅や運行情報などを案内するフルカラー液晶ディスプレイが各ドア上に1台ずつ設置されていた。車内防犯カメラは1両につき計5台、車端部とドア上に設置されている。

  • 新型車両315系の車内はオールロングシート(2021年12月の報道公開にて、編集部撮影)(

  • ドア上にフルカラー液晶ディスプレイの表示器と車内防犯カメラを設置(2021年12月の報道公開にて、編集部撮影)

ドアチャイムが鳴り、ドアが閉まる。ブザー合図の後、列車はゆっくりと動き出した。名古屋駅付近はポイントが多く、揺れがあるだろうと想像していたが、座っている状態だとほとんど気にならない。加減速も非常になめらかである。自動音声による車内放送は聞き取りやすく、車内の照明も明るくて清潔感がある印象を受けた。

次の金山駅では、中日ドラゴンズのユニフォームを着たファンがたくさん乗ってきた。調べてみると、バンテリンドーム ナゴヤでオープン戦が行われるという。おそらく大曽根駅(JR線における最寄り駅)までは乗車しているだろう。野球ファンからは、「新しい車両で気分が良いね」とか「なんだか味気ない車両だな」といった、315系に対する賛否両論の感想が飛び出していた。

大曽根駅で野球ファンが下車したところで席を立ち、車内を少し歩いてみる。車いす・ベビーカー利用者向けのフリースペースは各号車に1カ所ずつあるものの、昼間の時間帯で空いていることもあり、利用している人はあまりおらず、ほとんどの乗客が座っている。1号車(名古屋寄り先頭車)のトイレは、外から見ただけでも広いことがわかる。入ってみると、清潔感のある白色を基調とした室内に洋式トイレが設置されていた。車いすのままでも十分利用できる広さだろう。

  • 315系では編成に1カ所、車いす対応トイレを設置している(2021年12月の報道公開にて、編集部撮影)

  • デビュー間もない315系は、沿線の人々からも注目されている様子だった

高蔵寺駅で一旦下車。315系では、ドア付近にステップ状の突起があり、ホームとの段差や溝を軽減させている。改めて外観を見てみると、既存の211系・313系はいずれも車体側面の上部と窓下に帯を配置していたが、315系では側面の窓付近にオレンジと白の装飾を施している。ドアは装飾していないが、ドア上にオレンジのラインをあしらっている。種別・行先表示器はフルカラーLEDとなり、視認性も良好である。

ところで、駅を歩いていると、至る所で315系をPRするポスターを見つけた。車内にも中吊りポスターを掲出しており、新型車両を利用者に強くアピールしていることがうかがえる。

  • 中央本線中津川~名古屋間の快速・普通列車は8両編成に統一されたが、その後も313系・211系を組み合わせたさまざまな編成を楽しめる(筆者撮影)

  • 4両編成の211系を2編成連結し、8両編成で運転する列車も。211系は徐々に数を減らしていくだろう(筆者撮影)

昼食を取り、今度は211系の列車に乗車。ヨーダンパが台車に設置されていないためか、走行中の揺れが気になった。その後、途中駅で下車し、中央本線を走る列車の撮影を試みる。その際、地元の人と会話する機会があり、新型車両について聞いてみると、好意的にとらえている様子だった。

3月12日に実施されたダイヤ改正で、中央本線中津川~名古屋間の快速・普通列車は終日8両編成に統一。朝ラッシュ時の10両編成運用が消滅した。現在、8両固定編成の315系をはじめ、313系・211系の併結などにより運転されている。

撮影を終えた筆者は、315系で中津川駅まで乗車してみることにした。中央本線は高蔵寺駅を出ると、山間地帯に入っていく。上り勾配や急カーブが続く区間を100km/h前後で走行しているにもかかわらず、揺れをあまり感じなかったことは驚きだった。トンネルに進入しても、耳の不快感が少ない。走行音も非常に静かで、車内の静粛性が保たれている。座席の袖仕切りにはガラス窓があるため、圧迫感がない。終点の中津川駅まで、ほとんどストレスを感じることなく乗車できた。

  • 中央本線中津川~名古屋間では、2023年度中にすべての快速・普通列車を315系に統一する予定(筆者撮影)

振り返ってみると、315系の車内で過ごす時間は非常に快適であった。オールロングシートの通勤型電車でありながら、乗客がこれまで「こうしてほしい」「こうだったら良いのに」と思っていた部分を細かく改善し、ストレスの多い通勤時間を少しでも良い時間にできるように考慮された車両だと感じる。昨今増加している自然災害や列車内での事件に配慮した設備も見逃せない。ただ快適な移動を提供するだけでなく、さらなる安全をめざした取組みも随所に見られた。

中央本線中津川~名古屋間では今後、既存車両を徐々に置き換え、2023年度中にすべての快速・普通列車を315系に統一する予定となっている。315系がJR東海における通勤電車のエースとして君臨する日も、そう遠くはないかもしれない。