地震や台風など自然災害が多い日本。いざ一人暮らしを始めるときに、これから住む家の防災対策がなっているか気になる人もいるのではないのでしょうか? 今回は、不動産情報のプロであるアットホームの広報担当、西嶋優理子さんに防災を意識した部屋選びのポイントを聞いてみました。

  • 防災に備えた部屋探しのチェックリスト

    防災に備えた部屋探しのチェックリスト

■昨今、若者の防災意識が高まっている

全国の18~29歳の学生・社会人男女を対象に、現在住んでいる部屋の設備・条件や探したときの方法、重視したことなどについてアットホームがアンケート調査を2019年と2021年に行ったところ、「部屋を探した際に防災について意識した」と回答した社会人は、2019年の32.1%に比べ、2021年は43.5%に増えたといいます。

  • 現在の部屋を探した際に、防災について意識しましたか?(アットホーム ユーザー動向調査 UNDER30 2021 賃貸編より)

    現在の部屋を探した際に、防災について意識しましたか?(アットホーム ユーザー動向調査 UNDER30 2021 賃貸編より)

また、地域の避難場所やハザードマップなどの情報が欲しいと答えた学生は67.2%から71.6%、社会人は61.3%から64.9%になり、若者の防災意識が高まっていることがわかります。

  • 地域の避難場所やハザードマップなどの情報は欲しいと思いますか?(アットホーム ユーザー動向調査 UNDER30 2021 賃貸編より)

    地域の避難場所やハザードマップなどの情報は欲しいと思いますか?(アットホーム ユーザー動向調査 UNDER30 2021 賃貸編より)

では実際に部屋を選ぶときに何に着目すべきかを聞いてみました。

■部屋選びで着目すべきは建物構造とハザードマップ

建物構造には、主に木造(W造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の3つがあり、地震や火災には鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造が強いといわれています。

「物件図面やポータルサイトで探すときは、アルファベットで表記されていることがあるので、その場合、防災の観点では『RC造』もしくは『SRC造』と表記されている物件を選ぶことをオススメします」

地震や火災への備えとしては、建物構造を確認することが重要なのだそう。

もう一つは、近年耳にする機会が増えた「ハザードマップ」。

「災害発生時に予想される範囲や程度、災害があったときの避難経路や避難場所がわかるハザードマップは、各自治体で用意されているほか、不動産会社でも用意しているところが多く、説明ができます。相談時に住みたいエリアのハザードマップを不動産会社の人に聞いてみると安心して部屋選びができるかもしれません」

■物件以外に周辺地域の避難場所についても知っておくことが大切

新居の周辺にある避難場所を事前に知っておくことも大事な備えになります。そこで確認しておきたいのは「防災公園」の有無。防災公園は、災害時に人の命を守るための防災拠点になる、防災のために整備された公園です。備蓄倉庫やポンプのほか、普段はベンチとして使われて、災害時にはかまどの役目を果たす「かまどベンチ」などが設置されています。

  • 防災公園も避難場所のひとつ。

    防災公園も避難場所のひとつ。

「防災公園の場所をマッピングしてホームページなどで公開している自治体もあるので、住みたいエリアに防災公園があるかどうかを事前に確認しておくと良いかもしれません。小さい規模の防災公園も都市部にはあるので、不動産会社に内見時に“この辺りだと避難場所はどこになるのか”と聞いてみるのもいいでしょう」

筆者は近くに学校があれば安心だと思っていましたが、水害になると立地面で避難所としては使えない場所もあるようです。万が一に備えて、近場の防災公園は確認しておくことをオススメします。

■入居後は避難経路を自分で歩いてみよう

「入居後はまず自分の足で避難経路を1回歩いてみると、もしものときにスムーズに避難場所へ辿り着くことができます。万が一夜中に災害が起きてしまった場合も想定して、夜に避難経路の暗さなども確認しながら歩いてみると、より災害に備えることができると思います」

また、最低限の防災グッズは必ず備えておきましょう。新居で一人暮らしとなると、自分の身を守るのは自分になるので、早いうちに準備をしておくことが大切です。食料をはじめ懐中電灯など一通りのものを備え、玄関のシューズボックスで保管しておくといざという時に取りやすいといいます。

「非常食については賞味期限の管理が大変なので、“ローリングストック方法”がオススメです。普段から少し多めに3日分くらいの加工品を買い、賞味期限の近いものから使っていきます。使った分だけ新しく買い足すことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておくけるので防災グッズの準備が楽になります」

レトルト食品やフリーズドライ食品、缶詰などを普段の食事にも意識的に取り入れておけば、いざという時に普段と同じものを使える安心感がありそうです。

また、引っ越しのタイミングで耐震グッズを設置しておくことも大切。

「入居後に、改めて家具を動かすとなると一人では設置できない可能性もあるので、引っ越し前に耐震グッズを準備し、当日に引っ越し事業者と相談してみると効率的に対策できるかもしれません」

部屋選びの条件では、間取りや最寄り駅までの徒歩時間、築年数などをどうしても優先してしまいがち。防災に目を向けて選ぶことにより、備えができるので安心して新居で暮らせるのではないでしょうか? 新生活が始まる前に自宅の防災面を考えてみるのも良い機会になるかもしれません。

取材協力 : 西嶋優理子(にしじま・ゆりこ)

アットホーム株式会社 マーケティングコミュニケーション部 広報グループ。 2017年アットホーム入社。家・街・暮らしの情報サイトの制作を担当したのち、2018年より広報を担当。アンケートによる住まいや暮らしのトレンド調査に携わる。