YouTube・サブスク動画配信サービスの台頭、視聴率指標の多様化、見逃し配信の定着、同時配信の開始、コロナ禍での制作体制――テレビを取り巻く環境が大きく変化する中、最前線にいる業界の“中の人”が語り合う連載【令和テレビ談義】

第7弾は、フジテレビを退社して映像プロダクション・MOOOVEを設立したマイアミ啓太氏と、テレビディレクターから転身して一般人や有名人にインタビューしていくYouTubeチャンネル『街録ch~あなたの人生、教えて下さい~』を立ち上げた三谷三四郎氏というテレビの世界を飛び出した2人が登場。この2人とともに番組制作した経験を持ち、『新しいカギ』などを手がけるフジテレビの木月洋介氏をモデレーターに、全4回シリーズのテレビ談義をお届けする。

最終回は、三谷氏がテレビの“歯がゆさ”を熱弁。制作した番組がストックされないことや、ネット戦略へのもどかしさを訴え、最後にはテレビに意識改革を起こすための斬新なアイデアも飛び出した――。

  • YouTube『街録ch』を手がける三谷三四郎氏

    YouTube『街録ch』を手がける三谷三四郎氏

■後でバズるチャンスを捨て続けている

三谷:YouTubeは自分の好きな尺で編集して流せるじゃないですか。要は30分番組で24分30秒の尺に収めなきゃいけないとかいうのがない。マイアミさんはその世界をやりつつ、一方で尺をどうしても収めなきゃいけないテレビ番組もやる中で、歯がゆさとかありますか?

マイアミ:テレビの脳みそとYouTubeの脳みそは全然別なので、歯がゆさというのはないですね。テレビはテレビのルールの上で、一番分かりやすく視聴者に伝えるというのが僕らの仕事であって、昔はそれが分かってなくて、「俺がやりたいことをやるんだ!」っていう若さがあったんですけど(笑)、今は世の中のこういう人が見るんだろうなというのをちゃんと考えるようになりました。YouTubeは、自分のやりたいことや挑戦してみたいことをライトに試せる場だと思ってます。昔はそういう場も、テレビにしかなかったですからね。

三谷:確かに使い分けということですよね。でも、この前『ノンフェイクション』(テレビ大阪)という番組をやったときに、ドキュメンタリーのVTRを岩井(勇気)さんと高橋ユウさんに見てもらうんですけど、普通にあの2人がしゃべってるのを面白いなあって、テレビを見てるくらいの感覚でスタジオで見てたんですね。でも、あの番組って放送尺が20何分しかなくて、僕の作ったVTR尺がそもそもそれを超えてる状態で出しているので、2人のトークをどこまで使うんだろうと思ったんです。結果、完パケ(=放送される状態の映像)が送られてきて、見てみたらやっぱりほぼトークは使われてなくて。「あの面白かったのにOAで使ってないトークは、YouTubeとかで流せないんですか?」って聞いたんですけど、関係各所の折り合いがつかなくてできないらしくて。ということは、「あの面白かった時間はただ闇に葬られちゃうだけなんだ、なんてもったいないことをしてるんだろう」と思っちゃったんですよ。今の時代に合ってなさすぎるし、そんなもったいないこと繰り返してたらテレビってどんどん縮小していっちゃうんじゃないかなと。番組サイドの現場の方々も捨てずに流せたらいいけどそうはいかない事情があるっていうのが、なんとも歯がゆかったですね。

――TVerで未公開を流すケースもありますけどね。ただ、TVerの見逃し配信は、多くのレギュラー番組が1週間で終わってしまいます。

三谷:ディレクターからすると、めちゃくちゃ徹夜して一生懸命作ったのに、1回OAして見逃し配信で終わりじゃないですか。でも『街録ch』って、毎日更新してて3カ月前に配信したのが急に伸びだすこともありますから。生み出したものがストックされていけば、極端な話、10年後にバズる可能性だってあるわけですから。テレビってそのチャンスを捨てちゃってるんですよね。1つの番組の制作費が数百万円とか数千万円って、YouTubeじゃあり得ないのに、それを1カ月未満で捨て続けるっていうのが、もったいないなと思いますね。

木月:いろんな配信のルールが少しずつ変わってきているから、またその考え方も変わっていくかもしれないですけどね。

■Z世代から“テレビスター”は生まれるのか

三谷:Netflixほど豪華ではなく、身近なものはYouTubeで見れるとなったときに、テレビは微妙な立ち位置だし、プラットフォームとしてもめっちゃ不便じゃないですか。でも強みと言ったら、(明石家)さんまさんとか、ダウンタウンさんみたいにテレビを主戦場にしているスターがいっぱいいるということですよね。そういう人たちがいるうちに、何とかしたほうがいいんじゃないかなと、外から見ていて思います。

木月:そういうスターの皆さんと、ある程度の視聴者がいるうちに、何とかできるといいですよね。

三谷:今のZ世代の人たちから“テレビスター”って生まれてくるのかな?って思うんです。テレビ的にはめるる(=生見愛瑠)が若い子の代表みたいな感じで出てますけど、インフルエンサーで言うと中町綾ちゃんとか新世代YouTuberの子たちだし、実際に影響力を持ってるのは後者じゃないですか。

木月:それと、若い人たちの好きなものが細分化してますよね。この間『久保みねヒャダ』で「流行語って本当にあるのか」みたいな話になって、ギャル流行語大賞とかいろんな若者の流行語大賞をいくつか見てみたらバラバラだったんですよ。そうなると、今までのようなみんなが好きなスターの生まれ方というのが、難しくなってくる。

三谷:全国民が熱狂してるなんてことは、なくなるのかもしれないですね。こんなにコンテンツがあふれてるから。

木月:だから『M-1グランプリ』(ABCテレビ)とか『紅白歌合戦』(NHK)とかって、貴重だと思うんです。

三谷:権威というか、出たいと思われるような番組ですよね。そう考えると、もっと両極端にしたほうがいいんじゃないかとも思うんです。出たいと思われる番組にめちゃくちゃお金使って、逆に平場のレギュラー番組はものすごい低予算で作るとかやったら、メリハリが付くじゃないですか。『M-1』のあの豪華さって、すごいですよ。YouTubeじゃあれだけ生でCGを当て込めることできないし、松本(人志)さんも呼べないでしょうし。