――そうした考えに至ったのは、テレビから離れて外から見るようになってからですか?

三谷:フリーのディレクターになって4年目くらいになったときに、自分の作った番組の反響がすごく気になるようになったんですよ。でも、それがすごく運要素が強すぎるなと気づいたんです。例えば、その日に雨が降ってたとか、裏の人気番組がずれてこっちに流れてきてくれたとか。しかも、視聴率1%で100万人見てるはずなのに、100万人に見られてると思えないくらいの反応のときもあるから、「この競技、何だろう?」というのを、ずっと思ってたんですよね。単純に良いものができたから認めてほしいっていう承認欲求が強かったのに、その瞬間に誰かが見て拾ってくれないと話題にも上がらず、ただ消えていっちゃうから、それがすごく切なかったんです。

木月:視聴率って裏と前番組次第のところも大きいですからね。

三谷:あと、「%」で出されるって謎じゃないですか? 統計学の人から見たらサンプルの中で測るのは納得かもしれないですけど、世の中の動画の再生回数がほぼリアルタイムで見れる一方で、「%って何? 私が人口と掛け算して出さなきゃいけないの?」って感じるじゃないですか。

マイアミ:たしかに(笑)

三谷:久しぶりにテレビの先輩と飲むことになったときに、「テレビというメジャーなものから逃げるな。HIKAKINの動画が1,000万再生されても視聴率は10%。でも『(世界の果てまで)イッテQ!』は20%だから倍見てるんだぞ」と言われたんですよ。でも、視聴率20%で2,000万人見てるバズり方をしてないように思うから、テレビ側の都合すぎるなと思ったり。それに、世の中ってバグだらけじゃないですか。もしかしたら、視聴率3%って出たけど、本当は7%だったという番組もあるんじゃないかと思うんですよ。寝ずに命削って1回のバッターボックスで全力を出しているのに、そのバグのせいで成績悪くてハイおしまい!ってなってたとしたら、そんな悲しいことないですよね…。

木月:テレビ業界に、今後やりたいって来てくれる人がちゃんといるのかなという心配はあったりしますよね。

三谷:芸人さんと番組やりたいとか、そういうモチベーションになってくるかもしれないですね。今、ラジオに入りたいっていう人は、芸人さんとやりたいっていう人がほとんどだといいますし。

木月:そういう子はいるかもしれないですね。今、『新しいカギ』ってコント番組やってると、お笑いをやりたいっていう人はたくさん来ますからね。

  • 木月洋介氏

■“事件”が起こる番組が減ってきた

――マイアミさんは、今のテレビの現状をどう見ていますか?

マイアミ:僕はテレビ業界って、銀行員さんとか商社マンとか、そういうちゃんとした仕事ができない人たちが、知恵とかくだらないことをかき集めて、みんなでワッショイワッショイやる世界だと思ってやってきたので、いい意味でルーズなのも好きなんですが、それが時代と合わなくなってきたんだろうなと。テレビが許されてきたノリが、世の中的に許されなくなってしまったので、それはテレビが好きで入った人は歯がゆい思いをしながらみんなやってるんだろうなと思います。この状況で、今の若い子たちが「テレビでとにかく面白いことをやって、絶対自分の番組を当ててやるんだ」って思えるのかな、そこを目指せなかったらかわいそうだなと思いますね。一方で、与えられたルールの中で戦っているのは、カッコいいなとも思います。テレビマンって、規制が取り払われたらみんな止まらないと思うんですよ(笑)。でも、その中で戦うこともファイターとしては正しい選択なのかなと思う部分があります。

――なるほど。

マイアミ:だからこの前、木月さんがやってた『バチくるオードリー』が面白かったんですよ。あの若林(正恭)さんがあんなに泣くこと(※1)があるのか!って、久しぶりに“事件”だなと思いましたよ(笑)。最近のテレビって、“事件”が起こらなくて、想像の範囲内で「よくできました」の編集ばかりじゃないですか。だから、「どうしちゃったの? 何? 何?」っていうのを、深夜とかにゴロゴロ作ってほしいんですけどね。

(※1)…「ピュアな芸人が作詞したラブソングをプロのミュージシャンが作曲したらバチーンときそう!」企画で、ザ・マミィの酒井貴士が作詞したものを関取花が作曲して歌うと、酒井だけでなく若林も号泣した。

三谷:僕は「若林、号泣」って話題になってたので、何だろうなと思って見たら、めっちゃいい歌が流れてきて、若林さんもザ・マミィの酒井さんも号泣してるっていう(笑)

マイアミ:衝撃でしたよね(笑)

三谷:でもそれが、違法の切り抜き動画で流れてたんですよ。だから、テレビ局が自分で出せればいいのになと思うんです。あれをフジテレビが切り抜いて出したら、普通に100万再生くらいいくんだろうなと思いますもん。

木月:一瞬で違法動画が回っちゃいますからね。あれは最初、ミニコーナーくらいのつもりで撮ってたんですけど、めちゃくちゃ撮れ高が良かったから、これだけでいけるなってなったんです。自由度のある番組だからこそできたんですけど、偶然なんですよね。