JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」の新車両が2月21日に報道公開された。初代車両のデザインを踏襲しつつ、これまでの2両編成から3両編成に増え、グリーン個室を新設するなど、サービスや設備面でブラッシュアップを図った車両となる。

  • キハ185系を改造した「伊予灘ものがたり」新車両。1号車は茜色を基調とした外観に

2代目となる新車両はキハ185系を改造した3両編成で、1号車は「キロ185-1401」、2号車は「キロ186-1402」、3号車は「キロ185-1403」。3両ともグリーン車となり、1400番台の番号(「14」は「いよ」と読める)が付与されている。中間車の2号車は、国鉄末期の1986(昭和61)年10月に製造され、1999(平成11)年に「アイランドエクスプレス四国 II」(キロ186-8)へ改造された車両。八幡浜方先頭車となる1号車は1988(昭和63)年4月に製造され、1999年に3100番台(キハ185-3113)へ改造された経緯を持つ。松山方先頭車の3号車は1988年12月に製造(キハ185-23)された。

新車両のコンセプトは「レトロモダンな車内で大切な人と過ごす、上質な非日常空間」。外観については、伊予灘の夕景をモチーフとしたシンボルマーク、茜色・黄金色のカラーリング、車体側面に大きく描かれた和デザインのヱ雲(えぐも)といったデザインが初代車両(キロ47形)から踏襲され、車体前面上部のライトも初代車両に合わせた形状に変更していた様子。一方で、全面にメタリック塗装を施し、より夕日の光に映えるカラーリングにするなど、初代車両との違いも見られた。ヘッドマークはLEDのバックライトにより浮かび上がる照明を採用している。

  • 中間車は元「アイランドエクスプレス四国 II」の車両

  • 新車両の3号車は黄金色を基調とした外観

  • 新車両の前でJR四国の西牧社長へのインタビューが行われた

1号車「茜の章」は伊予灘を染める夕焼け空、2号車「黄金の章」は沿線に降り注ぐ太陽や愛媛の名産である瑞々しい柑橘をイメージした車両で、愛称名だけでなく、壁や天井に初代車両と同じ内装材を使用するなど、インテリアイメージを踏襲している。その上で、いす等をサイズアップして快適性を向上させ、新たな照明の演出も採用。より魅力的な車両となるよう再設計した。

3号車「陽華(はるか)の章」では、車両の半分を使ってグリーン個室「Fiore Suite(フィオーレスイート)」を新設。「大切な人と過ごす時間と空間」というコンセプトの下、貸切となる特別な空間で、ワンランク上のおもてなしとともに時間を過ごせるという。定員は8名で、2名から利用できる。アールデコ調のデザインとなり、高揚感のあるクラシックなインテリアに。海向きのテーブルは鏡面仕上げとし、車内空間と車外の景観がつながるかのように感じられる演出も。3号車の一部はサービスギャレーとなり、初代車両ではできなかった温かい料理の提供など行えるようになっている。

  • 3号車「陽華(はるか)の章」のグリーン個室「Fiore Suite(フィオーレスイート)」

  • 客室入口正面に設置されたカウンター。砥部焼の花器も

  • 3号車に設置されたギャレーの内部

先頭車の1・3号車において、前面展望を楽しめるようにした点も初代車両にはなかった特徴のひとつ。前面の壁に大型のガラスを使うなど、より広いパノラマの景色を見られるデザインとした。その他、座席ごとにUSBコンセントを設置し、フリーWi-Fiも利用可能。車内Wi-Fiサービスを利用することにより、手持ちのスマートフォンで前面展望ライブ映像も楽しむことが可能になった。

車内で使用する食器のほか、各所に砥部焼(砥部焼女性作家グループ「とべりて」が制作)を配置し、インテリアとしても楽しめるようにした。1号車のサテライトカウンター(2号車との連結部側に設置)では、通路面に展示用のディスプレイを設け、砥部焼の食器を作品として鑑賞できる。2・3号車にあるトイレ内の手洗い場や、多機能トイレ(2号車)の前に設置された洗面台でも砥部焼を使用。洗面台の洗面鉢は計3種類あり、季節ごとに入れ換えることで異なるデザインを楽しめるとのこと。3号車の客室入口正面のカウンターには砥部焼の花器が飾られ、生花で利用者を歓迎する。

愛媛県を象徴するみかんをモチーフにした照明を各車両に設置している点も特徴。車内照明の一部は夕日をイメージしたオレンジの明かりなどに切り替わり、普段と異なる雰囲気を楽しめる。特別運行や貸切列車などのニーズに応じ、1・2号車の天井照明、3号車のテーブル照明をさまざまな色に変えることもできるという。

報道公開では、JR四国の代表取締役社長、西牧世博氏が挨拶した。「初代車両は7年半にわたって走り続けました。多くの皆様のご支援、ご支持があり、地元の方々からも自主的な活動などを通じて支えていただいたことで、2代目の車両をつくる決断に至りました。本当にありがたいと思っています」と西牧社長は話す。

「伊予灘ものがたり」の新車両について、「最大の特徴は3号車のグリーン個室。車両の半分を使った贅沢な空間となっています。誕生日祝いやご結婚のお祝いなど、大切な人との特別な時間を過ごしていただけたら」「初代車両はラッピングによる外装でしたが、新車両はメタリック塗装で鏡面仕上げとしています」「新車両ではかなりの部分を自社グループ内で制作しており、その点も今後につながるのではないかと思っています」と西牧社長はコメント。「シンプルな中で華やかさもあり、非常に丁寧な仕上がりになっています。初代車両に負けず劣らず良い車両となり、私たちも期待しているところです」とのことだった。

「伊予灘ものがたり」の新車両は4月2日から運転開始する。「大洲編」(松山駅8時26分発・伊予大洲駅10時28分着)、「双海編」(伊予大洲駅10時57分発・松山駅13時1分着)、「八幡浜編」(松山駅13時31分発・八幡浜駅15時50分着)、「道後編」(八幡浜駅16時14分発・松山駅18時17分着)の1日4便を設定し、各便とも途中の下灘駅で10分前後停車。デビュー当日は特別ツアーとして運転される。1・2号車に乗車する際の運賃・料金は、松山~伊予大洲間が3,670円(運賃970円、特急料金1,200円、グリーン料金1,500円)、松山~八幡浜間が4,000円(運賃1,300円、特急料金1,200円、グリーン料金1,500円)。3号車「陽華の章」に乗車する際は、利用人数分の乗車券・特急券に加え、グリーン個室1室料金2万8,000円が必要となる。

  • 3号車「陽華の章」の車内。車端部にトイレを2カ所(うち1カ所は女性専用)設置

  • 2号車「黄金の章」の車内。ドア付近に多機能トイレやショーケースなど備える

  • 1号車「茜の章」の車内。車端部のサテライトカウンターに砥部焼を展示したディスプレイも

  • 「伊予灘ものがたり」新車両の外観。全面にメタリック塗装を施した