公開初日を迎えたVシネクスト『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏(トリオ)』の舞台挨拶が1月28日、東京・新宿バルト9にて行われた。当日はメインキャストである内藤秀一郎、山口貴也、青木瞭、川津明日香と、上堀内佳寿也監督が登壇。『仮面ライダーセイバー』最後の「物語」となる本作に込めた熱き思いと、1年半にわたって自分たちを応援してくれたファンへの感謝の気持ちを伝えた。

  • 左から川津明日香、山口貴也、内藤秀一郎、青木瞭、上堀内佳寿也監督

本作は、2020年9月から2021年8月まで放送されたテレビドラマ『仮面ライダーセイバー』初の「単独」映画作品である。かつて、世界の書き換えを目論む邪悪な存在「メギド」と戦った剣士=仮面ライダーたちの「8年後」の姿が描かれると共に、神山飛羽真、新堂倫太郎、富加宮賢人の3人を中心に、さまざまな人々の感情が入り乱れた熱いドラマが繰り広げられる。

今回、キャスト陣はなじみ深いテレビシリーズ時の衣装で登壇。まず『仮面ライダーセイバー』という作品に出演し、俳優として自分自身がどのように変わったのか、ひとりひとりがしみじみと思いを込めながら語った。

仮面ライダーセイバー/神山飛羽真を演じた内藤秀一郎は「人として役者として、少しは成長できたのではないか」とさわやかな笑顔と共に自身のステップアップを実感する言葉を発した。そして「『セイバー』が僕の役者としての本格的なスタート。テレビシリーズの1年間でいろいろなことを学び、キャストのみんなやスタッフさんたち、そしていつも応援してくださるファンのみなさんが自分を成長させてくれました」と、周囲の人物の助けやファンの応援に支えられて自身が成長できたことに感謝を示した。

小説家である飛羽真の担当編集者・須藤芽依を演じる川津明日香は「芽依という役に励まされた1年でした。ハードな撮影で辛いときもあったけれど、自分が向き合ってきた役のおかげで“大丈夫でしょ”って感じで、常に突っ走っていくことができました。芽依に出会えて、本当に感謝だなって思います」と、明るく前向き、並外れた人懐っこさや行動力を備えて画面いっぱいにかけめぐった芽依を演じることで、自分自身もポジティブな思考を備えることができたと語り、笑顔を見せた。

仮面ライダーブレイズ/新堂倫太郎を演じる山口貴也は「僕も倫太郎という役からエネルギーをもらっていました。倫太郎の『僕は、僕を絶対にあきらめない』という言葉が心に残っています。ずいぶん辛いこともたくさんありましたが、倫太郎に追いつき追いこせ、みたいな切磋琢磨をして、1年間やってきた感じです。僕たちは演技を通じてテレビの前のみなさんに勇気を届けられればと思って頑張ってきましたが、逆に僕たちもみなさんから勇気とエネルギーをいただいていたなあと、今実感しています」と、不屈の闘志を備える倫太郎の役柄や、ファンからの応援が励みになり、幾度となく困難を乗り越えられたと語った。

仮面ライダーエスパーダ/富加宮賢人を演じる青木瞭は「自分にとって実りのある1年でした。賢人は途中“闇堕ち”時期もありましたし、2タイプの性格を演じられたことで、役者としてのスキルが少しは上がったかな」と、難しい役柄の賢人を演じあげたことによってかなりの実力向上につながったと語った。そして「たくさんの監督たちと話し合い、試行錯誤で作り上げた役。今思うのは、たくさんの監督、スタッフ、共演者、みんなと一緒に過ごした1年って大事だなってこと。こういう楽しいメンバーで仕事ができるのも、今後もうないんじゃないかと思うくらいです。『セイバー』で新しい友だち、新しい家族ができた。最高の1年でした」と、苦労を共にしてよりよい作品を作ろうと頑張ったスタッフ、キャストたちとの絆の強さをふりかえった。

若い『セイバー』キャスト陣の成長を目の当たりにした上堀内監督は「みんな、テレビシリーズが半分過ぎるくらいまではフワッフワしていて、大丈夫かなって思っていました。でも後半からは、なんだよみんな、伸びしろしかねえじゃねえかよっていうくらいそれぞれしっかりしてきて……。ほんとに成長したよね。真ん中に立っている人(内藤)なんて、辛い撮影で涙していたこともありました。それくらいいろんな場所で追いつめられてきたと思うんです。でも、ここにいるキャストたちが成長してくれたからこそ、今回のVシネクスト『深罪の三重奏』がこんなテイストになったんです。こういう作品を作り上げたい、作っていこうと思えるくらい、人間的にもお芝居的にも大きく成長してくれた。本当にありがとうございます!」と、シリアスに徹し、重苦しいテーマにも果敢に挑んだ本作を作り上げる際、俳優陣の成長を意識しないわけにはいかなかったと打ち明けた。

本作『深罪の三重奏』の撮影で、悩んだこととは?の質問に内藤は「演技で悩んだことについては、ネタバレになってしまうのであまり多くは言えません。難しかったのは、犬のラッキーとの共演でした。ラッキーってとてもかわいいんですけど、こちらの言うことを全部聞いてくれるわけじゃなくて……。ラッキーが飛羽真のところへ毛布を持ってくるってシーンでは、毛布を途中で落としちゃったり、飛羽真じゃなくて他の人に持っていったり、うまく動いてくれなくて大変でした」と、演技指導のしようがない犬との共演の難しさを嘆いた。内藤は続けて「ラッキーとのからみで、何テイクくらい撮ったでしょうか。ラッキーがかわいくて現場はずっとなごやかでしたが、撮影自体は苦労しました。監督も犬にはとても優しいですし」と、俳優に厳しい上堀内監督もラッキーには優しかったと明かしたら、上堀内監督が「そりゃそうですよ。僕は人よりも犬や猫に愛情をそそぎますから」と続けて、笑いを誘った。

続いての話題は、本作を彩ったゲスト出演者について。内藤は飛羽真の幼なじみ・間宮を演じた木村了との共演をふりかえって「撮影中、上堀内監督が僕の芝居をすごく褒めてくれたところがありました。それは、ご一緒していた木村さんの上手さによって、引き出されたものだったんです。本当に木村さんにはいろいろ助けていただきました」と興奮気味に語った。

倫太郎は本作で、父と名乗る人物・篠崎真二郎と出会う。真二郎を演じる橋本さとしとの共演について山口は「橋本さんとご一緒する日程が2日間しかなかったのですが、その中でとてもコミュニケーションをとってくださいました。ご挨拶したその日に、クライマックスシーンの撮影に入りまして、そのときの橋本さんの“圧”がすごくて、いい感じに引っ張っていただきました。僕も負けてしまわないように、ロケットのようなエネルギーで立ち向かったら、それも橋本さんが受け止めてくださった。最後は、本当のお父さんに見えました」と、橋本の胸を借りて体当たりで臨んだ「父子対面」シーンに大きな手ごたえを感じたことを明かした。

賢人は婚約者・結菜と幸せな時間を過ごしているという設定。結菜役・飛鳥凛との共演について青木は「飛鳥さんは12年前『仮面ライダーW』に出演された先輩であり、いつも優しくて明るくて、現場をなごませてくださる方でした。2人でいるシーンでは僕が緊張しているのを察して、サポートしてくださった。恋人役なのに、まるでお姉さんのようにいろいろと助けていただきました」と、飛鳥への感謝の言葉を述べた。

続いて、『仮面ライダーセイバー』の“座長”として1年半もの間、キャストたちを引っ張ってきた内藤の人間的成長について、青木、山口、川津からコメントが寄せられた。

青木は「ここまで頑張ってきて、顔つきもずいぶん変わったのに感動しました。節々に出すしぐさだったり、時おり見せる座長らしい行動だったり、頼れる座長ですばらしいなって思います。彼の頑張る姿を見て、賢人としてはこういう風に飛羽真と絡んでいかなければとか、ずっと思っていました。本当に、お疲れさまでした」と、内藤の日々の頑張りを称え、労をねぎらった。これを聞いた内藤は「間近で言われたら照れちゃうな」と、しきりに照れる様子を見せた。

山口は「最初のころからみんなに気を配ってきたと思いますが、主人公をやっているとどうしても余裕がなくなっていきます。そのうち、みんなを支えようというのではなく、みんなに支えられていいんだ、真ん中にいてもいいんだと気づいてから、すごく頼もしくなったなと実感しました」と話し、キャスト陣との接し方でも主役らしい成長を遂げた内藤に笑顔を向けた。

2人からあたたかい言葉をもらった内藤は「みんなと年齢が近いため、自分ひとりが頑張らないと、という気持ちはなかったんです。自分がダメだなあと思う日は、瞭くんや貴也が支えてくれました。明日香ちゃんもね。瞭くんとは、賢人が消滅する回のあたりから、芝居での気持ちの込め方や、目の表情についてとか、話すようになっていきましたね。そしてテレビシリーズの撮影が最後のほうになると、貴也の顔を見るだけで泣けてきました。(山口の)成長を感じていたからかな。明日香ちゃんも毎日ニコニコしていて、成長したな~って」と、撮影を通じて3人の著しい成長も実感していたことを打ち明けたが、川津についてのコメントだけやや「雑」な感じだったのが川津には不満だったらしく「今の、審議ですよ(笑)!」と絶妙なリアクションを取っていた。

続いて川津は「(内藤は)最初から平和主義者で、雰囲気も柔らかい人でしたけど、エピソードの途中からより飛羽真に近づく瞬間が間違いなくありました。すごいなあって思いました」と、自身が演じる役との一体化を成し遂げた内藤に感心する様子を見せた。

川津の言葉を受け、山口が「目に見えないけど、途中から変わった感じはしたね」と話し、さらに青木が「最初のころと比べると精悍な顔になった。1年前とは顔つきが違うよね」と続けると、内藤が「えっ、太ったとかじゃないよね?」といきなり心配し始め、周りから「違う違う!」とツッコミが飛んだ。

4人のやりとりをほほえましく見ていた上堀内監督は「みんな、もうどこに出しても恥ずかしくない役者に成長しています。この作品にちなんで言いますと『8年後が楽しみ』です! そんな人たちになってくれました」と、彼らの成長ぶりを認め、これからますます俳優として進歩・発展を遂げていくことを期待しつつコメントした。

最後の挨拶で上堀内監督は「この作品は僕なりに、チャレンジングに行ってみようと思いました。ある意味で仮面ライダーらしからぬ、でも仮面ライダーらしい。そんなところを目指しました。いろんな解釈をしていただいて、いろんな受け取り方をしてほしいです。この映画、1回目の鑑賞でも“いいな”と思ってもらえるように作りましたが、2回目、3回目のほうが、もっとグッとくるかもしれません。これだけは言わせてください!」と話し、スタッフ・キャストと力を合わせて強い思いを込めて作り上げた本作に、自信のほどを見せた。

川津は「テレビシリーズから8年後、みんなそれぞれの人生があり、劇中で描かれていない部分がたくさんあります。これまでの空白の8年間について、いろいろ想像ができるようなシーンやセリフも出てきますので、ひとつひとつのセリフとか、表情とかに注意をして観てください!」と語って、テレビシリーズと本作との間に存在する8年の歳月に思いをめぐらせてほしいとアピールした。

青木は「Vシネクスト『深罪の三重奏』をご覧になる際には、『仮面ライダーセイバー』の第1章から最終章までを駆け抜けた、僕たちの表情やたたずまいを思い返していただきたいです。『セイバー』最後の作品となる本作で、一番成長できた姿をお届けできるかと思います。今まで、ありがとうございました!」と、思い入れの強いテレビシリーズがあってこその本作ということを強調しつつ、ずっと熱い応援をしてくれたファンへの感謝の気持ちを表し、客席にあたたかな眼差しを向けた。

山口は「こうやって(舞台挨拶のステージに)立つのは最後ですけれど、これで最後かと思うと本当に悲しいです。ありがとうございます。最初にも言いましたが、僕自身が倫太郎の言葉に勇気づけられました。今劇場にいらっしゃる子どもの方は、8年後にはもう大人になっているでしょう。僕は僕を絶対にあきらめなかったので、みなさんもその言葉を忘れずに、立派な大人になってください!」と、劇中での倫太郎の印象的なセリフを出しつつ、真摯なテーマを打ち出した本作『深罪の三重奏』を子どもから大人まで、幅広い年齢層に楽しんでもらいたいとメッセージを送った。

最後にマイクを手にした内藤は「飛羽真として、賢人、倫太郎、芽依ちゃんと並んで立つのはこれで最後なのかなって思っています。今日、僕たちがニコニコしながら映画の初日舞台挨拶に出られたのは、スタッフさん、キャストのみんな、そして何より、応援してくださっているファンのみなさんのおかげです。本当に、ありがとうございます! 『セイバー』を終えても、僕や仲間たちはそれぞれの道を目指して頑張り続けます。みなさんには、これからも僕たちのことを応援してくれたらうれしいです。この作品『深罪の三重奏』は登場人物みんなが、自分たちの『結末』を自分で決める作品です。ぜひ何回も観ていただき、楽しんでください……」と話しているうちに、感極まって言葉に詰まってしまった。

涙声になった内藤は「危ね! ちょっと待って、泣くつもりマジでなかったんだけど」と戸惑ったものの、上堀内監督からの「みんな最後最後って言うけど、みなさんがこの映画を観てくれて、評価してもらえたら、もう一回同じキャストで作品が作れるかもしれないよ」と優しいフォローが入ったことで、高ぶる気持ちを抑えることができたようだった。

やがて山口の「ちゃんと挨拶して、次につなげよう!」、青木の「泣いてお別れはやめよう。笑顔で最後にバイバイでいいじゃん!」との励ましを受け、内藤は「じゃあ、飛羽真のセリフを言っていいかな。勢いで言いたい! 1年間、この言葉に助けられました。お世話になったセリフ、本気で言わせてください」と決意を固め、飛羽真の決めゼリフ「物語の結末は、俺が決める!」を叫んだ後「1年間『仮面ライダーセイバー』を応援してくださって、ありがとうございました!」と改めて大勢のファンに感謝の気持ちを表し、イベントの結末を見事に決めてみせた。

Vシネクスト『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』は新宿バルト9ほか全国劇場で期間限定上映中。5月11日には東映ビデオよりBlu-ray&DVDが発売される。

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