「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、無関係と思われる物事に意外なことが影響することを表現した日本のことわざです。聞いたことがあっても、「なぜ風が吹くと桶屋が儲かるのか」といった言葉の意味をしっかりと理解できている方は案外少ないのではないでしょうか。
「風」と「桶屋」の関係はことわざの意味を理解するとわかりますが、この理論はビジネスシーンでも使われる場合があります。本記事では「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味や話の展開をくわしく解説します。さらに、類語や英語表現、例文もご紹介していきます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは?
このことわざの由来だといわれているのが、江戸時代の浮世草子である無跡散人「世間学者気質(かたぎ)」です。また、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」でも使われています。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の読み方と意味
読み方は「かぜがふけばおけやがもうかる」です。
意味は「ある事象が発生したことより、意外なところに影響が及ぶこと」です。ほかに「大風が吹けば桶屋が儲かる」「風が吹けば桶屋が喜ぶ」も同じ意味で使われます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」理由
なぜ「風が吹く」ことが「桶屋が儲かる」という結果に結びつくのかは、話の流れを理解する必要があります。「風が吹けば桶屋が儲かる」のお話は以下のような流れで進行します。
2. 砂ぼこりが目に入り、視力を失う人が増える
3. 視力を失った人が増えると三味線が売れる
(江戸時代当時、視力を失った人は三味線で生計を立てていた人が多かったため)
5. 三味線の皮の材料として猫の皮が必要になるため、猫がたくさん捕獲される
6. ねずみを退治する猫が減るとねずみが増える
7. ねずみが増えるとねずみが桶をかじるから、桶に穴があく
8. 桶の需要が増えるから、桶屋が儲かる
「あてにならない期待をすること」の例えの意味も
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉は、原因と結果をあらわす意味のほか、「あてにならない期待をすること」といった意味で使われる場合もあります。
「可能性の低い因果関係を無理やりこじつける理屈やいいぐさ」の意味として、皮肉をこめて使われることもあるので、注意しましょう。
現代版「風が吹けば桶屋が儲かる」のビジネス理論
ビジネスの世界においても、「風が吹けば桶屋が儲かる」といえる事象が生じることがあります。
例えば、株価の上下は単純ではなく、思わぬことが影響して上がったり、下がったりします。さまざまなことが影響するため、「風が吹けば桶屋が儲かる」の理論だといえるでしょう。
また、最近の事例では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、なぜかホットケーキミックスが売り切れになったという現象がありました。
新型コロナウイルスにより、親は在宅ワーク、子どもは学校が休校となり、自宅で家族と一緒に過ごす時間が増えました。すると、小さな子どもと一緒にお菓子作りが楽しめることからホットケーキミックスが売れたのです。
「新型コロナウイルスが原因」となり、「ホットケーキミックスが売れる」という結果になるということは、多くの人が予想できなかった意外なこと。意外なところに影響が出たという点で「風が吹けば桶屋が儲かる」の現代版といえます。
相関関係ではなく因果関係
「風が吹けば桶屋が儲かる」の「風」と「桶屋」の関係は、相関関係ではなく因果関係となります。
相関関係と因果関係は言葉がとても似ているため混同しがちですが、相関関係とは、「ふたつの事柄のひとつが変化すると、もう一方も変化する」という関係。それに対して因果関係は「片方が原因でもう一方が結果」という関係です。
また、相関関係ではふたつの事柄が起こる順番は関係ありませんが、因果関係は必ず「原因」が先に起き、その後「結果」が起きると順番が決まっています。
「風が吹けば桶屋が儲かる」にあてはめてみると、風が吹いた後、桶屋が儲かるという結果が起こっていますので、「原因」の後に「結果」が起きていることがわかり、因果関係だと判別できます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の類語
複雑な因果関係をあらわす「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉を他の言葉で表現しなければいけないシーンもあるかもしれません。ぜひ、類語についても理解しておきましょう。
バタフライ効果 (バタフライ エフェクト)
「butterfly effect (バタフライ エフェクト)」は日本語で「バタフライ効果」ともいいます。
1972年の米国の気象学者ローレンツによる「蝶の羽ばたきが遠くの場所で竜巻を引き起こすか」といった講演の演題が由来の言葉で、「小さなことがいずれ大きなことの引き金になる」といった意味があります。
言葉の意味はとても似ていますが、「風が吹けば桶屋が儲かる」は「小さなきっかけで大きなことが起こる」といった意味で使われることがないため、その点が違います。
因果応報
読み方は「いんがおうほう」。意味は「過去の行いの善悪によって、善い行いをすれば善い結果、悪い行いをすれば悪い結果が現れる」です。原因の「因」により結果の「果」が生じるという意味があり、仏教用語が四字熟語になっています。
「風が吹けば桶屋が儲かる」と似ている言葉ですが、因果応報の類語は「自業自得」。現在では、よい意味として使われるより悪い意味の「悪因悪果」として使われることが多くなっています。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の英語表現
「風が吹けば桶屋が儲かる」を英語で表現する場合、そのまま直訳しても意味は通じないでしょう。似た表現としては以下の言葉があります。
バタフライ効果
さきほどご紹介した「バタフライ効果」のこと。厳密には違いますが、似たような言葉として使えます。
どんな悪い風でも誰かに利益を与える
こちらも厳密には違う意味ですが、「無関係と思われる物事に意外なことが影響する」というニュアンスに近い表現として使えます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」を使った例文
「風が吹けば桶屋が儲かる」の使い方を理解するため、ふたつの意味それぞれの例文をいくつかご紹介します。
1. コロナ禍であの商品が売れるとは、まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」だね
2. 株価の上下に関する理論を「風が吹けば桶屋が儲かる」を使って解説をした
3. まったく関連のないあの業界の売上が落ちることで当社の売上が伸びるとは「風が吹けば桶屋が儲かる」理論といえるね
1. 「風が吹けば桶屋が儲かる」とは考えずに地道に努力することが大切だ
2. 「風が吹けば桶屋が儲かる」のような奇跡は期待するな。しっかりと対策をしておこう
3. 彼は考えが甘いようで「風が吹けば桶屋が儲かる」を本気で信じているようだ
「風が吹けば桶屋が儲かる」の意味を理解しよう
「風が吹けば桶屋が儲かる」は、「意外なところに影響が及ぶこと」といった意味と「あてにならないことを期待すること」といったふたつの意味で使われることのあることわざです。
現代のビジネスシーンでは、ある状況下で予想もしなかった製品が売れるといった意味で、ビジネスチャンスをあらわす言葉ともいえますし、「風が吹けば桶屋が儲かる」を期待するより、日々の努力が大切といったいましめにも使えます。
このふたつの意味や使いどころをしっかり覚えて、日々の会話などで活用できるようにしましょう。