「この法律はもはや形骸化してしまっている」など、形骸化は時折使われることがある言葉です。一般的に浸透している表現ではありますが、言葉の成り立ちや正確な意味を知らないまま使っている人も多いでしょう。
この記事では、形骸化の意味や使い方、類語や対義語、英語表現などを例文で解説します。
語彙力に自信がない人に役立つ内容ですので、形骸化の意味を理解して活用するためにも、ぜひご一読ください。
形骸化の意味と読み方
「形骸化(けいがいか)」には、「実質的な意味を失って形式だけが残る」という意味があります。そのものが誕生・成立したときの意義が失われてしまい、中身がない形だけのものになってしまう状態を指す言葉です。
「形骸」「化」それぞれの意味
形骸化の「形骸」には、「外側のみを残して、実質的な意味が失われているもの」という意味があります。「ありさま」「姿」などの意味がある「形」と、「骨組みだけが残った体」という意味がある「骸」との組み合わせでできた言葉が「形骸」です。
「化」には「前と違った姿・状態になる」という意味があります。これらの言葉を組み合わせて完成した形骸化が、「形式だけが残った」という意味の言葉になったわけです。
形骸化の類義語
形骸化には似たような状況で使われる言葉がほかにもあります。ここでは、形骸化の代表的な類義語とその例文をそれぞれ紹介しますので、比較してみましょう。
「死文化」
・社内ルールはあるが死文化していて、役割を果たしていない
「死文化」の意味は「条文はあるが、もう効力を持たない文章のこと」です。法律やルールなどが意味をなしていない状況で「死文化」が使われる場合には、形骸化と同じ意味で言い換えが可能です。
「有名無実化」
・プレミアムフライデーの導入時は積極的に取り入れられていたが、今は有名無実化している
「有名無実化」とは、「名目上は存在していても実質的には何の意味も持たないこと」を意味する言葉です。形骸化と似たような意味で使われる言葉として覚えておきましょう。
「形ばかりの」「名ばかりの」
・部署の方針は決まってはいるが、形ばかりだ
「形ばかりの」の意味は「内容はともかく、体裁だけは整っていること」です。「名ばかりの」には、「形式は整っていても実質が伴っていないこと」という意味があります。どちらも形骸化と似た意味を持ちますので、類義語として覚えておきましょう。
「官僚化」
・名目だけの官僚化したチームだと業績アップは期待しにくい
「官僚化」は、「組織がうまく機能しない」という意味で使われる言葉です。会社やチームなど、組織が形骸化する状況では、形骸化は「官僚化」と言い換えることができます。
「弱体化」
・営業部長の肝いりで発足したチームだったが、社内情勢の変化で弱体化している
「弱体化」の意味は「組織などの力が衰えること」です。「官僚化」と同じように、会社やチームなどに対して形骸化が使われる場合は、「弱体化」に言い換えることができます。
形骸化の対義語
形骸化の類義語とともに、反対の意味を持つ言葉も覚えておくと役立ちます。ここでは、形骸化の対義語を、比較の例文とともにみていきましょう。
「活性化」
・定例会議を活性化させるためには、積極的な発言が求められる
「活性化」には「社会や組織などを活発にすること」という意味があり、形骸化の対義語として使われます。
形骸化の英語表現
仕事や日常生活の中で英語を使う機会がある人は、形骸化の英語表現も確認しておきましょう。ここでは、形骸化の代表的な英語表現を紹介します。
becoming a dead letter
・This law had become a dead letter and should be repealed.
(この法律は形骸化しているので廃止するべきだ)
「becoming a dead letter」は「形骸化する」の英語表現です。法律やルールなど、文章で構成されているものが、形骸化して意味をなしていない場合によく使われます。
becoming a mere shell
・I think there are many rules that are becoming a mere shell.
(形骸化しているルールが多いと思います)
「mere」の意味は「~にすぎない」、「shell」の意味は「骨組み」です。「becoming a mere shell」を直訳すると「骨組みにすぎない」となります。「~になる」を意味する「become」と組み合わせた「becoming a mere shell」は、形骸化の意味で使われる表現です。
形骸化の使い方と例文
形骸化は硬い言い回しのため、日常会話で使う機会はそう多くありません。中には、ビジネスの場でどう使えばいい言葉なのかわからないという人もいるでしょう。
ここでは、形骸化の使い方を具体的な例文で紹介します。
「形骸化する」を使った例文
・社内規則はもはや形骸化していて、役割を果たしていない
・形骸化したルールばかりで、実情に即していない
・数年前に会社の方針が示されたが社会の流れとあわなくなり、形骸化してしまった
・義務で行っているチェック項目がいくつかあるが、形骸化して意味をなしていない
・プレミアムフライデーの導入時は盛り上がったが、現状我が社では形骸化している
上記のように、「形骸化する」という言い回しは、ビジネスシーンで使われることが多い表現です。
「形骸化を防ぐ」を使った例文
・今後は規則の形骸化を防ぐために、対策をしていく
・ルールが形骸化するのを防ぐために、毎月見直されている
・育児休暇制度の形骸化を防ぐには、周りの協力が必要不可欠だ
形骸化はネガティブな意味で使われる言葉ですが、上記のような「形骸化を防ぐ」という表現を使って、前向きに表現することができます。
形骸化は形式だけが残ることを表す言葉
形骸化とは、「中身がなく形だけのものになること」を意味する言葉です。骨組みの形だけが残って、中身は消失した状態を表しています。
比較的ネガティブな意味として使われやすく、「形骸化する」「形骸化を防ぐ」などの使い方で用いられるケースが多いです。形骸化には「死文化」や「名ばかりの」など類義語も多いため、あわせて覚えておくと役立ちます。
形骸化という言葉はビジネスなどで使われる機会がある表現です。この記事の内容を参考に、使い方を理解しておきましょう。