寄与という言葉は、表彰状の文面や法律用語などで使われることが多い言葉です。しかし、日常会話で使われる機会はあまりないので、意味や言葉の成り立ちなどを意識したことがない人もいるでしょう。

本記事では、寄与という言葉の意味や使い方、類語表現などを紹介します。

  • 寄与の意味と読み方とは

    寄与の意味や使い方・類義語などを紹介する記事です

寄与の意味とは

「寄与(きよ)」には、「社会や人のために役立つこと」という意味があります。人に貢献する場合はもちろん、ものごとに対しても使え、「ものごとが変化するのに影響を与えること」という意味もある言葉です。

「寄」「与」それぞれの意味

寄与に使われている「寄」には、「人にものを預ける」「送り届ける」という意味があります。「与」の意味は「与える」です。

似た意味を持つ2つの漢字の組み合わせで、「社会や人のために役立つこと」という意味の寄与という言葉になりました。

いい意味で使われることが多い

寄与は、「ものごとにいい影響を与える」「人の役に立つ」など、いい意味で使われることが多い言葉です。悪い意味で使われることはあまりありません。

ただし、経済用語などほかの言葉と組み合わせて使う場合には、ネガティブな意味で使われることもあります。

寄与の使い方・例文

寄与の具体的な使い方を紹介します。

寄与する

・あの教授の研究は、日本のがん対策に大きく寄与するといわれている
・〇〇殿は永きにわたり、当社の業績の発展に大きく寄与されました。よってその功績をたたえここに表彰いたします
・この特許は、わが社の産業技術の発展に寄与している
・一見口うるさいだけのようだが、彼の働きは労働環境の改善に大きく寄与した

上記のように、「寄与する」という言葉で使われることが多いです。

  • 寄与の使用例

    寄与の具体的な使用例を紹介しました

寄与の関連語と意味

ここでは、寄与の関連語をご紹介します。

「寄与度」の意味

「寄与度」とは、経済用語としてよく用いられます。ある合計値の変動に対して、その内訳の要因がどれだけ影響しているかをあらわした度数のことです。

例えば、農産物の産出額といった経済指標の上昇または下落に対して、それぞれの構成要素の上昇・下落率が与える影響を、寄与度を使ってあらわします。

「寄与率」の意味

「寄与率」は「寄与度」と同じように、経済用語としてよく使われる言葉です。寄与度を変動全体に対する百分率(%)であらわしたものが寄与率となります。

「寄与分制度」の意味

「寄与分制度」とは、民法に定められている財産相続における制度のことをさします。対象は被相続人(亡くなった人)の生前の財産維持や増加、療養看護などに対する特別な貢献があったと認められる相続人です。共同相続人の協議で定めた分の相続財産を取得することが認められます。

「寄与分」の意味

「寄与分」とは、「寄与分制度」と関わりが深い、財産相続時に理解しておきたい言葉です。

共同相続関係にある相続人が、被相続人の財産の維持や増加に寄与したのに、生存中に対価や補償を受けていなかった時に発生します。共同相続人の間で財産分配が公平になるよう、寄与者に認められている、その寄与に応じた特別の持分のことが「寄与分」です。

「特別寄与」の意味

「特別寄与」とは、被相続人に対して無償で療養看護や労務の提供をしたことで、被相続人の財産の維持や増加に、特別の寄与をした被相続人の親族が対象となる制度です。ただし、相続人や相続の放棄をした人、欠格事由に該当した人、相続権を失った人は除きます。

相続開始後、特別寄与者は寄与に応じた額の金銭を請求可能です。

  • 寄与の意味と読み方とは

    寄与や寄与を含んだ言葉の意味を紹介しました

寄与の類義語

寄与には似た意味を持つ言葉がいくつかあるので、寄与との違いを理解して使いわけましょう。ここでは、寄与の代表的な類義語を紹介します。

貢献

・〇〇殿は永きにわたり、当社の業績の発展に大きく貢献されました
・〇〇殿は永きにわたり、当社の業績の発展に大きく寄与されました

「貢献」の意味は「ものごとや社会のために役立つよう尽力すること」で、寄与とほとんど同じ意味で使われます。「貢献」には「たてまつる」という意味も含まれていますので、謙譲語として使うのは「貢献」です。

一方寄与は、目上から目下の人に対する言葉として使われます。

役に立つ

・彼の働きは労働環境改善の役に立った
・彼の働きは労働環境改善に寄与した

「役に立つ」には、「使って効果がある」「有用である」などの意味があります。寄与のように「上から下へ」というニュアンスはありませんが、意味自体はほぼ同じです。

尽力

・教授は研究で科学技術の発展に尽力した
・教授の研究は科学技術の発展に寄与した

「尽力」の意味は「力を尽くすこと」「骨を折ること」などで、寄与と使われる状況は似ています。ただし寄与は「尽力した結果」をさしますし、寄与のように、役に立ったかどうかは問いません。使われる状況が少し異なる点に気をつけて使いわけましょう。

  • 寄与の類義語

    寄与の類義語と寄与との違いを紹介しました

寄与の対義語

寄与とは反対の意味を持つ対義語もいくつかあります。寄与との違いをおさえておきましょう。

障害

・あの教授の研究は、日本の感染症対策の障害となってしまった
・あの教授の研究は、日本の感染症対策に寄与した

「障害」とは、「妨げること」「妨げとなるもの」などをさす言葉です。「役に立つ」を意味する寄与とは逆の意味を持つ言葉として使われます。

阻害

・彼の働きは労働環境の改善を阻害した
・彼の働きは労働環境の改善に寄与した

「阻害」の意味は「妨げること」「邪魔すること」などです。寄与とは真逆の意味で使われる言葉として、覚えておきましょう。

  • 寄与の対義語

    寄与の対義語には「障害」や「阻害」などがあります

寄与の英語表現

寄与の代表的な英語表現をみていきましょう。

contribution

・She received an award for her contribution to the development of the town
 (彼女は町の発展に寄与したことで賞を獲得した)

「contribution」には「寄贈」「貢献」などの意味があります。寄与の英語表現としても使われるので、覚えておきましょう。

service

・his distinguished service
 (彼の多大なる寄与)

「service」はたくさんの意味がある名詞です。「役に立つこと」「尽力」などの意味もあり、状況によっては寄与の英語表現としても使われます。

  • 寄与の英語表現

    寄与の英語表現には「contribution」などがあります

寄与の意味とは人や社会に力を尽くして貢献すること

寄与とは、「人のために力を尽くすこと」という意味で使われる言葉です。一般的には「寄与度」「寄与率」などの言葉でよく使われます。また、法律用語として「寄与分制度」「特別寄与」などの言葉があり、一生のうちに接する機会がある人も多いでしょう。

寄与の類義語としては「貢献」や「尽力」などが挙げられます。

寄与は日常では使う機会がそう多くはないですが、覚えておくと役立つ言葉です。意味や使い方を理解しておきましょう。