――終わってみれば、福岡戦の翌節から始まった7連勝で逆にマリノスに大差をつけました。川崎に脈打つ新しい力は来シーズンに挑む、2007年から2009年にかけて鹿島だけが過去に達成している3連覇を力強く後押しするのではないでしょうか。

間違いなくそうなりますね。再び3連覇に挑めるシーズンを迎えることを、選手として本当に幸せに感じますけど、3連覇はそう簡単なものではないとも2019年に思い知らされました。3連覇するためにはものすごい覚悟が必要だし、今まで通りでは全く通用しないシーズンになると思っている。現状維持とかではなくて、また何かを新しく生み出していかなければいけない。まずはチーム内で常にレベルの高い競争をしないことには対戦相手を上回っていくことはできないので、そこは若い選手やベテランの選手は関係なく、チーム内でしっかり競争していきたいと思っています。

――最終的には4位だった2019年は、何が反省点としてあげられるのでしょうか。

あの年は連覇した中で積み上げてきたものをまた発揮しよう、という形で臨みましたけど、相手ももう同じようにはさせないというか、どうすれば僕たちに勝ち点を与えないのかなど、割り切った戦い方をしてきた中でそれを上回り切れなかった。ただ単に攻撃力だけではなく、攻撃のアイデアや質もそうだし、守備も含めたすべてをただただ積み上げ、継続していくだけじゃなくて、もっと新しいものをやるとか、いろいろなオプションを持つとか、そういった部分が必要と強く感じさせられました。

――谷口選手が筑波大から加入した2014年はまだタイトルと無縁で、シルバーコレクターとも揶揄されていた川崎の変化をどのように見ているのでしょうか。

繰り返しになりますけど、一人ひとりが強くなってきましたよね。チームとしての強さはもちろんですけど、それを取り除いた時に一人ひとりが戦える力が、技術面でも体力面でも精神面でもすごく上がってきている。それは優勝した経験から来るものなのかな、という思いもあります。積み重ねてきたものが証明され、こうして優勝したんだという新たな経験値を得て、今シーズンの優勝に関わったすべての選手たちがそれぞれのパワーに変えて成長につなげていく。結果を出し続けなければわからないことだと思いますし、同時に今のルーキーや若い選手たちは「川崎は優勝するチーム」という認識を持って入ってくるので、僕たちもこれまで積み重ねてきた経験を伝えながら、みんなを巻き込んで強くしていく作業をしている。その意味で今はある種のいい流れというか、いい循環がチーム内に生まれているのかなと。

――常勝軍団になりつつある川崎のベースにあるのが、昨年引退した中村憲剛さんが長くチームを支えてきた中でなかなか勝てなかった悔しさであり、それが小林悠選手や登里享平選手に伝えられ、そして今現在は谷口選手さんに伝えられている、と。

勝てない時期の方が長かったし、僕自身も最初の数年はまったく結果を出せず、あるいは中途半端な結果に終わっていました。そういうチームからどうすれば優勝できるのか、何を変えていかないと優勝できないのかとすごく考えながらやってきたし、そこで僕以上に悠さんやノボリさん、憲剛さんはずっとそういった時期を過ごしてきました。今はようやくタイトルを取れるようなチームになってきて、勝って当たり前のチームにしたいという思いももちろんありますけど、一方で歩んできた道というか、勝てなかった時期があるというのも大事にしたい。そういった経験はすべて次に生きてくると思うので。