川崎フロンターレの2年連続4度目の優勝で、2021シーズンのJ1リーグが幕を閉じた。黄金時代を築きつつあるチームからは12月に開催された年間表彰式、Jリーグアウォーズでベストイレブンに7人もの選手が選出された。その中の1人でキャプテンとして個性派軍団をまとめ上げ、日本代表にも選出されているDF谷口彰悟選手(30)に、2位以下に大差をつけながらも、圧勝ばかりだった2020シーズンとは異なる試合内容が続いた優勝までの軌跡や、長丁場のシーズンのターニングポイント、なかなか勝てずにシルバーコレクターと揶揄された時期をあらためて振り返って思うことなどを聞いた。

  • 川崎フロンターレの谷口彰悟 撮影:蔦野裕

――2年連続3度目のベストイレブン受賞、おめでとうございます。2018年および2020年の受賞と比べて、心境的に違ったものはありますか。

そこまでの違いはないですね。この賞に関しては1年間の結果ですし、1年しっかりプレーし続けてきたからこそ選出されたと思っているので、まずは選んでいただいたことを光栄に思いますし、こうして個人的な賞をいただくことは個人的にはなかなかないことなので、胸を張って受賞させていただきました。

――MVPと得点王に輝いたレアンドロ・ダミアン選手をはじめ、川崎からは7人の選手がベストイレブンに名を連ねました。2017、2018年に続く2度目のJ1リーグ戦連覇を達成した今シーズンを、個人的な視点で振り返るとどうなるでしょうか。

昨シーズンはある意味で圧倒して優勝した感覚がありました。2021シーズンも数字上では2位との勝ち点差を10ポイント以上離しましたし、4試合を残して優勝も決められた。ただ、優勝するまでの過程は2020年とまったく違います。海外でACLを戦い、帰国後には隔離されながらリーグ戦を戦った期間も含めて、本当に厳しく、苦しい1年だった、という思いの方が強いですね。やめようと思えば簡単にやめられたというか、言い訳しようと思えばたくさんできまた1年でしたけど、誰一人としてそれをせず、常に目の前の一戦一戦に集中し続け、勝てない時でも自分たちを信じ抜いた。その意味ではチームの一人ひとりが強くなったという思いがあります。

――おっしゃったように、韓国で行われた9月14日のACL決勝トーナメント1回戦で蔚山現代(韓国)に敗れ、帰国後に2週間隔離されながらリーグ戦を戦いました。

相当きつかったと思います。僕自身はけがでACLには帯同せず、韓国から帰ってきたチームと合流しましたけど、みんなの顔を見て「ものすごく疲れている」と感じました。敗退したショックで少し気落ちしている部分もありましたし、一方でリーグ戦ではマリノスの勢いがすごくて、ひっくり返されるんじゃないか、といった空気も正直感じました。ただ、ACLの前にYBCルヴァンカップでも準々決勝で負けていた中で、ここで崩れてたまるか、という意地みたいな部分を全員がものすごく持っていた。ずっと首位に立ってきたリーグ戦だけは絶対に譲らないと、まさにプライドを持って隔離期間中の5連戦に臨んだ過程で、チームがまたひとつグッとまとまって、優勝という目標へ向かって進む、という覚悟を明確に共有できたと思っています。

――横浜F・マリノスには川崎が今シーズン初黒星を喫した8月25日のアビスパ福岡戦後の段階で、勝ち点1ポイント差に肉迫されていました。

マリノスは他を寄せつけない、圧倒する試合内容で勝ち続けていました。なので、どうしてもマリノスを見てしまうというか、このままなら追い越されるんじゃないか、という不安を恐らく全員が抱えていた。目の前の相手だけでなくマリノスとも戦っている状況でしたけど、結局は違うんですよね。勝ち点3を自分たちで手にしないことには何も始まらない。まずは目の前の相手に勝つことだけを考えて、勝った後にマリノスの結果を気にすればいい。戦う前からマリノスの結果を気にしても、僕たちには何もコントロールできない。今シーズンは若い選手が多かった中で、ベテラン選手を中心に優勝へ向かっていくための戦い方を示し続けたことで、崩れることなく戦い抜けたと感じています。