JR西日本の全線など乗り放題の「JR西日本 どこでもきっぷ」が発売中だ。3日間用は12月17日、2日間用は12月18日まで販売され、ともに利用期間は12月26日まで。JR西日本管内の新幹線や特急列車にも乗車できることから、多くの旅行者の注目を集めた。昨年発売された「どこでもドアきっぷ」とは異なり、1人での利用が認められていることも特徴となっている。

  • 「JR西日本 どこでもきっぷ」で山陽新幹線を走る「ハローキティ新幹線」にも乗車した

筆者は先月、旅行会社の店舗で2日間用の「JR西日本 どこでもきっぷ」を購入。往路は新神戸駅から下関駅まで、復路は小倉駅から新神戸駅まで利用した。下関駅と門司港駅で行われたイベントを取材しつつ、山陽方面への鉄道の旅を楽しんだ。

■基本的なプランニングに対する考え方

往復の旅行プランを考えるにあたり、往路・復路ともに山陽新幹線だけでは芸がない。そこで、往路は山陽新幹線と在来線を組み合わせたプランとした。新神戸駅から山陽新幹線「さくら547号」に乗り、岡山駅へ。定期列車としては日本唯一となった国鉄特急形電車(381系)の特急「やくも」に総社駅まで乗車し、総社駅から吉備線で岡山駅へ戻る予定だった。

岡山駅から広島駅まで再び山陽新幹線を利用。広島駅で昼食を取った後、山陽本線で岩国駅へ。非電化路線の岩徳線に乗り換え、徳山駅へ向かう。徳山駅から「ハローキティ新幹線」で運行される「こだま851号」で新下関駅まで行き、在来線に乗り換え、下関駅に至る。復路は小倉駅から新神戸駅まで山陽新幹線を利用する。復路の普通車指定席は「JR西日本 どこでもきっぷ」を利用し、現地で手配することにした。

■コロナ禍ならではの失敗も… (新神戸→広島)

当日、筆者は神戸市営地下鉄を利用して新神戸駅に着いたが、当初のプランより10分ほど早く到着したため、「さくら547号」の8分前に新神戸駅を発車する「のぞみ77号」に乗ることにした。ホームに上がると、ちょうど「のぞみ77号」が到着したので、「JR西日本 どこでもきっぷ」を片手に普通車自由席に座った。

  • 山陽新幹線で岡山駅へ

岡山駅到着前に行われる車内放送で、新型コロナウイルス感染症の影響により、特急「やくも」の一部列車が運休となっていることを案内していた。念のため、スマホで運行情報を確認すると、乗車予定だった「やくも5号」は運休の対象に。筆者は紙の時刻表で旅行プランを考えていたため、コロナ禍による運休をうっかり見落としてしまっていた。ウィズコロナ時代にあって、乗車する特急列車の運休の有無をウェブサイトやアプリ等で確認することはもはや常識なのかもしれない。

「のぞみ77号」は8時41分に岡山駅に到着。しかたがないので、9時29分に発車する吉備線経由の普通列車に乗り、総社駅で伯備線経由の普通列車に乗り換え、岡山駅に戻ることにした。

  • 吉備線(桃太郎線)の普通列車

吉備線は非電化路線のため、列車はすべて気動車で運行される。乗車した列車はキハ47形2両編成。ここ10年ほどで単色化が進み、外装は「首都圏色」と呼ばれた昔ながらの朱色となり、国鉄時代を知らない筆者もノスタルジーに浸る。吉備線は沿線に桃太郎のモデルとなった吉備津彦命ゆかりの史跡があることから「桃太郎線」の愛称が付けられ、車内の自動放送で「桃太郎」の歌が流れる工夫も。地元利用者が主体ながらも、史跡を巡る観光客の姿も車内で見かけたので、「桃太郎」効果は一定程度あるのかもしれない。吉備線といえばLRTへの移管がたびたび話題に上る路線であり、議論が今後進むかどうか、気になるところでもある。

10時8分、列車は終点の総社駅に到着。ここから伯備線の普通列車で岡山駅へ戻った。ちなみに、岡山~総社間は伯備線と吉備線で営業キロが異なるため、きっぷの運賃(大人)は伯備線経由で510円、吉備線経由で420円となる。一方、所要時間は伯備線経由のほうが吉備線経由より10分ほど短い。岡山駅まで戻った後、広島駅まで「のぞみ81号」に乗車した。

■元山陽本線から「ハローキティ新幹線」へ (広島→下関)

広島駅に到着し、ホームに立ったのはちょうどお昼時。駅直結の商業施設に立ち寄って「むさし」の「天むすむすび弁当」を買い、ホーム上でいただくことにした。深い味わいのおにぎりと大ぶりな天ぷらとのバランスが良く、カキなどの広島名物も一度に楽しめる弁当だった。

  • 広島地区の山陽本線を走る227系の普通列車

広島駅から岩国駅まで山陽本線の普通列車に乗車する。広島地区では列車の減便が相次いでおり、2021年3月に行われたダイヤ改正で、平日日中時間帯の大野浦~岩国間において、それまでの1時間あたり3本から2本になった。鉄道の旅で30分間隔になった影響は大きく、時間のロスを最小限に食い止めるため、時刻表で確認する必要がある。

岩国駅で岩徳線の列車に乗り換えた。正式には岩国駅から櫛ケ浜駅まで岩徳線だが、列車はすべて徳山駅まで乗り入れる。筆者が乗車した列車は岩国駅13時29分発の徳山行で、キハ40形1両での運転だった。エンジン音を唸らせ、岩国駅を発車すると、数分で隣駅の西岩国駅に着く。

  • 岩徳線の普通列車。1両で運転されることも

  • 西岩国駅。錦帯橋を模した洋風の駅舎で知られる

もともと岩徳線は、海側を走る山陽本線のバイパス線として1934(昭和9)年に全通し、山陽本線を名乗った。しかし現在の山陽本線と比べてトンネルが多かったこともあり、幹線として使われたのは10年ほど。1944(昭和19)年に山陽本線から分離されて岩徳線となり、今日までローカル輸送に徹している。西岩国駅は幹線時代の面影を色濃く残す駅で、1929(昭和4)年に岩国駅として開業。錦帯橋を模した洋風の駅舎を持つ。車内から駅舎の一部を確認でき、駅構内は1両の列車がもったいないほどホームが長く、広々としていた。

錦川鉄道の分岐駅である川西駅を過ぎると山深くなり、トンネル付近では25km/h程度でゆっくりと走る。玖珂(くが)駅には14時に到着。もともとは主要駅らしく2面3線だったが、現在は駅舎側しか線路がない1面1線となっている。利用されていないホームが残されており、幹線からローカル線になった岩徳線の稀有な歴史を感じさせる。

列車は櫛ケ浜駅で山陽本線に合流し、14時47分に徳山駅に着いた。ここから新下関駅まで山陽新幹線を利用。乗車した列車は「ハローキティ新幹線」で運行される「こだま851号」だった。「ハローキティ新幹線」のダイヤは専用ウェブサイトで公開されている。

「ハローキティ新幹線」はまさしくハローキティ一色の車両だった。1号車は「HELLO! PLAZA」と呼ばれ、販売エリアと沿線の魅力を伝えるスペースが設けられている。窓に並行になるようにベンチ状のいすが配置され、女性利用者が友人と語らいながら車窓風景を眺めていた。販売エリアではハローキティグッズが販売され、女性だけでなく男性も熱心に商品を見つめていた様子。ハローキティが幅広い世代に人気のキャラクターであることを再認識できた。

  • 「ハローキティ新幹線」の1号車「HELLO! PLAZA」(2018年6月の報道公開にて撮影)

  • 「ハローキティ新幹線」の2号車「KAWAII! ROOM」(2018年6月の報道公開にて撮影)

筆者は床面がピンクの2号車「KAWAII! ROOM」に乗車。「ハローキティ新幹線」として使用される500系は1997(平成9)年デビューの車両だが、ハローキティの世界観もあってか、四半世紀近く前の車両とは思えなかった。「こだま851号」は新下関駅に15時45分に到着。山陽本線の列車に乗り換え、下関駅には16時頃に到着した。

翌日は午前に下関駅で山陽本線(厚狭~下関間)開業120周年記念列車の出発式、午後に門司港駅で「36ぷらす3」運行開始1周年の記念イベントを取材。その後、小倉駅から「のぞみ42号」に乗り、新神戸駅までの帰路についた。

■時間に余裕を持ちたい普通車指定券の入手

「JR西日本どこでもきっぷ」は、普通車指定席を6回まで追加料金なしで予約できる。問題は指定席の予約方法だ。JR西日本ネット予約「e5489」で購入した場合と旅行会社で購入した場合では、指定席の予約方法が異なる。筆者が利用した2日間用は、JR西日本の「みどりの券売機」で手配することができない。JR西日本・JR九州(福岡県・佐賀県内)管内のおもな旅行会社もしくはJR西日本の「みどりの窓口」で指定席を手配することになる。

  • 2日間用の「JR西日本 どこでもきっぷ」は旅行会社のみの販売

  • 「JR西日本 どこでもきっぷ」に付随する指定席交付記録券

筆者は今回、小倉駅の「みどりの窓口」で「のぞみ42号」の指定席券を入手した。窓口では「JR西日本 どこでもきっぷ」と付随する指定席交付記録券を提示し、指定券を手に入れることになる。筆者の場合は5分で入手できたが、場合によっては時間がかかるかもしれない。それを避けたいなら、「JR西日本 どこでもきっぷ」の購入時、旅行会社の店舗で指定券を手配したほうが良さそうに思えた。