• (左から)矢野了平氏、木月洋介氏、日高大介氏

――今後、クイズ界としてテレビに期待することは何でしょうか?

矢野:いくつか企画書を書いてるんですけど、今、クイズ番組をテレビの中でやろうとすると、「ゴールデンでやれて、そのシステムで十何年もやっていけるか」というところを求められるんです。でも、YouTubeでQuizKnockとか、クイズ好きがやってるチャンネルを見ると「今週はこのクイズをやってみました」とか、いろんなクイズを試したりしているので、そういうのを楽しむ番組をやってもいいんじゃないかなと思うんですよ。クイズ番組って“こういうものです”っていう固定概念がすごくあるんですよね。そういうところを取っ払って、もっと自由にクイズを使ったり楽しんだりするフォーマットがあってもいいんじゃないかなと。

日高:ガチもあったりゆるいのもあったり、「それクイズ?」って思わせるものがあったり、ごった煮になっているような。

矢野:『水曜日のダウンタウン』(TBS)だって、「説」というフォーマットがあるけど、毎回やることが違ってたりするじゃないですか。『ガキの使い』(日本テレビ)もそうだし、バラエティだと「今週はどんなことやるんだろう」ってなりますもんね。あるいは、もっとこれまでのテレビのフォーマットにないクイズの使い方も、あるんじゃないかと思うんです。

木月:「総合クイズバラエティ」ですね。

矢野:そうですね。もしかすると「クイズドキュメンタリー」になるかもしれないし。

日高:いいね! 「今週はハズレ回だった」とかあるんだよね(笑)

矢野:全然あっていい(笑)。番組にとって大事な“背骨”の部分さえ守っていれば、いろんなチャレンジをしていいなって思います。

日高:私、この20年くらいクイズの取材を受けてきましたけど、もうずーっと必ず言われるのが「クイズ番組って、今ブームですよね」って。

(一同笑い)

日高:だからテレビに期待するのは、ある種錯覚かもしれないけど、「今クイズ番組多いですよね」って言われるのが、ずっと続くといいなと思いますね。

矢野:最近は、バラエティ番組なんだけど中身はほぼクイズ番組みたいなことも多いですよね。『スクール革命!』(日本テレビ)とか、『(火曜は全力!)華大さんと千鳥くん』(カンテレ)とか。そういう意味では、クイズ番組っていう概念にとらわれないような楽しみ方は、できてるんじゃないかなという気がします。

■クイズ番組の主役はやっぱり“人”

日高:クイズの歴史を見てみると、結果論ですけどやっぱりネットがない時代のクイズと、ネットが出始めた頃のクイズと、スマホが普及してからのクイズって、性質が全部違うんだなって思います。インターネットがない時代のあの牧歌的なクイズだったからこんなに語り継がれるんだなと思いますし、だから今、クイズ番組が転換期を迎えているような気がしてるんです。

木月:そのときにどういう進化をしていくかですよね。

矢野:結局、人を見る番組というのがテレビとしては楽しい。そういう意味では、クイズ番組もどう人を見せていくかに特化していくと思うんです。顕著だなと思ったのが、『(クイズ!あなたは)小学5年生より賢いの?』(日本テレビ)って、『平成教育委員会』(フジテレビ)みたいな教科書クイズの王道+『(クイズ$)ミリオネア』(同)みたいなドキドキ感の足し算だったじゃないですか。そこに、3軸目として「この人は今お金に困ってます」といった“人間ドラマ”が足されたんですよ。そしたら、どんどん視聴率が伸びてきたんですよね。

木月:五味一男先生(※)は、やっぱりすごいですね。

(※)…『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』監修。『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』『マジカル頭脳パワー!!』『頭脳王』といったクイズ番組のほか、『投稿!特ホウ王国』『速報!歌の大辞テン』『エンタの神様』などを手がける。

日高:クイズ番組ってやっぱり人なんだよね。「あのクイズ良かったね」とは、なかなかならないですもん。90年代だったら西村顕治さんというガタイの大きい人がクイズのアイコンになっていましたから。

次回予告…~お笑いディレクター&放送作家編~

●矢野了平
1977年生まれ、埼玉県出身。高校時代からクイズ番組で活躍、東洋大学在学中からクイズ作家の仕事を手がけ、01年にプロの放送作家としてデビュー。現在の主な担当番組は『くりぃむクイズ ミラクル9』『マツコ有吉かりそめ天国』『有吉クイズ』(テレビ朝日)、『水曜日のダウンタウン』『オオカミ少年』『オールスター感謝祭』『クイズ☆正解は一年後』『佐藤健&千鳥ノブよ!この謎を解いてみろ』(TBS)、『潜在能力テスト』『今夜はナゾトレ』『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(フジテレビ)、『天才てれびくんhello』(NHK)など。

●日高大介
1977年宮崎県生まれ、静岡県育ち。高校時代からクイズ番組で活躍し、慶應義塾大学在学中からクイズ作家の仕事を手がける。06年に『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ)でプロの放送作家として活動を開始する一方、『お願い!ランキング』『キス濱テレビ』『真夜中のプリンス』(テレビ朝日)、『笑っていいとも!』(フジテレビ)、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)、『勇者ああああ』(テレビ東京)などに出演。現在の主な担当番組は『全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ)、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日)、『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(フジテレビ)など。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを手がける。クイズ番組は、現在放送中の『今夜はナゾトレ』のほか、『タモリのジャポニカロゴス』『全国一斉!日本人テスト』『優しい人なら解ける クイズやさしいね』などを担当。