ミレニアム囲いと美濃囲いの差が顕著に表れた一局

第47期棋王戦(主催:共同通信社)挑戦者決定トーナメントの▲谷合廣紀四段-△佐藤康光九段戦が10月12日に東京・将棋会館で行われました。結果は106手で佐藤九段が勝利。ベスト4進出一番乗りとなりました。


ベスト16以上からの第47期棋王戦挑決トーナメント表。敗者復活戦は省略

先手の谷合四段の四間飛車に対し、後手の佐藤九段はミレニアム囲いで対抗します。ミレニアム囲いはその名の通り、2000年前後に流行した囲いですが、近年再流行しています。

金銀4枚で囲おうとする佐藤九段に追従するように、谷合四段も美濃囲いにもう1枚銀を合体させるダイヤモンド美濃を構築。両者がっちりと玉を囲い合う持久戦になりました。

先に動いたのは佐藤九段。歩を次々と突き捨て、右桂を五段目に跳ねて攻めていきました。香損となったものの、飛車先を突破して好調です。

一方の谷合四段は飛車の活用が見込めません。そこで▲3五歩と突いて、相手の桂頭を攻めていきました。

居飛車側も左美濃だったら厳しい攻めとなるところですが、佐藤玉の守りはミレニアム囲い。桂1枚取られたところで金銀4枚がしっかりと守りに働いているため、囲いはびくともしません。

そして佐藤九段も相手の桂頭攻めを逆用して、3筋から攻めていきます。こちらも桂頭攻めですが、ここで彼我の囲いの差が如実に表れました。

ミレニアム囲いの佐藤玉は2一にいるのに対し、ダイヤモンド美濃の谷合玉は2八にいます。この一段差が大きいのです。先手が▲3三歩成と桂を取った手が王手にならないのに対し、後手が△3七歩成とすればこちらは王手。先手玉の方が相手の攻めに近い位置にいます。

さらに、争点になっている3筋への駒の利きも違います。後手の金銀はすべて3筋に利いているため、堅い守りになっていますが、先手の5八金の利きは3筋に届きません。横から攻められた際には強力な守り駒になるダイヤモンド美濃の金ですが、上部からの攻めには無力です。

当然、佐藤九段もこのダイヤモンド美濃の弱点に着目します。8六の飛車を敵陣に成り込まずに、六段目に利かせたまま3筋を攻めたのが好手順。横から相手玉を攻めるよりも、相手玉の上部脱出を防いで上から攻めた方がいいとの判断です。

本局、攻めだした佐藤九段が止まることはありませんでした。銀を捨て、馬を切り、ひたすら相手玉目指して攻めていきます。懸命に受ける谷合四段でしたが、佐藤九段の寄せは正確。最後は相手の歩の利きに桂を捨てる決め手が飛び出して勝負あり。最後は佐藤九段が谷合玉を即詰みに打ち取りました。

この勝利で佐藤九段はベスト4に進出しました。棋王戦はベスト4以上は2敗失格方式を採用しているため、ここからは1敗までは許されます。無敗なら3勝、1敗すると4勝で挑戦権獲得です。佐藤九段の次戦の対戦相手は、郷田真隆九段-斎藤慎太郎八段戦の勝者となります。

将棋連盟の会長として多忙な日々を送りつつ、各棋戦で活躍を見せる佐藤九段(提供:日本将棋連盟)
将棋連盟の会長として多忙な日々を送りつつ、各棋戦で活躍を見せる佐藤九段(提供:日本将棋連盟)