世の中の理(ことわり=物事の道理、道筋)もまだわからないような幼い子供が、自分で服を着たら、何が起きるでしょう? 子育て経験のある人なら想像つくかもしれませんね。そう、「前後ろが反対になる」か、「裏返したまま着ちゃう」。あるいは、その両方です。

「このタグがついているほうが後ろだよ」とか「ケバケバしているほうが裏側だよ」なんて伝えたって理解できるはずありません。これまで何千回と服を着てきたオトナならともかく、まだ数回、数十回しか自分で服を着た経験がないですからね……。

子育て中の親なら、きっと誰もが経験したことであろう“育児あるある”。でもこのパンツがあれば、そんなこともなくなるかもしれません。

チルドレン通信が展開する子供服ブランド「アルトタスカル」の新作サルエルパンツ「ぜんぶおもて」が、ツイッターで「画期的! 」「え、天才? 」と反響を呼び話題に。幼い子どもがいる筆者も、とっても気になっていました。

  • ぜんぶおもて

“ぜんぶおもて”……名前からどんなサルエルパンツか想像がつくかもしれませんが、「全部が表(おもて)」なんです。前後ろも、裏表も関係なく、全部が表。つまりこのパンツ、なにも考えずに手に掴んだそのまま履けてしまうというわけなんですね。私からも言わせてくださいよ。「これ考えた人、天才か? 」

ちなみにアルトタスカル、他にも裏表がない子ども用Tシャツ「どっちもおもて」や、丈を長めにしてお腹が出づらいようにしたベビー・子ども用肌着「おなかでぬ」などなど、かゆいところに手が届くアイデア子ども服を展開しています。商品企画などを担当する佐藤ねじさん(@sato_nezi)に、製品が生まれた経緯や想い、チャレンジしたポイントなどを聞いてみたい。そんな思いが高まり、お話を聞いてみることにしました。

『かわいい・おしゃれ』という視点でなく

――では佐藤さん、あらためて「ぜんぶおもて」が生まれた経緯について教えてください。

佐藤さん:「ぜんぶおもて」の製造販売をしているチルドレン通信さんは、もともと「しまむら」さんなどにも卸している子ども服製造会社の子会社なんですが、その中で「自社商品ももっと開発していきたい」というお話がありまして。私も参加してブランドを立ち上げることになりました。

競合が多い子ども服の世界で、新ブランドが存在する意義を考えたとき、“かわいい・おしゃれ”という視点でなく、「育児などが少し助かる」という視点から考えると良いよね、という結論になったんです。

――たしかに、子ども服で機能性を一番の売りにしているブランドって、ありそうでいて意外と少ないかもしれないですね。

  • 「ぜんぶおもて」開発コンセプトイラスト

佐藤さん:アルトタスカルを「あると助かる子ども服」というコンセプトにした初期の段階から、「裏表のない衣服」というアイデア自体はありました。子育てをしているメンバーでチームが構成されていることもあり、思いついたというより、普通に欲しいよね、という共通認識があった感じですね。

――なるほど、子どもが日常的に服を脱ぎ着する環境では、自然と出てくるアイデアではありますもんね。

佐藤さん:そうなんですよ。それで当初は、裏表がない子ども用Tシャツの「どっちもおもて」を発売しました。とても好評だったのですが、ツイッターで「ぜんぶおもてな製品もほしい」という声を多数いただきまして、今回の「ぜんぶおもて」を開発することになった、というのが経緯になります。

  • どっちもおもてTシャツ

ただ、もっとシンプルに言えば、自分たちがふつうに欲しいものを作っているというのが、本音だったりしますね。

開発で苦労したことは……

――この裏表前後がないサルエルパンツ、かなり革新的だと思うのですが、制作するにあたり、技術的な難しさはありましたか?

佐藤さん:そうですね、技術的に苦労したことは3点です。まずは、前と後ろの差をなくしつつ、履き心地も考えたシルエットを作ること。これはゆったりとしたサルエルパンツをベースに、試作を重ねることで解決しました。

続いて、ポケットを付ける位置や、その形状の工夫についてです。前後をなくすためにサイドポケット(カーゴポケット)にしたことと、着用時に足の指がポケットに引っかかってケガをしないよう、フラップ(ふた)付きのポケットにしました。

  • ポケットの形状など細かな工夫が

――なるほど、それでポケットがふた付きなんですね~。深い……

佐藤さん:最後に、使用する生地の種類です。2枚重ねの仕様のため、厚すぎず、一定の伸縮性もある素材を選びました。

――今後はサルエルパンツ以外の「ぜんぶおもて」も展開予定はありますか? ちなみに大人用の「ぜんぶおもて」もかなり需要あると思うのですが。

佐藤さん:はい、Tシャツや肌着の発売も予定しています。大人用については、たしかに欲しいという声は多かったので、チャレンジしてみたいという気持ちはありますね。

――やはり同じような気持ちの大人も多いんですね……。次回作も楽しみにしてます!

10月上旬に新作「ひかるふく」の発売を予定しているというアルトタスカル。意外とありそうでない機能性重視の子ども服は、子育て中の親世代の間で支持を広げているようです。みなさんはどう思いましたか?