「憚られる」は、遠慮や敬遠を表す言葉です。ビジネスシーンなどで耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。しかし、正しい意味を把握し、適切な場面で使えているか不安に感じている人もいるでしょう。

この記事では、憚られるの意味や類語について解説していきます。さらに、ビジネスシーンや日常生活で使われるシーンごとに例文を紹介していくので、実際に使うイメージを持ってマスターしていきましょう。

  • 憚られるの意味について

    ビジネスシーンにおいて目上の人に対して遠慮や慎みを表したいシーンは多いはず

「憚られる」の意味とは

「憚られる」は、遠慮や慎んでいる様子を意味し、「はばかられる」と読みます。

憚られるは慎む、遠慮するという意味をもつ「憚る」という動詞の未然形に、自発を意味する助動詞「れる」がつながった言葉です。ここでいう自発は、自然に起こってしまうことを意味しているので、慎んだり遠慮したりすることが当たり前だというニュアンスを持つことになります。

遠慮するのが当たり前というニュアンスから、自然と相手を敬っている様子になり、相手からしても悪い気がしないでしょう。

  • 憚られるの意味について

    ことわざとは意味が異なるのでどちらの意味もしっかり把握しておくとよいでしょう

「憚られる」のビジネスシーンでの使い方・例文

それでは、憚られるを失礼のないように使うにはどうしたらよいのでしょうか。使えるシーンと例文を紹介していくので、失礼のない使い方をマスターしていきましょう。

■目上の人に意見するとき

憚られるは遠慮や慎みを意味しているので、目上の人に意見をするときに使える言葉です。目上の人に自分の意見を伝えるのは恐れ多く、あまり気の進むことではないはずです。そこで、「私が意見をするのは憚られるのですが……」と始めることで、自分の腰の低さを表現することができます。

「大変恐縮ではございますが」といったクッション言葉に置き換えても問題はないので、シーンや相手によって使いわけてみましょう。

■目上の人に依頼するとき

憚られるは意見するのではなく、何かお願いしたいことがある場合にも使える言葉です。相手の事情を配慮したうえで依頼したいという気持ちが伝わるので、相手にとっても悪い気にはならないでしょう。

「お忙しいところ憚られるのですが、〇〇についてお願いしたくお電話いたしました」など低姿勢な様子を表現できます。

■実力以上の仕事を受けるとき

自分のスキルや実力以上の仕事を任されたときでも、憚られるを使うことができます。「大きな仕事を自分に任せていただきありがとうございます」という意味を込めて使い、感謝の気持ちも伝えられる便利な言い回しです。

「このような大役を任せていただけるとは憚られますが、大変うれしく思っております」といったように使い、恐縮しながらも感謝している気持ちを伝えられます。

  • 憚られるを使うシーンと例文を紹介

    目上の人に対する意見や依頼だけでなく大役を任されたときにも使える表現です

ビジネスで使える「憚られる」の類語・言い換え表現

先述の通り、憚られるを多用してしまうとってかえって失礼に値することもあります。そうならないためにも、類義語を把握して場面や相手によって使いわけられるようにしておきましょう。

■「ためらわれる」

気を遣って遠慮したくなってしまう様子や、何かを行うときに踏ん切りがつかないという表現で使われる言葉です。「私が言うのもためらわれるのですが……」と前置きすると、言いにくい意見を伝えるのにも適した表現になるでしょう。人前では言いにくいことや、言おうか悩んでいることなどを伝えるときに使ってみましょう。

■「恐縮ですが」

恐縮とは、身が縮こまるほどに恐れ入る様子や申し訳ない気持ちを意味しています。「恐縮ですが」とすることによって、自分が発言するなど恐れ多いですが、と相手を立てたうえで意見を表明することができます。

「誠に恐縮ですが、今回の件に関しましては辞退させていただきます」といったように、相手への申し訳なさと自分の希望を伝えるのに適しています。ビジネスシーンでもよく使われる言葉なので、覚えておくと便利でしょう。

■「出過ぎたことですが」

「出過ぎる」は立場をわきまえずに図々しい様子を意味しており、余計なことをするという意味をもっています。「出過ぎたことを言うようですが、少し休んだ方がよいのではないでしょうか」のように使い、目上の人に対しての意見を言いたいときに使える表現です。自分の立場を理解したうえで意見している印象になるので、言いにくいことも言いやすくなるでしょう。

  • 憚られるの類義語について

    言い換え表現を身につけておきましょう

「憚られる・憚る」を使った慣用句・ことわざ

ビジネスシーンでよく使われる憚られるですが、日常生活で使っても問題のない言葉です。例文を交えて紹介していくので、しかるべき場面で適切な使い方ができるようにしておきましょう。

■「憎まれっ子世に憚る」

「憚る」という言葉を聞いて、「憎まれっ子世に憚る」ということわざを思い浮かべた人も多いのではないでしょうか。実は、この場合の憚るには遠慮の意味はありません。どちらかといえば反対の意味で、幅をきかせる、のさばるという意味をもっています。

つまり、このことわざの意味は「憎まれっ子ほど社会ではのさばっている」ということであり、勝手気ままにふるまっている様子を表しています。

■「人目を憚る」

他人に知られないようにする、人目を気にするという意味で使われる「人目を憚る」という言い回しを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。この場合の憚るは、遠慮というよりも、後ろめたいことがあるから避けるといった意味で使われています。

「人間関係で躓いて以来、人目を憚って生活してきた」というように使い、人の目を避けている様子を表現します。反対に、人目を気にしないことを表現するには「彼は人目を憚らずに行動するのが悪い癖です」のように使うこともあります。

■「口にするのも憚られる」

これは恥ずかしいという意味で使われ、他人には言えない恥ずかしいことや申し訳ないことを意味しています。「中学生の頃の自分の生活は口に出すのも憚られるので、誰にも話していない」というように使い、遠慮よりも避けたい気持ちを強く伝えることができます。

■「少しは憚りなさい」

遠慮や慎みをもっと持ってほしいという意味でしかるときに使う言葉です。憚りなさいということは、自分自身の感情などを出さずに遠慮しろと言っているのです。「20代半ばなのだから、少しは憚って話しなさい」など身内に注意を促すときに使うことが多いでしょう。

  • 「憚られる・憚る」を使った慣用句 

    ビジネスシーンだけでなく一般的にも使われる言葉なので場面によって使い分けましょう

「憚られる」を使って遠慮する気持ちを丁寧に表現しよう

憚られるは、遠慮や慎みを表現する言葉です。自分の腰の低さを示せる表現ですが、多用しすぎると相手に気を遣わせてしまったり失礼に値したりすることもあるので、適度に使うように気をつけましょう。また、「憎まれっ子世に憚る」とは意味が違うので、誤用しないように意味を把握しておくとよいでしょう。

ビジネスシーンでよく使われる言葉ではありますが、一般的にもよく聞く言葉です。どのようなシーンでも間違いなく使えるように、例文をチェックして使えるようにしておきましょう。