「ご所望」は「欲しいと思っている」「望んでいる」という意味の言葉です。ビジネスシーンでよく見かける言葉ですが、正しい読み方や使い方は身についているでしょうか? 丁寧語としても使える万能な言葉なので、マスターして信頼されるビジネスマンになりましょう。

この記事では、ご所望の基本的な知識と、似ている言葉との違いについて解説していきます。さらに、例文も交えて使い方をくわしく紹介していますので、ビジネスシーンで自由に使えるようになりましょう。

  • ご所望の意味について

    適切な言葉遣いや使い方をマスターしてビジネスマンとして成長しましょう

ご所望の意味について

まずは、ビジネスシーンでよく使われるご所望という言葉の基本的な情報について解説していきます。ご所望は「ごしょもう」と読みます「望」という字は「ぼう」と読まれることが多いことから、間違えがちなので気をつけましょう。

ご所望は、「欲しいと思っている・望んでいる」という意味の言葉で、「ご」がつくことで丁寧な敬語表現になります。「所望」だけだと、敬語表現ではなく、「自分が望んでいる・欲しいと思っている」という意味をもつ名詞になるので、使う場面や使い方にはじゅうぶん注意してください。

■自分を主語にするときは注意が必要!

先述した通り、ご所望は敬語表現なので自分を主語に使うのは望ましくありません。上司や恩師、取引先の人など敬う対象の人が何かを欲しいと思っていたり、望んでいたりする場合に使う言葉だと把握しておきましょう。

もし、自分を主語に「所望」を使いたいのであれば、「ご」はつけません。「〇〇を所望している」のように使い、丁寧な言い回しにしたいのであれば「所望いたします」といった表現を使うようにしましょう。

■ご所望は接頭語のついた敬語表現

ご所望という言葉は、所望に丁寧な意味にする接頭語「ご」がついて敬語表現になっています。場面や使う相手によって使いわけ、目上の人に不快な思いをさせないように気をつけましょう。

自分がへりくだって相手の立場を高くする謙譲表現として使う場合は、「所望いたします」が適切です。自分が欲していることを示しているので、丁寧な意味をもつ「ご」は使いません。

また、尊敬語として使う場合は「所望される」と使います。「所望する」を敬語表現にした形で、「する」の敬語表現である「される」と一緒に使います。すでに「される」と敬語を使っているのにもかかわらず、「ご」を頭につけてしまうと二重敬語になるので好ましくありません。

■ご所望を英語で表現するなら

英語で表現したい場合は「所望」と似た意味をもつ、「request」「ask」「wish」「desire」などが適切でしょう。「所望のもの = something desired 」「ご所望の通り = that you have requested 」といったように使います。日本語とは違い、複数の表現方法があるので使いわけてみてください。

  • ご所望の意味について

    「ご」が敬語表現にしていることを把握して場面や相手によって使いわけましょう

ご所望に似た言葉との違いについて

ここからは、ご所望と似ている意味で使われる言葉を紹介し、ご所望との違いについて解説していきます。それぞれの意味を把握して、適切な場面で使えるようにしておきましょう。

■「ご要望」との違い

「ご要望」も同じく、何かを望んでいたり欲しがっていたりする場合に使います。頭に「ご」がついていることから、丁寧な敬語表現になっているので、目上の人が望んでいる場合に使います。

同じような意味をもっていますが、「ご要望」の場合は方法や手段を求めていることが多く、抽象的なイメージです。また、対象が複数である場合にも使われます。一方ご所望は、物体などのモノを求めている傾向にあります。具体的な物を求められている場合には、ご所望の方が適切でしょう。

■「ご希望」との違い

あることを実現してほしいと思うことや、叶えたい物事のことを指しており、こちらも敬語表現になっています。相手方にお願いするときに使う表現ですが、願いを叶えてほしいという気持ちが比較的弱いイメージで使われます。例えば個人的な願いや、優先度の低い願望をお願いする場合に使います。

■「ご志望」との違い

自分自身がこうなりたいと望んでいることを表し、これも「ご」がついていることで敬語表現になります。個人的な願いや望みを表す場合に使い、志望動機などが例として挙げられるでしょう。

■「ご意見」との違い

個人的な考えや主張の意味をもつ「意見」に、丁寧な「ご」がついて、敬語表現になっている言葉です。どちらかというと「ご要望」に似ている言葉ですが、考えを伝えるのみで行動を促しているわけではないという特徴があります。一方、「ご要望」を使うと、「~してください」というニュアンスになるので、相手の行動を促すことになります。

  • ご所望に似た言葉との違いについて

    似ている言葉はたくさんありますがそれぞれ意味が異なるので違いを理解しましょう

ご所望を使った例文を紹介

ここからは実際に使える場面を想定して、例文と一緒に紹介していきます。ビジネスシーンで使われる言葉だからこそ、実際に使うシーンを想像しながら見てみてください。

先述した通り、ご所望は具体的な対象物を欲しいと望んでいる場合に使われる傾向にあります。商品などの品物を欲しいシーンで使われることを覚えておきましょう。

◯「こちらがご所望の商品でございます」

取引先などが欲しがっていた商品を準備できたときに、このような表現を使うことができます。例えば、リクエストされていた新商品のサンプルなどを用意した場合に使うことになるでしょう。ご所望と敬語表現を使うことで、相手方に敬意を払うことができます。

◯「ご所望の方はお申し付けください」

取引先の相手や顧客などに対して、希望がある方からの連絡を促すシーンで使います。例えば、予約の空きが出たときや、ある商品のリクエストを受け付けていることを知らせる場合などに使います。相手の気持ちを、ご所望という言葉によって丁寧に表すことができます。

◯「お茶を所望します」

この表現では、自分自身が欲しいということを表すことができます。自分の希望や願いを表現したいときには、敬語表現に当たる「ご所望」を使うのは望ましくなく、「所望」を使うようにしましょう。

例えば、取引先の会社に行ったときに飲み物を尋ねられた場合などに使えるでしょう。ご所望は敬語表現になるので、誰の希望を対象にしているのかを考えてから使うようにするといいでしょう。

  • ご所望を使った例文を紹介

    上司や取引先の相手の望みを表現するならご所望、自分自身なら「所望」を

ご所望のNGな使い方

次にNGな使い方について、例文を交えながら解説していきます。間違った使い方をしないように、しっかりとNG例文を使いながら把握していきましょう。

×「訪問日時は来週の〇時をご所望します」

取引先への訪問予定を決めるシーンで、自分の都合を知らせるのにご所望を使うのはNGです。自分の望みを伝えているので、敬語表現を使ってしまうと、自分自身を敬っていることになってしまいます。この場合は「ご」を外し、敬語表現でない「所望」を使うのが望ましいです。

×「ご所望にそぐわない結果になってしまった」

ご所望を使うのは、対象が具体的な場合が多い傾向にあります。一方、「ご要望」は、方法や手段など抽象的なものを対象にすることが多く、抽象的なものに対しては「ご要望」を使うのが望ましいでしょう。そのため、この例文では「ご要望に沿えない結果になってしまった」とするのが適しています。

×「ご所望を今後の参考にさせていただく」

こちらも上記の例と同じように、対象が抽象的なものであるにもかかわらず、ご所望を使ってしまっています。相手方の望みを対象にしているので、敬語表現なのはOKですが、この場合は「ご意見」「ご指摘」などを使うのが望ましいでしょう。

×「貴重なご所望をいただけて幸いです」

こちらも品物など具体的なもの以外を対象としているので、ご所望を使うのは望ましくありません。この場合は、「貴重なご意見」とする方が適切でしょう。

商品や期間など具体的なものを対象にする場合は、「ご所望」を使うのが適切ですが、抽象的なものなどを対象にする場合は、「ご希望」「ご要望」「ご意見」などを使うのがいいでしょう。何を対象にしているのかを考えて、使うべきシーンを見極めましょう。

  • ご所望のNGな使い方

    具体的な商品などを主語にする場合に使う言葉なので抽象的なものには適しません

ご所望の使い方をマスターして丁寧な言葉遣いを心掛けましょう

「望」を「ぼう」と読むことが多いため、間違えがちな読みですが、「ごしょもう」が正しい読み方です。ビジネスシーンで使われることが多いので、読み方を間違えないようにしっかりと把握しておきましょう。

また、「ご」がつくことで敬語表現になっているので、自分自身の願いや望みを対象にする場合には、「所望」で使うようにしてください。一緒に使う言葉次第で、尊敬表現や謙譲表現にもなる万能な単語なので、適切なシーンで正しい使い方ができるようにしておきましょう。