――『セイバー』の1年間で、山口さんが身につけた“特技”があれば教えてください。

アクション部のみなさんから教えてもらった「逆立ち」ですかね(笑)。なにかひとつでも技を身につけようと思っていたのですが、バク転は練習したにもかかわらずマスターできず、やっぱりアクションは難しいなと感じています。ブレイズの剣技については、スーツアクターの永徳さんから直々に教わって、剣の回し方を練習しました。もともと僕が永徳さんのブレイズに少しでも近づけられるようにと思って始めたんですが、結局はまったく近づくことができず、天と地ほどの差がありましたね。でも、この1年間を通じて自信を持っているのは、僕と永徳さんが倫太郎/ブレイズの役を作り上げるため、いちばん話し合ったコンビだということ。自分の出番が終わった後でも現場に残って、永徳さんのアクションをずっと見ていましたから。

――改めて、山口さんから見た倫太郎の「いいところ」を教えてください。

倫太郎は、自分が正しいと思ったら誰に対してもしっかり向き合って、言うべきことを言える人物です。普段は前に出てこないけれど、頼られる局面ではしっかりと力を示す。そして仲間がやられそうになったときは、いちばん体を張って、地面に転がってでも懸命に立ち向かう。泥臭いところも彼の魅力です。僕自身も倫太郎を演じることで、何度も気持ちを熱くしましたし、「こいつ、いい奴だな」って思えることがたびたびありました。自分はどうなってもいいから、目の前にいるこの人を守らなきゃいけない、守りたいという倫太郎の姿勢には、強いメッセージ性があったように思います。

――『仮面ライダーセイバー』テレビシリーズが一区切りついたいま、お世話になった方にお礼をいうとしたら、どなたにどんなことを言いたいですか。

作品に関わったすべての方たちに支えられて、1年間やって来られたと思っているので、誰か1人に……ということはできません。上手くいったことばかりじゃなかったし、落ち込んでしまうときもありました。そのたびに、すれ違う人から「この前の芝居、よかったよ」「いつも頑張っているところ、見てるよ」と励ましていただいて、次に気持ちをつなげることができました。ロケバスのドライバーの方、録音部、照明部、撮影部の方たち、アクション部のみなさん、スチール担当の方……本当に、いろいろな方々から力をいただきました。この1年間、たくさんの人とコミュニケーションをとらせていただきました。僕としては大切なことでしたが、みなさんはどう思っていたんでしょうね。ご迷惑だったかもしれないですね(笑)。

――いえいえ、それだけ山口さんの気持ちが多くのスタッフの方々に伝わって、自然なコミュニケーションになっていたのではないでしょうか。あとお尋ねしたかったのは、TTFC(東映特撮ファンクラブ)配信のスピンオフドラマ『仮面ライダースペクター×ブレイズ』で倫太郎が仮面ライダースペクター/深海マコト(演:山本涼介)、そして彼の妹・深海カノン(演:工藤美桜)と共演されたときのことです。スペクターとブレイズの「2号ライダー」共演が話題を集めましたね。

スペクターとの共演にあたり、『仮面ライダーゴースト』(2015年)をしっかり予習してから撮影に臨みました。山本くんはさすが先輩ライダーだけあって、変身ポーズが「手慣れたものだなあ」と感心していました。ブレイズにとって「青いライダー」の先輩ですし、勝手に親しみを持っています(笑)。工藤さんとお会いしたときは『仮面ライダーゴースト』テレビシリーズのころと比べて「大人になってる!」と驚きました。『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)で1年間頑張られていたのも知っていますし、立派に成長されたカノンを堂々と演じられていて凄いなと思いました。この作品での倫太郎は芽依さんとのコンビで、テレビよりも軽いノリがあったりして、演じていて面白かったですね。カノンとコピーカノンを見て「双子」だと思い込んで1人で感心しているとか、もう「ザ・天然」の男として演じさせてもらいました。

――映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』では、『仮面ライダーセイバー』と『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界がこんがらがって、双方のキャラクターがごちゃ混ぜになるそうですが、倫太郎はどういったポジションで活躍されるのでしょうか。

僕たち剣士がいるノーザンベースに介人たちが突然やってきて、やがて倫太郎は介人と共に『西遊記』の物語へと飛び、いろいろなヒーローたちと冒険をすることになります。介人は常にテンション高めで、あまり考えずにどこにでも行っちゃう一方で、倫太郎は周囲の状況を冷静に分析しながら、落ち着いた行動を取ります。いつもの仲間たちと異なるメンバーで行動しているためか、テレビとはひと味違う倫太郎をお見せできるのではないかと思います。

――駒木根葵汰さんからうかがいましたが、ノーザンベースにやって来た介人があまりにも大きな声を出したため、『仮面ライダーセイバー』キャストのみなさんがすごくびっくりしたそうですね。

そうでしたね(笑)。『機界戦隊ゼンカイジャー』は僕らもオンエアを観ていて、明るい雰囲気でやってるな~って思っていました。『仮面ライダーセイバー』では、問題が起こったら剣士がみんなで話し合い、分析し、作戦を立てる……みたいな流れが多いですから、『機界戦隊ゼンカイジャー』の大騒ぎのノリに慣れていなかったのかもしれません。飛羽真たちが『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界に行ったシーンもあって、あっちもこっちも初めは変な感じだったんですけれど、いい感じに混ざり合うことができたのは、試行錯誤しながら“違う世界”に飛び込んで、熱演してくれた駒木根くんのおかげですね。