吉沢亮主演の大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の第22回「篤太夫、パリへ」(7月11日放送)で、渋沢篤太夫(吉沢亮)たちの一行がようやくパリに到着。篤太夫たちは蒸気機関やエレベーターなど西洋の進んだ文明を目の当たりにして驚嘆し、“プリンス・トクガワ”こと徳川昭武(板垣李光人)とナポレオン三世の謁見式も開催される。コロナ禍でフランスロケが敢行できずVFXで同シーンを再現。その興味深い舞台裏を、演出の田中健二氏が語った。
昭武は、第9代水戸藩主・徳川斉昭(竹中直人)の十八男で、第15代将軍となった異母兄・慶喜(草なぎ剛)の名代として、14歳でパリ万国博覧会へ出向く。その旅に随行した渋沢(吉沢亮)と深い絆を結んだ昭武は、渡航先のパリで幕府の終焉を知ることに。
田中氏は、パリを舞台にした第22回~第24回の演出を担当。すでに予告映像で一部が公開されているが、見せ場となる第22回のナポレオン三世との謁見式のシーンは、合成とは思えないほどのクオリティーを誇る。そこに至るまでには、いろいろなハードルを乗り越えてきたようだ。
第22回について田中氏は「パリ万国博覧会が開催されたのは1867年で、さすがに映像としては残っていなくて、絵や写真でうかがい知るだけでしたが、あたかもパリ博覧会が行われているように再現されている点が見どころの1つかと。幕末の日本人がパリでどういう感慨に浸ったか、どういうビビッドな反応をしたかを観ていただきたい。また、パリと日本がパラレルで描かれるので、そこも楽しんでいただけたら」と力強くアピール。
実は、昨年の秋まではパリでのロケを敢行するつもりだったという。「昨年の10月くらいまで、パリへ行こうかと考えていましたが、だんだん無理かもしれないとなっていきました。確か10月末にフランスで1日あたり5万人の感染者が出て、その後ロックダウンに入り、絶対に行けない状態となったので、11月1日~2日に行かないと決めました」。
決めてからは前向きにやれることを検討。「ロケに行かないとできないことと、VFXを使えばこういうやり方があるといったことを、我々制作陣で考えました。栄一がパリに行ったら絶対にやることを大筋のアンダーラインにし、こういう芝居のシーンならVFXで作れるだろうと、脚本の大森美香さんにも承諾をいただいたうえで、いろいろと描き方を工夫していきました。大きな舞台設定のVFXはすでに年内には作っていました」と気持ちを切り替えて臨んだ。
そして、「現在ルーヴル博物館になっているルーヴル宮殿に隣接するチュイルリー宮殿でナポレオン三世と謁見するのですが、宮殿部分はすでに焼失していて、今はないんです。なのでそこは僕がストリートビューを使ってウェブ上でロケ地となる場所を探し、フランスのプロダクションに投げて、リアルにロケハンをしてもらいました」と裏側を説明。
さらに、同じ時期にフォンテーヌブロー宮殿で謁見している絵が残っていたそうで「それもウェブ上のロケハンをしてからフランスのチームに言って、広間などを撮ってきてもらいましたが、それを見てすごい!となって。そこを舞台にできたから、なかなか素敵なシーンになったと個人的には思ってます」と手応えを口にする。
また、同シーンで昭武が歩くときに、外国人キャストたちが多数登場する。そこも入念に計算し、現地スタッフとの連携プレイで作り上げたようで「相当細かくシミュレーションしました」と監督が解説してくれた。
「まずは絵コンテを精密に作って、それを使って現地チームにプレゼンをしました。撮影に関しては役者の芝居を想定しなければいけない。例えば昭武が宮殿内で歩いてくるシーンのカメラワークを考えた時、彼がどんなスピードで歩くのかを考えてトラックショットを撮らないといけない。そこは床にテープを1m感覚で貼って、1秒間歩くのに何秒かかるかを出して、それを撮ったビデオを送り、現地スタッフに昭武と同じスピードで歩いてもらって撮りました」