• 『新しいカギ』(フジテレビ系、毎週金曜20:00~) (C)フジテレビ

――今『新しいカギ』をやっている木月さんは、橋本さんがやられた日テレさんのコントバラエティ『笑う心臓』や、それを含めたお笑い番組群『真夜中のお笑いたち』の取り組みはどう見ていましたか?

木月:ああいう形で日テレさんが種類の違うお笑いを同時にやろうっていう試みは、素晴らしいなと思いましたね。

橋本:僕らの世代は作り物のコントへの憧れがあるんですよね。それこそ『笑う犬』(フジ)を見て育ってるわけで、うちもああいうコントのノウハウを持って上手くやりたいなと思ってたんです。今回やってみて、コントは美術も技術も明かり一つ取ってみても、本当に総合芸術なんだと思いました。ちょっとカメラがミスしたら笑えないし、ちょっと演技が違ったらダメだし。昔のフジテレビさんはよくドラマのパロディをやられてましたけど、パロディってそれができるだけの予算とノウハウが必要で、コントの歴史が浅い日テレで実現するのは大変だと思うんです。

木月:そうなんですか?

橋本:やっぱり本物より劣る演出でパロディをやるって、それだけで笑いとしてはキツいじゃないですか。だから、フジテレビ的なものへの憧れは、僕らの世代はみんなあるんじゃないかな、ドラマも含めて。それをまた今、木月さんが復活してるから、一応日本テレビも拳だけは見せたいということなんですけど(笑)

木月:でも、続けていかないとノウハウって継承されていかないじゃないですか。

橋本:そうなんですよ。これからもやっていけたらいいなと思ってるんですけどね。でも、それをレギュラーでやるなんて、木月さんはどうやったらそんなに時間あるんですか!?

木月:いやいやいや。でも、フジテレビは続けてきたことのノウハウが大きいですね。美術さん、技術さんを含め。だから今回『新しいカギ』を始めたのは、ギリギリのタイミングでしたね。

水野:木月さんがやってた『ピカルの定理』が最後ですもんね。

木月:そうです。そこから10年くらい飛んでるから、美術さん・技術さんも同様に、時間が飛んでるんですよ。

橋本:これから番組の評価軸が変わっていったときに、視聴率ですら指標じゃなくなる可能性だってあるじゃないですか。そのときに、“伝承すべきテレビ的な技術とは何か”っていうメタの視点は、絶対いると思うんですよね。

木月:そうですよね。

橋本:それが途絶えたときに、テレビ的なコントを作れる人が日本で誰もいなくなるわけじゃないですか。伝統技術において職人がいなくなると絶えてしまうのと一緒で、技術さえあれば、視聴率じゃない評価基準として、巨大な配信プラットフォームでその技術を使って番組を作ることができるかもしれないし、アジアに輸出して新しいコメディショーができるかもしれないし。だから、そこが財産なんだということはちゃんと判断したほうがいいですよね。

木月:だから今回で言うと、フジテレビはちゃんと判断したということなんですよね。でも、過去何年かそれが途絶えていたので、なかなか危なかったですね。

橋本:テレビの中で培ったノウハウで必ず伝承していくべきものは何かっていうことをもっとシンプルに考えると、もう少し今やるべきことの答えというのがあるかもしれないな、という気もしますね。

木月:ドッキリの技術もそうですよね。

橋本:そうですよね。フジテレビさんはレギュラーで(『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』)やってますし。

■『笑ってコラえて!』で育まれるロケ・打ち合わせ技術

木月:技術の継承で言うと、日テレさんのあのロケの仕上がりの面白さって、うちじゃなかなかできないんですよね。

橋本:やっぱり日本テレビで脈々と受け継がれるロケ技術は、『笑ってコラえて!』を若いときにやってるっていうのが結構大きいと思います。

木月:へぇ~

水野:あっ、そうなんですね!

橋本:僕の頃は、入社4年目くらいになると、みんな『笑ってコラえて!』に行って3年くらいやるんですよ。そうすると、インタビューの仕方とか、人と面白く話す技術っていうのをちゃんと習得するんです。田舎のおじいちゃんとかおばあちゃんに「何やってるんですか~?」って声かけて、30分面白い話をして帰ってくるって、ディレクターの基礎として大きいんじゃないかなと。

木月:大きいですね、きっと。

橋本:それができれば、芸能人の方だったらなおさら話しやすいだろうし。

木月:そうなんですね。だから、日テレ系でやられてるフリーのディレクターさんは、演者さんの打ち合わせでトークネタを引っ張ってくるのがうまいんですか。

橋本:それはあると思います。トークの目線をいい加減にずらして、丁度いいところに持ってくるんですよね。トークって「それ今さら聞いても…」っていうのを引き出してもセンスないじゃないですか。でも、全然興味ない話は聞きたくないから、そこをちょっとだけずらす技術というのがすごい大事な気がしますね。

木月:コツみたいなのがあるんですね。

橋本:やっぱり芸能人であろうが一般の方であろうが、その人にちゃんと興味を持っているかって重要なんですよ。この間『有吉ゼミ』に出てもらったスギちゃんの奥さんが、楽天ポイントをすごい貯めてて、獲得ポイントが全体の上位1%だったんですよ。そこからディレクターが節約ぶりを追っていたら、PayPayで買うと花王の商品が割引になるからドラッグストアで買おうとするんですけど、「町田で+20%オフだ!」って言ってスギちゃん連れて車で向かうんですよ(笑)。それ、めちゃくちゃ面白いじゃないですか。それをちゃんと聞き出せるかというのが大事で、スギちゃんと打ち合わせして「奥さんどういう方ですか?」「何か変わったとこあります?」っていう質問だと出てこないと思うんですけど、「奥さん自慢できることあります?」って聞くと「そう言えば楽天ポイント結構持ってますね」って返ってくる。「どれくらい持ってるんですか?」→「60万ポイントくらいですね。上位1%に入ってるみたいです」→「じゃあとりあえず家にお邪魔していいですか?」って至るのが取材力ですよね。それは、フジテレビにおけるコントのように、日本テレビが培ってきたバラエティの文化みたいなものがあるんだなと、今話を聞いていて思いました。

  • 『有吉ゼミ』(日本テレビ系、毎週月曜19:00~) (C)NTV

水野:こうやって聞くと、「だから日テレのロケって面白いんだ!」って納得しますね。いやぁ、すごい話ですね。街録(街頭インタビュー)で言うと、大阪って撮れ高良いじゃないですか。僕もそうだったんですけど、大阪のディレクターはみんな街録が得意だと思って東京に来るんです。でも、なかなか思った通りにならないんですよ(笑)