目指すのは国内ヒットだけじゃない……読売テレビが海外ヒットも見据えたバラエティ番組開発に力を入れ始めた。

きょう10日にスタートする『騙し合いバトルロワイヤル THE 完全犯罪』(毎週土曜深夜放送、初回25:08~ ※関西ローカル、全8回)は、まさに世界にも売り出す注目の番組である。人狼ゲーム×クイズを組み合わせた日本発のゲームショーは、いかにして作られたのか――。

  • 『騙し合いバトルロワイヤル THE 完全犯罪』MCのアンタッチャブル山崎弘也(左)と柴田英嗣 (C)ytv

    『騙し合いバトルロワイヤル THE 完全犯罪』MCのアンタッチャブル山崎弘也(左)と柴田英嗣 (C)ytv

■視聴者が“5人目のプレイヤー”に

たとえ低予算のローカル放送のバラエティ番組でも、世界で当たれば年間数億を稼ぐものに化ける。『THE 完全犯罪』はそれを狙って開発された。

「目指すは海外リメイクです。新たな別軸のゴールを作って、これまで読売テレビが培ってきた制作力を投入しています」

そう話すのは、番組企画した古河雅彦プロデューサー。これまで全国放送の『情報ライブ ミヤネ屋』『秘密のケンミンSHOW』からローカル放送の『そこまで言って委員会NP』『大阪ほんわかテレビ』などのレギュラー番組を担当してきたテレビマンだ。現在、コンテンツビジネスを手掛けるビジネスプロデュース局に所属し、番組開発から海外セールスまでこなす。

どんな番組であれば、世界で勝負できるのか。そんな視点でアジアや欧米のバイヤーにヒアリングを行い、徹底リサーチした結果、需要のある「人狼ゲーム」と「クイズ」を掛け合わせた新感覚のスタジオゲームショー『THE 完全犯罪』が開発された。毎話、プレイヤーとしてスタジオに招かれた4人のゲストが、その中にたった1人紛れ込んだ「ウソつき=ブラック」役のプレイヤーを制限時間の中で推理しながら、アンタッチャブルのMCによりクイズと共に進行されていく。

10日の初回放送では王林(りんご娘)、カズレーザー(メイプル超合金)、児嶋一哉(アンジャッシュ)、丸山桂里奈がプレイヤーとして出演する。他のプレイヤーにバレないように、クイズの全問不正解を仕掛ける嘘つき上手のプレイヤーはいったい誰なのか。「視聴者が5人目のプレイヤーとして参加できることも狙って作っています」(古河P、以下同)と話すように、クイズも心理戦も楽しめる番組なのである。

「最後にブラックが明かされるまで、プレイヤーの心の内の揺れ動きを見ながら、視聴者の皆さんも推理を楽しんでいただけたらと思います。ルールがちょっと複雑ですが、見始めたらきっと番組ファンになってもらえる。そんな思いで企画開発しました」

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■MCにアンタッチャブルを起用した理由

海外ヒットも国内で話題になることも想定した欲張りな番組だが、緻密な計算で作られている舞台裏が分かると、さらに楽しめるかもしれない。アンタッチャブルの2人をMCに起用したのも訳がある。

1つ目の理由は「柴田英嗣さんが復帰されたことで、もともと実力も知名度もある上に、フレッシュ感も加わっています」。2つ目の理由は、海外のゲームショーでは珍しいパターンになる日本特有の「ボケとツッコミ」の役割があるMCであえて勝負しようと判断したからだ。

「ツッコミの柴田さんは進行役に徹し、ボケのザキヤマ(山崎弘也)さんは誰がブラックか知らない立場でプレイヤーたちの心理をかき乱し、視聴者目線の役割を全うしてもらいます。このMCの面白さが日本発信のバラエティ番組としてオリジナリティがあると思いました」

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また、海外のゲームショーは一般視聴者が参加することが多い。そんな事情を鑑み、キャスティングに頼りきらない企画重視の番組であることも感じ取れるだろう。さらにビジュアル演出も注目すべき点にある。収録中のスタジオに筆者が足を運ぶと、セットが360度に組まれ、円形劇場さながらのスタイルに圧倒された。4人のプレイヤーの背後にはそれぞれ赤いじゅうたんが敷かれた長い階段が伸び、その階段の先の踊り場が罰ゲーム執行台となる。あるプレイヤーが話していた「落ちる穴に自ら階段を上っていく。まるでそれは処刑台」という表現がまさにピッタリの雰囲気だ。

クレーンカメラを使ってLEDで表示されるプレイヤーのクイズ解答を真上から映し出し、海外では定番の光沢感ある「シャイニースタジオ」を意識した作りである。古河Pの「通常のバラエティ番組よりも、予算配分の中で美術セットにかける割合が多いことも、特徴のひとつにあります」という説明に納得がいく。シンプルなセットで番組を進めることも可能な内容だが、やはり「海外に売っていく」ことを大前提に、セットやCGなどビジュアル的に工夫し、海外仕様になっているのだ。