そもそもなぜ、読売テレビは海外展開を見据えたバラエティ番組を開発したのか。アニメ『名探偵コナン』をはじめ、永作博美&緒形直人主演ドラマ『Pure Soul~君が僕を忘れても~』の韓国版リメイクなどで実績を積んできたが、海外ビジネスの新たな収益を作るべく、2018年からバラエティ番組の海外リメイク向け開発を本格化させた経緯がある。
そんな中、『料理の鉄人』を手掛けた田中経一氏が演出し、古河Pも開発に携わった『ザ・ローリングキッチン』(18年9月放送)は、今年4月からモンゴルの民放テレビ局・NTVで毎週日曜夕方に全12話放送された。狙い通りに海外デビューを果たし、勢いに乗って、今回の『THE 完全犯罪』がビジネスプロデュース局主導で予算化されたというわけである。
■カンヌでP自ら売り込むことを計画
しかも『THE 完全犯罪』は8話にわたる複数話。バラエティ番組においては、海外開発企画は単発放送のケースが多く、在京キー局と比べても珍しい複数話の展開が実現した。気概の表れとも言えるが、地に足のついた古河Pの発言が続いた。
「大阪のテレビ局の制作体制は東京のそれと比べると、セクショナリズムがなく、人数も少ない分、テレビマン1人の裁量権が大きいと思います。『THE 完全犯罪』は、そうした経験値を重ねて作られた番組だと思います。企画を立て、開発・制作し、もちろん海外にも自ら売り込んでいきます」
今年10月にフランス・カンヌで開催される世界最大級のコンテンツ国際見本市・MIPCOMで、世界に向けて本格的にセールス活動を開始する予定だ。古河Pもセールス部隊の一員として、世界各国のテレビ局や配信事業者を相手に商談に臨む。
「海外市場ではオリジナリティがない番組は売れません。一方で、オリジナリティを出せば出すほど、普遍性が薄れてしまいがち。『THE 完全犯罪』は人狼ゲームとクイズ、ボケとツッコミの要素があるため、普遍性と新しさを兼ね備えたゲームショーです。世界で戦える自信があります」と、期待十分の言葉が聞けた。
●古河雅彦
1983年生まれ、福岡県出身。一橋大学卒業後、05年に読売テレビ放送入社。『ゲツキン!』『情報ライブ ミヤネ屋』『秘密のケンミンSHOW』『そこまで言って委員会NP』『あさパラ!』『大阪ほんわかテレビ』などを担当し、現在はビジネスプロデュース局で海外への企画フォーマット販売用の番組を企画・制作。『ザ・ローリングキッチン』はオランダ・Endemol Shine Groupと世界配給を契約し、その後モンゴルでレギュラー放送された。