マーケティングにおいて、ウォンツやニーズは必須用語。意味を正確に把握していなければ、話題から取り残されてしまいます。
本記事ではウォンツの意味や、セットでよく用いられるニーズとの違いについて、具体例を交えて詳しく解説します。ウォンツからニーズを探る方法や、関連するマーケティング用語なども紹介します。
ウォンツのマーケティング用語としての意味とは
まずマーケティングにおけるウォンツとは、どういう意味なのでしょう。ニーズと併せて、その意味を見ていきましょう。
ウォンツとは「手段」の意味
ウォンツは英語の「want(~したい)」が元となっており、「wants」は「欲しいもの、買いたいもの」という意味です。人がある欲求を満たすために何かを欲しいと考えることであり、例えば「(喉の渇きを潤すために)水が欲しい」「(快適に通勤するために)自転車が欲しい」「(痩せるための)ウォーキングマシーンが欲しい」といった思いを指します。
ニーズとは「目的」の意味
ウォンツとセットでよく使われるニーズとは、英語の「need(~が必要だ)」が元となっており、「needs」は「必要、要求、需要」という意味です。物を買いたいという衝動に人を駆り立てるほどの必要性のことで、例えば「リフレッシュしたい」「おしゃれになりたい」「便利な生活がしたい」など、その人が理想と考えている状態のことを指します。 下
具体例から見るウォンツとニーズの違い
ウォンツとニーズ、同じように見えるかもしれませんが意味は異なります。ウォンツはニーズを実現するための「手段」であり、具体的なものを指します。
例えば犬小屋を作るために電動ドリルが必要となり、ホームセンターを訪れたとします。その時のウォンツは「電動ドリルが欲しい」であり、その元となるニーズは「犬を快適な環境で育てたい」となります。
ウォンツ | 電動ドリル(工具)が欲しい |
---|---|
ニーズ | 犬を快適な環境で育てたい |
また、「水が欲しい」というウォンツに対するニーズは、「喉を潤したい」などが考えられます。
ウォンツ | 水が欲しい |
---|---|
ニーズ | 空気が乾いているので喉を潤したい |
ただし、1つのウォンツに対してニーズも1つだとは限りません。ウォンツの背景に、さまざまなニーズが隠れていることは多々あります。多様なニーズを解決するためのウォンツを生み出すことが、企業の役割ともいえるでしょう。
ウォンツからニーズを探る方法
ウォンツを生み出すには、まずニーズをつかまなければなりません。マーケティングでは、見込み客のウォンツからニーズを分析します。見込み客とは「将来的に商品やサービスを購入または利用してくれそうな人々」のこと。資料請求をしたり、ホームページを閲覧したりする人々も、見込み客となります。
ニーズさえつかめれば、新しい製品やサービスへつなげていくことができます。では実際にどのようにニーズを探るのでしょうか。
ポイント1) ウォンツからニーズを探る
情報収集には、アンケートやインタビュー、SNSなどを活用します。
「水が欲しい」というウォンツに対し、「なぜそう思うのか」「理想の状態とは何か」などの質問を重ねます。例えば「なぜ水が必要なのか」という問いに対して「喉が渇いたから」という返答があったとします。そこで「なぜ喉が渇くのか」と質問を重ねれば、「ダイエットのためジョギングをしてきたから」という返答があるかもしれません。
つまりここでは「水が欲しい」というウォンツに対して、「ダイエットしてきれいな体を手に入れたい」というニーズを探ることができるのです。
ポイント2) 多様なニーズをつかむ
前述したように、1つのウォンツに対してのニーズは1つとは限りません。「水が欲しい」の理由には、「水が安くなっていたから」「水を買うと当たる景品が欲しいから」などがあるかもしれません。こうしたニーズをもれなくキャッチすることが大切です。
ポイント3) 新たな製品やサービスにつなげる
ニーズを分析することは、新たな製品やサービスの提供に生かすことができます。例えば、水を買おうとする客のニーズがダイエットだと分かれば、ジョギング中も携帯しやすい形状のペットボトルの開発や、カロリーオフのスポーツ飲料の開発につなげられます。これは新たなウォンツを生み出し、企業としての価値を高めることになります。
押さえておきたい、ウォンツに関連するマーケティング用語
次に、ウォンツに関連するマーケティング用語と、その使い方についても紹介します。
シーズ
シーズ(seeds)とは、ニーズに対して、企業が新しく提供したり開発したりする特別な技術や材料のことです。技術やノウハウ、アイデア、人材、設備など、さまざまな要素のことを言います。
企業がニーズに沿って開発するのではなく、独自のノウハウを生かすために商品を開発することを「シーズ志向」と呼びます。これは消費者自身がまだ気付いていないウォンツを呼び起こし、新たな市場を開拓することにつながります。
マーケティングでは、ニーズとシーズの両面から展開することが求められます。
インサイト
インサイト(insight)は「洞察」「直観」などと訳される英単語です。消費者を「欲しい」欲求から「買う」という行動へ変化させるためのポイントを指し、消費者の心理を理解し、共感することによってもたらされます。
商品開発や販売促進にインサイトを取り入れることで、客の心を動かし購買行動につなげることができます。
例えば英会話スクールを検討している客に対しては、その客の「将来不安からビジネススキルを身に付けたい」というインサイトに沿った営業活動を行うことができます。
デマンド
デマンド(demand)とは直訳すると「需要」「要求」を指し、漠然としたものではなく購買力を伴う程度の欲求を指します。近年では消費者のデマンドにいち早く対応できる「オンデマンドサービス」なども普及しています。
デマンドを創出するという意味の「デマンドジェネレーション」は、マーケティングによって見込み客を購買につなげるための業務を指します。
具体的には「リードジェネレーション(見込み客の獲得)」、「リードナーチャリング(見込み客の育成)」、「リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)」といった手順があります。
ベネフィット
ベネフィット(benefit:利益)は何かを手に入れた場合に、消費者が得られるメリットです。商品を利用すればどのような状況が手に入るのか、それがどれほど魅力的なものなのかを広告や宣伝の際に盛り込むことが大切です。
例えばミニバンの購入を検討している客に対し、ミニバンがあると荷物がたくさん積める、車中泊できるほどの空間が確保できる、などのベネフィットを多く伝えることで、購入につなげるのです。
ペイン
ペイン(pain:痛み)とは、見込み客が抱えている悩みを指し、「ペインポイント」とも呼びます。お金を払ってでも解決したいと考えていることは何か、その解決策を探ることがマーケティングの基本です。
例えば、水を買い置きしたいのに車がなくて少しずつしか買えないというペインポイントの解決策は、「200円の配送サービス」となります。
ウォンツはニーズを満たすための手段
ウォンツは、ニーズを満たすための具体的な手段を指します。つまりウォンツを深く掘り下げれば、ニーズが浮かび上がるということです。客のニーズからいかに新たな商品開発やサービス提供を生み出せるかが、マーケティングの基本と言えるでしょう。