この作り方を象徴する『ごっつ』の代表的なコントが、胴体がトカゲのおっさん(松本)と少年(浜田)とのふれあいを描いた「トカゲのおっさん」だ。96年の当時、世帯視聴率30%超を連発していた大河ドラマ『秀吉』に加え、アトランタ五輪のマラソン中継が真裏に編成されるという逆境の中、「OAまるごと1本コントにしたい」という松本の発案から、初回は40分弱という異例の長尺で展開した伝説的な作品として知られている。

「あれはまさに、グルグル回すと延々と続けられる構造を作るお手伝いを僕らがして、現場に立った演者さんたちがその場で“脈略”を作って、続けられるだけ続けていくというコントでした。それとあのときは、浜田さんの動きに驚いたのを覚えています。松本さんのペースで自由奔放に進めると周りのみんなが少し混乱するので、浜田さんが仕切って交通整理をする。それを見ながら、『僕もそういう役割をどこかでしなきゃいけないんだ』と学んだのもあって、今回も周りとの調整みたいなことをやれたような気がします」

『キングオブコントの会』で松本が出演するコント「管理人」「おめでとう」には、バイきんぐ・小峠英二、東京03・飯塚悟志、ロッチ・コカドケンタロウ、ハナコ・秋山寛貴らが共演しているが、台本の読み合わせまでして臨んだ彼らは、現場に来て松本の制作手法を目の当たりにし、「面食らってましたね(笑)」とのこと。そこで、「松本さんのアドリブでどんどんコントが変わっていくのを、共演者の皆さんに飲み込んでもらうために“通訳”するというのも、僕の仕事になるんです」と役割を果たしていた。

  • 『キングオブコントの会』のコント「おめでとう」より (C)TBS

■古巣・フジの挑戦にエール、自身も…

昨年からの個人視聴率調査の拡充により、テレビ局が視聴者の重点ターゲットを設定したことで、各局でお笑い番組が急増。『キングオブコントの会』以外にも、小松氏の古巣・フジテレビでは、お家芸のコントバラエティ『新しいカギ』が、4月からレギュラー番組でスタートした。

小松氏の手がける『チコちゃんに叱られる!』(NHK)の裏番組に当たるが、「視聴者層が棲み分けられてますから(笑)」とした上で、「ナイストライだと思うので、応援したい気持ちはありますね。コント番組ってしゃべりながら見られないから、積極視聴には不利なんですけど、こういう取り組みはあってしかるべきだと思うし、何とかここでテレビの積極視聴に粘りを見せてほしいです」とエールを送る。

そして自身も今回、『笑う犬』以来だというテレビコントを久々に撮って、「やっぱり楽しいですね」と充実の様子。「実は今、ある方とコントを作る準備をしています」と、新たな展開を予告してくれた。

  • 小松純也氏

●小松純也
1967年生まれ、兵庫県出身。京都大学卒業後、90年フジテレビジョンに入社し、『夢で逢えたら』『笑っていいとも!』『ダウンタウンのごっつええ感じ』『SMAP×SMAP』『笑う犬シリーズ』『平成日本の夜ふけ』『FNS27時間テレビ「さんま・中居の今夜も眠れない」』などを担当。編成部、バラエティ制作センター部長などを歴任した後、15年から共同テレビジョンに出向。19年に出向元のフジテレビを退社し、現在はフリーとして『チコちゃんに叱られる!』『人生最高レストラン』『BS5局共同制作特番』『DRAGON CHEF』などのテレビ番組、『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』『HITOSHI MATSUMOTO presents FREEZE』『JIMMY~アホみたいな本当の話~』などの配信番組のほか、吉本興業の教育コンテンツ『ラフ&ピース マザー』も手がける。