お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志が、きょう12日に放送されるTBS系バラエティ特番『キングオブコントの会』(19:00~21:54)で、新作テレビコント2作を披露する。民放での本格的なテレビコントは『ダウンタウンのものごっつええ感じスペシャル』(フジテレビ)以来20年ぶりということで話題だが、今回、松本が出演するコントの演出として白羽の矢が立ったのが、その『ごっつ』で松本とタッグを組んでいた小松純也氏だ。

フジテレビから独立し、現在はフリーとして活躍する小松氏は、Amazonプライム・ビデオのバラエティシリーズ『ドキュメンタル』『FREEZE』でも総合演出を務めるなど松本の信頼が厚い。松本流の変わらぬコント作りに手応えを感じた様子の同氏に、その制作スタイルの秘密を聞いた――。

  • 松本人志=『キングオブコントの会』のコント「管理人」より (C)TBS

    松本人志(手前)と小峠英二=『キングオブコントの会』のコント「管理人」より (C)TBS

■「テレビの世界の最初の親みたいな存在」

90年にフジテレビに入社し、翌年スタートした『ダウンタウンのごっつええ感じ』の立ち上げにADとして参加した小松氏にとって、この番組は「原点ですね」。京都大学在学中、「劇団そとばこまち」に在籍しながら放送作家として活動した経験があり、「テレビのことはある程度分かっているつもりでした」というが、「演者さんと密接に作り上げていくというのは初めてだったので、松本さんには笑いに関していろんなことを教わって、浜田(雅功)さんにはスタッフとしての立ち回りやチームのまとめ方を教わりました。テレビの世界で育てていただいた最初の親みたいな存在です」と話す。

初期の頃は、「ディレクターの星野(淳一郎)さんが僕を育てようとしてくれたのかもしれないですけど、作家さんが書いたコントの設定を松本さんのところに相談しに行くという役割を、ADの僕がやっていたんです。最初は箸にも棒にもかからない感じで、いろいろ怒られることもありました」と振り返るが、そうしたやり取りを繰り返していくうちに、「松本さんが、だんだん僕が言うことにも笑っていただくようになったりしてくれたのを覚えています」と信頼を得ていくように。

そんな背景から、今回コントでタッグを組むのに20年というブランクがあっても、「現場での松本さんの感覚をあまりずれなく具現化できたかなと感じることができたのは、そういうプロセスがあったからかなと思いますね」と手応えを語った。

  • 『キングオブコントの会』のコント「管理人」より (C)TBS

■緻密な台本を「1回全部なかったことにする」

松本とのコントの作り方は、『ごっつ』時代と変わらなかったという。それは、打ち合わせを重ねて放送作家や小松氏が緻密な台本を作っていくが、いざ収録に入ると、「現場に立ったときに、1回それを全部なかったことにして、そこから松本さんがアドリブでどんどん流れを作っていく」という手法だ。

「だから、台本には書けないコントになっていくのですが、決してめちゃくちゃな内容ではなくて、その場で目の前に起きる“脈略”というのを綿密に組んで、それをまた回収していくということをやっていくんです。これは本当に見事だと思います」

ここで大事なのが、準備した台本で設計していたコントの“構造”だ。「現場の瞬発力で作る部分と、最初にデザインした構成ビジョンが組み合わさって、『一体このアイデアはどうやって作られたんだ?』というコントになる。だから、1回全部なかったことにすると分かっていても、台本では構造をできるだけ緻密に作っておくということになるんです」

普通のディレクターであれば、用意した台本から演者が大きく逸脱し、現場のアドリブでコントが作られていくという作業は、“仕事を奪われる”感覚にもなるところだが、小松氏は「現場で出たアドリブを、自分の考えていたビジョンにどうジョイントして映像で捉えていけばいいのかというのを考えながら見ているんです。だから、頭の中はやることがいっぱいあって、大忙しなんですよ」という。