ビジネスシーンでも頻繁に使われる敬語表現である「申し上げます」。
本記事では「申し上げます」の詳しい意味や、「いたします(致します)」「申します」との違いを紹介。使用シーンごとの例文や注意点、言い換えや英語表現もまとめました。
「申し上げます」の意味やビジネスでの注意点とは
「申し上げます」は「言う」の謙譲語「申し上げる」に丁寧語「ます」が付いた「言わせていただきます」という意味の言葉です。「お礼申し上げます」なら「お礼を言わせていただきます」という意味になります。
敬意を払うべき相手に「うやうやしく言う」というニュアンスも含まれているので、目上の人に対しても自然に使える言葉です。下記のように使用します。
・僭越ながら私から申し上げます。
「申し上げる」には「してさしあげる」という意味もある
「お(ご)」の付いた自分の行為を表す体言に「申し上げます」付けて、その行為の対象を敬う場合、「〇〇してさしあげる」という意味になります。「お祈り申し上げます」なら「お祈りしてさしあげる」という意味です。
・お祝い申し上げます(お祝いしてさしあげる)
・ご報告申し上げます(ご報告してさしあげる)
自分以外が「言う」場合は「おっしゃる」を使う
自分以外の人が「言う」ことに敬意を表すときには、「言う」の尊敬語「おっしゃる」や「言われる」を使います。「申された」は誤用です。
・部長のおっしゃることは正しいと思います。
・私でよろしければ、いつでもおっしゃってください。
「申し上げます」と「いたします(致します)」の違い
「いたします」は「する」の謙譲語に丁寧語「ます」が付いた言葉なので、「申し上げます」と敬意に差はありません。しかし、フォーマルなシーンでは「申し上げます」を用いる方がおすすめです。
・新商品の件、よろしくお願いいたします。
・新商品の件、よろしくお願い申し上げます。
上記はどちらも敬意を表した丁寧な表現ですが、「いたします」は日常会話でもよく使われるので、「お願いいたします」よりも「お願い申し上げます」の方が、格式ばった印象を受けるのではないでしょうか。
一つのメール本文中で「申し上げます」と「いたします」が混在していても問題ありません。
お気遣い感謝申し上げます。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。
「〇〇感謝申し上げます。〇〇お願い申し上げます」のように同じ語尾が続くとくどい印象になるので、「申し上げます」と「いたします」を併用して読みやすい文章にするのも一つの方法です。
なお「いたします」を使用する場合、補助動詞はひらがなで書くのが一般的なので、「よろしくお願い致します」ではなく、「よろしくお願いいたします」とするのが自然です。
感謝やお詫びの気持ちを伝えるときは「申し上げる」がおすすめ
特に、ビジネスシーンで感謝の言葉を述べるときや謝罪をするときは「いたします」ではなく「申し上げます」を用いると、よりフォーマルな印象になります。
・ご協力いただき、心から感謝申し上げます。
・先日の件について、深くお詫び申し上げます。
同じく敬語の「申します」は、目上の人以外にも使える丁寧語
「申し上げます」と似た言葉に「申します」があります。
「申し上げます」「申し上げる」は敬意を払うべき相手にしか使えない謙譲語ですが、「申します」「申す」は相手やシーンを問わず使える丁寧語です。
下記のように使用します。
・はじめまして。株式会社○○の△△と申します。
・先ほど申しました通り問題ございませんので、よろしくお願いいたします。
「申します」と「申し上げます」は語感が似ているので、誤用しないように気を付けましょう。
「申し上げます」の使い方と例文
「申し上げます」の使い方をシーン別に紹介します。謝罪や感謝、連絡など、さまざまなシーンにおける活用方法を覚えておきましょう。
お願いをするときやメールの締めでの例文(「よろしくお願い申し上げます」など)
「申し上げます」は、「よろしく」「お願い」と組み合わせて、依頼時によく使われます。
・ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
・お手数ですがご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
・大変申し訳ございませんが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
また、メールなどの締めの言葉として、定型文的に使われることも多いです。
・引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。
・今後ともよろしくお願い申し上げます。
お礼や感謝をするときの例文
お礼の気持ちを丁寧に伝えたいときには「お礼申し上げます」や「感謝申し上げます」を使います。
・先日は皆様からご支援いただいたことに、厚くお礼申し上げます。
・新商品の開発にご協力いただき、誠にありがとうございました。温かいご配慮、心より感謝申し上げます。
・在職中は格別のご愛顧を賜り、心より感謝申し上げます。
上記例文のように、「厚く~」や「心より~」を付けると、より丁寧な表現になります。
謝罪するときの例文
謝罪の気持ちを丁寧に伝えたいときには「お詫び申し上げます」や「陳謝申し上げます」を使います。
・ご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
・当社の落ち度により多大なるご迷惑をおかけしたことを、心よりお詫び申し上げます。
・先日の件につきまして、皆様には陳謝申し上げます。
「お詫び申し上げます」の前に「深く」や「心より」を付けると、より誠意が伝わるでしょう。
連絡するときの例文
連絡をするときには「ご連絡申し上げます」や「お知らせ申し上げます」を使います。
・日程が決まりましたことをお知らせ申し上げます。
・その件については確認をしたうえで、折り返しご連絡申し上げます。
お見舞いするときの例文
お見舞いでは「お見舞い申し上げます」や「ご回復をお祈り申し上げます」を使います。
・略儀ながら書中にてご全快を祈念し、心よりお見舞い申し上げます。
・ご入院なさったと伺い大変驚きました。一日でも早いご回復を心よりお祈り申し上げます。
お見舞いの場合も「心より」を付けると、より気持ちが伝わるでしょう。
葬儀での例文
葬儀では「お悔やみ申し上げます」が一般的なフレーズとして使用されます。
・突然の訃報に接し、誠に驚きました。心からお悔やみ申し上げます。
・ご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。
「お悔やみ申し上げます」の前には「心から」や「謹んで」を付けると、より丁寧です。
「申し上げます」が連続するときの言い換え方
下記のように、ビジネスメールで「申し上げます」が連続するとくどい印象を与え、全体的に読みにくくなってしまいます。
「皆様にはますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
先日はお忙しいところ貴重なお時間を割いていただき感謝申し上げます。
さて…
今度ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます」
このような文章になってしまう場合は、「深く感謝しております」や「お気遣い恐縮しております」などの表現に言い換えるといいでしょう。
挨拶メールの冒頭や締めには「申し上げます」を含む言葉が定型文として使われることも多いため、「申し上げます」が連続してしまう場合は本文中の表現を工夫する方が自然です。
「申し上げます」の英語表現
英語には謙譲語という概念がないので、「申し上げます」は「consideration(よく考えること)」などの表現で代用します。
・I sincerely appreciate your time and consideration.
(お手数をかけますが、よろしくお願い申し上げます)
また、謝罪の気持ちを表すときには「sincere apologies(心からの謝罪)」が使えます。
・Please accept my sincerest apologies for this mistake.
(今回のミスに関して、心からお詫び申し上げます)
葬儀では「I’m sorry for your loss.」を使って表現できます。
・I’m sorry for your loss.
(お悔やみ申し上げます)
「申し上げます」は自分がへりくだり相手への敬意を表す謙譲語
「申し上げます」は「言わせていただきます」という意味の言葉です。敬意を払うべき相手に使えるので、ビジネスシーンでも使う機会は多いでしょう。
使うシーンによっては「誠に〇〇申し上げます」や「心から〇〇申し上げます」とした方がより丁寧な表現になるので、例文をしっかり確認して失礼のないように使いこなすことが大切です。
似たような意味で使われる「いたします」との違いも押さえておきましょう。英語表現もマスターしておくと活用の幅がさらに広がります。