具体的なアドバイス
それでは具体的なアドバイスをみていきましょう。
家族のライフプランを作る
中学1年のお嬢さんは、「高校進学後に海外留学」という希望を今からしっかり持たれているとのこと。きっと、お子様が小さなときから親子で将来のことをいろいろと話してこられたのだろうなと、微笑ましく思いました。希望を叶えてあげられるよう、親子で数年先、数十年先のことを考えて、必要なお金の計画をしていきましょう。
さて、今回ご相談いただいた「これから必要になる教育資金」と「Eさんご夫婦の老後資金がどのくらい必要か」ということですが、老後資金は後ほどお話しするとして、いただいた情報だけでこれから必要になる教育資金がいくらかを言うのは簡単ではありません。
進路によっても必要額が大きく変わりますし、海外留学の資金となればなおさらです。たとえば、学位を取得する大学・大学院への留学なのか、ご両親のようにデザイナーを目指してデザインの勉強をしに行きたいのか、語学学校への語学留学かなど、海外留学といってもさまざまです。それによって授業料が違ってきますし、行き先や滞在スタイル(学生寮、賃貸、ホームステイなど)によってかかる交通費や滞在費用も変わります。
参考までに文部科学省の「トビタテ! 留学JAPAN」では、大学の交換留学の場合で滞在費および渡航費を合わせた金額の目安は年間90~260万円としています。これに加えて生活費や保険料、ビザ取得費などがかかります。その前の高校進学は私立か公立か、留学を終えた帰国後には日本の大学に入るかなどによっても必要な教育資金は変わります。
両親の収入要件はありますが、2020年4月からは私立高校授業料実質無償化がスタートしています。共働きで扶養控除対象者1人の世帯の場合は、目安となる世帯年収は660万円までです。Eさん世帯の年収が当てはまれば、公立でも私立でも高校の授業料は実質無料になりますが、学校外活動費や入学金、施設使用料などは別途負担が必要です。ほかにも、たとえば留学に備えて語学教室に通う費用がかかるかもしれません。
そこで、まず実行していただきたいのが家族のライフプラン作りです。高校入学、海外留学、大学進学、お嬢さんの結婚、夫婦のリタイアなど、これからの家族のイベントを書き出してみてください。お嬢さんが留学中に、旅行がてらご夫婦で滞在先に行かれるかもしれませんし、家族みんなで将来を楽しくイメージしながらいろいろと書き加えていくとよいでしょう。
これらのすべての費用を足していくと莫大な金額になり、貯蓄が追いつかないと感じるかもしれません。しかしこうすることで、留学資金についても「いくら必要か」ではなく、「いくらまでなら出せる」と予算を決められるようになるかもしれません。予算のなかで留学という希望を叶えられるよう、留学スタイルや留学先、滞在スタイルなどを親子で検討していけるのではないでしょうか。
海外留学に向けて外貨積み立てを始める
海外留学費用の予算は見積もっていても、実は為替の動向によっても費用額は変動します。参考として先に年間90~260万円という金額を紹介しましたが、これは現地でかかる金額(ドルやユーロなど)を今の為替で日本円に換算した金額です。頑張って260万円貯めたとしても、留学する際の為替が今より円安に動けば、より多くの金額を支払わなければならない可能性もあります。
すでに留学したい国が決まっているのであれば、授業料や滞在費用、生活費などの現地通貨で支払う費用は、その通貨での外貨預金をしていく方法もあります。貯めた外貨を現地でそのまま使うことで、円安・円高の影響を受けにくくなります。
Eさんは株式や投資信託などの投資商品も保有されているため、投資に関する知識は持たれていると思いますが、一般的に為替は株式よりも動向がつかみにくいと言われています。外貨預金をする場合には、一定金額を定期的に購入していく外貨積み立てがおすすめです。ドルコスト平均法といって、平均購入単価を平準化する効果を期待できます。
老後資金を具体的に試算してみよう
一時期話題となった「老後資金2,000万円問題」を覚えていらっしゃるでしょうか。これは、無職高齢夫婦というモデルケースでいくつかの条件のもと計算すると、家計収支は毎月約5万円の赤字。仮に老後期間が30年ならば、約2,000万円を準備しておかなければならないということです。
老後期間や老後の家計収支は世帯ごとに異なりますが、仮にモデルケースと同じく30年とすると、Eさんご夫婦の場合、2,000万円よりも多く必要になる可能性があります。
というのは、ご夫婦揃ってフリーランスですから、将来受給できる年金はおふたりとも老齢基礎年金です。仮に40年間払い続けて満額受給できる場合でも月額は65,075円(2021年度の額)で、夫婦合計で約13万円です。モデルケースでは公的年金月額が約19万円で計算されているため、Eさんご夫婦は約6万円少なくなります。
とはいえ、Eさんご夫婦には定年がなく、デザイナーとしてずっと働き続けられる強みもあります。モデルケースの支出額は月額約26万4,000円です。これより支出が少なければ、2,000万円より少なくてすむことも考えられます。そこで、ご夫婦がイメージする老後の収入や生活費、老後期間などを変えながら、次の計算式に当てはめ計算してみてください。
(月々の生活費-公的年金などの収入見込み額)×12×リタイア後の年数=基本生活費
基本生活費+医療費・介護費などへの備え=準備が必要な金額
計算するうえで検討していただきたいのが住居費です。現在は毎月13万円の家賃を支払われていますが、13万円はご夫婦の年金額とほぼ同額です。老後もこのまま家賃を払い続けるのか、家賃の低いところに引っ越すか、マイホームを購入するかなど検討すべきことが見えてくるはずです。購入するなら前述のライフプランに書き込みましょう。場合によっては他の予算を下げる必要もあるかもしれません。
検討された結果に従って、月々普通預金に入れている8万円を教育(留学)、老後、住宅あるはその他資金というように、目的別に分けて積み立てていきましょう。
老後資金のためには国民年金に上乗せする付加年金への加入やiDeCoへの加入もおすすめです。付加年金は月額400円の付加年金保険料を払えば、1年あたり「200円×付加保険料納付月数」の額が老齢基礎年金に上乗せして支給されます。
仮に今から20年間納めれば、1年当たり48,000円、ご夫婦で加入すれば96,000円の増額です。月当たり8,000円の増額は少なく感じるかもしれませんが、一生受給できますから費用対効果は大きいはずです。
今回の相談内容と皆さんの家計簿に似ている部分があるようでしたら、ぜひともFPの方のアドバイスを参考にしてみてくださいね。