始末書とは、一般的に遅刻や交通事故を起こしたときなどに会社に提出する書類のことです。会社に勤めている以上は、始末書を書く機会があるかもしれません。しかし、その役割などについてくわしくは知らないという方もいるでしょう。

本記事では、始末書の役割や作成方法などについて紹介します。場面ごとに使えるテンプレートも載せているので参考にしてみてください。

  • 始末書とは?

    始末書について解説します

始末書とは?

始末書とは、仕事上でミスやトラブルを起こしてしまった場合に書く書類です。当該の出来事の詳細を明記した上で、謝罪や反省をし、再発させないという誓いを書面にて提出します。

始末書を書く原因となる事態はさまざまありますが、例えば、金銭関係のミスで会社に不利益が生じた、就業規則などの社内ルールの違反が続いた、取引先の信用を失う行動をして会社のイメージダウンに繋がってしまった、などです。

始末書と反省文・顛末書の違い

よく反省文や顛末書(てんまつしょ)との違いを問われることがあるので、始末書と他文書の違いを説明します。

反省文は、始末書と比べると簡易的な軽い書類です。具体的には、自身の行動の反省、改善点と謝罪を述べることを目的とする報告書という分類になります。

また、顛末書は、事実関係だけを述べることが目的の書類です。基本的には反省や謝罪は記載しません。

始末書は事実と反省点を記載する

反省文と顛末書と比べると、始末書は事実関係を述べる上に反省や謝罪も明記する文書です。また、始末書を書くことになった場合、起こした反則行為に対して懲戒処分が伴うことがあります。

始末書の目的

会社が始末書を書かせるもっとも重要な目的は、社員のミスやトラブルについて、本人直筆の書面を確保するためです。

仮にその社員を解雇するしかない状況になったとき、本人が事実関係と反省や改善点を述べている文書があれば、裁判になってしまっても会社側は法律や規則に違反せず適切な指導を行ったとする証拠が残ります。すこし聞こえは悪いですが、会社のリスク管理のために必要な書類なのです。

封筒は白、用紙はB5かA4

始末書の用紙サイズは会社によって異なるので、作成前に上司か担当者に聞いておくようにしましょう。基本的にはB5かA4のケースが多いです。

封筒のサイズは用紙サイズに合わせるか、B5サイズの用紙ならA4サイズの封筒に入れても問題はありません。また、封筒は白無地の二重封筒にしましょう。なにが入っているのか明確にするために、表面に「始末書」と書くのも忘れないでください。

  • 始末書とは?

    始末書は会社の規定にしたがって正しく書きましょう

始末書の書き方のポイント

始末書を書くときに気をつけるべきポイントを説明します。

  • 始末書作成のポイント

    始末書作成時のポイントは? (※始末書イメージ)

うそは書かない

まず始末書に関わらず、してはいけない当たり前のことですが、うそは書かないようにしましょう。正しい事実関係を述べるのが始末書。あとからうそが発覚した場合、自分にとって不利益な結果を招くことは明白です。

年月日、日時を明確に明記する

書類の作成日もしくは提出日を明記しましょう。文中での年月日は、西暦か和暦か混同しないようにし、表記は社内規定に従います。また、事実関係を述べるときは年月日に加えて、できるかぎり時刻も書きましょう。

分かりやすく簡潔に書く

事実をしっかり述べるのは大切ですが、だらだらと書くのではなく、相手に伝わりやすい文章で書かことが大切です。

提出するタイミングを考える

当該の事態が収束したら、なるべく早く始末書を提出しなければなりません。まだ収束していない場合は、上司か担当者と相談して決めましょう。また、その際には途中経過をこまめに報告することも重要です。

始末書の提出期限が指定されていた場合、その指示に従いましょう。

  • 始末書作成のポイント

    始末書は簡潔にわかりやすく書くことを心がけましょう

始末書の例文

トラブル別の始末書の例文を紹介します。参考にしてみてください。

遅刻したとき

繰り返し遅刻をし、会社に迷惑をかけたときの例文です。

私は今まで何度も注意を受けたにも関わらず、令和〇年〇月から〇月までの〇ヶ月間、〇回も遅刻を繰り返しました。その結果、会社と職場の方々に対して多大なるご迷惑をおかけいたしました。

原因としましては、私の社会人としての自覚と鍛錬が欠けているためであり、弁解の余地はございません。心からお詫び申し上げます。

これからは自己管理を徹底し、早目の行動を心がけて信頼回復のために誠心誠意邁進していく所存でございます。 また、与えられた業務を遅滞なく全うするよう全力で業務に励むことを誓います。なにとぞ寛大な措置を賜りますようお願い申し上げます。

以上

交通事故を起こしたとき

出勤前の交通事故や、社用車で交通事故を起こしてしまった際に使える例文を紹介します。

私は、令和〇年〇月〇日午後〇時〇分頃、〇〇小学校前の交差点にて、赤信号で停止していた車に後ろから衝突する事故を起こしてしまいました。原因は考え事をしていたことによる前方不注意です。 当日は、取引先へ向かう途中でしたが、仕事のことで頭がいっぱいで、注意力散漫の状態でした。

私は軽い怪我で済みましたが、追突した相手方は頭を強く打ってしまい、現在入院中です。また、社用車と相手方の車両2台が破損したため、修理が必要となりました。 事故処理は、会社加入の自動車保険が適用され、相手方も納得のうえで示談が成立しています。

今回の事故で、会社に多大な迷惑と損害を与えてしまったことを深く反省しております。今後はこのような不始末を繰り返さないよう、業務中は特に安全運転を意識し、常に適度な緊張感を持って業務に取り組むことを誓います。

以上

破損させてしまったとき

会社の備品や商品など、何かを破損させてしまったときに使える例文を紹介します。

私は、〇年〇月〇日にイベントで使う機材を運んでいる途中、業務用パソコンを誤って破損させてしまいました。 本来ならば、会社から支給されているパソコンケースに入れて持ち運ぶべきところを、ケースに入れずそのままの状態で運んでしまい、かつ搬入作業中によそ見をして落下させてしまったことが原因です。
会社に多大な損害を与えてしまったことを深く反省しております。 同じことを繰り返さないよう、今後は必ずパソコンケースに入れて持ち運び、作業中はよそ見をせず慎重に取り扱うようにいたします。 この度はご迷惑をおかけし誠に申し訳ありませんでした。
以上

社外への始末書を書くとき

発注や納品ミスなどにより社外へ始末書を提出することもあります。社外へ始末書を提出するときの例文を紹介します。

この度、貴社からの発注を受けました〇〇の品数を誤って発送し、貴社の販売に遅延を発生させてしまいました。多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

弊社から発送しました商品が大幅に少なかったことで貴社の営業に影響を及ぼしたことについて、極めて重大な問題であると認識しております。

従来、弊社では依頼書に基づいた配送管理に細心の注意を払っておりますが、今回のミスについては調査が進行中です。今後二度と同じことが起こらないように管理体制を見直し、改善策を立てていきます。この度は誠に申し訳ありませんでした。

以上

  • 始末書の例文

    誠意をもった行動が大切です

始末書による処分

始末書提出に関する規則もいくつか存在するので紹介します。始末書を提出したら、自身の行動をより一層気をつけましょう。

二重処分禁止の原則

二重処分禁止の原則とは、1つの違反行為に対して会社は二重に処分を行うことはできないという原則です。例えば、けん責処分の決定がなされたあと、違反者が始末書の提出を拒否したとします。

この場合、違反者が指示に従わなかったからといって、さらに厳重な処罰や処分を命令することはできません。なぜかというと一度処罰を決定してしまっているからです。これが二重処分禁止の原則です。

始末書提出後にも改善が見られなかったら

始末書提出後にも改善が見られなかった、もしくは改善の見込みがないとされた場合、会社側は就業規則により懲戒解雇や諭旨解雇などの重い処分を決定できます。

始末書を提出したら、二度と同じことが起こらないように細心の注意を払いながら過ごすことが大切です。

始末書の提出は強要できない

会社が社員に始末書の記入または提出を強要することはできません。なぜなら、始末書はミスやトラブルを起こした社員本人の反省の気持ちや謝罪の意を記す文書だからです。

これは日本国憲法の「思想・良心の自由」に基づいています。思想は個々人のものなので、始末書の提出を強要すると、「思想・良心の自由」を侵害すると見なされます。

始末書提出後は誠意のある行動を

業務上のミスやトラブルを完全に避けることはできませんが、始末書を書くような事態が発生するということは、会社へ不利益が生じています。

始末書を提出する理由は人それぞれ違いますが、言い訳や保守的な発言をするのではなく、まずは誠意を持って謝罪することが大切です。そのあとは、自分の行動を見直し、再発防止や改善に向けて行動することで、失った信頼を回復することにもつながります。

  • 始末書による処分

    始末書についてしっかり把握しましょう

始末書について正しく理解しましょう

始末書の役割や書き方などについて解説しました。始末書はトラブルの種類によって書き方が違いますし、書く上で注意する点がいくつもあるので、入念に確認してから作成するようにしましょう。

ミスは誰にでも起こりうることです。その失敗を反省して、次の行動に生かすことが大切になります。始末書を書くことになったときは、以後の誠意ある行動が信頼回復に繋がります。正しい始末書を提出して、誠意を持った行動を心がけましょう。