――ここからは『仮面ライダーゼロワン』テレビシリーズについてお聞きしたいと思います。まずは、天津垓で出演が決まったときのお気持ちからお願いします。

役者になりたい、と思った時点から仮面ライダーシリーズはひとつの目標にしており、以前からオーディションを受けていました。『ゼロワン』で天津垓役に僕を選んでいただけて、本当にうれしかったです。受かったよと知らされたときは、思わず「変身できますか?」と質問をしました(笑)。最初はまだ仮面ライダー役だとは知らされてなくて"けっこう重要な役"とか"社長"だとか、簡単に言われていただけでした。実際、最初に出演したときは出番も少なくて、この人物は本当に仮面ライダーに変身するのかな、ともどかしい思いがありましたね。

――放送当時、22歳だった桜木さんが45歳の天津垓を演じることについては、どう思われましたか。

驚きましたが、或人の祖父・飛電是之助(演:西岡德馬)との関係性から、そういう年齢設定になったと聞いて納得しました。出演して間もないころは、まだ設定が固まっていなかったこともあり、40代には見えない芝居をしていたように思います。途中になってから垓の実年齢が45歳だと知り、今のままではダメだ、もっと貫禄を出さないと……と考えて、体重を増量したり、電車の中で40代くらいの方々の様子をそれとなく観察してみたり、意識して役作りをしました。仮面ライダーサウザーのスーツアクションをされていた永徳さんはリアル40代でしたし、変身後のサウザーを見るとまさに貫禄たっぷりですから、永徳さんに僕がどんどん"寄せて"いった感じです。

――天津垓の場合、画面に登場すると必ず"垓のテーマ曲"というべき、妖しさを感じさせる音楽がかかる演出が、とてもいい雰囲気を出していました。

ああいった演出にはシビれるものがありますね。姿を見せずとも、あの音楽が鳴ればそこに天津垓がいるかのような……。キャラクター個別のライト・モチーフがあるというのは『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーみたいで、とてもいいと思いました。僕は『スター・ウォーズ』シリーズが大好きで、俳優として将来はぜひ『スター・ウォーズ』の世界に何らかの形で携わってみたいと夢見ているんです。

――テレビシリーズの終盤、それまでの悪行を改め、謝罪した天津はZAIAジャパン社長の座を解かれ、「サウザー課」課長という立場から或人たちに協力する立場へと転身を遂げました。映画『REAL×TIME』では、共に世界の脅威に立ち向かおうとしていながら、過去の恨みをひきずっている仮面ライダーバルキリー/刃唯阿(演:井桁弘恵)をはじめとする仲間のライダーたちから、終始ぞんざいな扱いを受けている垓が哀愁と笑いを誘っていましたね。特に戦いが終わった直後、独りぼっちになってもめげずにポジティブな言葉を発する垓の姿には、強いインパクトがありました。

あのシーンでの垓のセリフは台本になく、僕のアイデアで入れたものなんです。撮影の前に杉原輝昭監督とお会いして、「ここなんですけれど、次のシーンに移る前に"天津垓のひとこと"で締めておきたい」と僕から提案したら「じゃあ本番までに何かセリフを考えてきて」と言ってもらえたんです。テストのときからいろんな言葉を試してみたのですが、最終的に"自分に言い聞かせる"つもりで完成作品のようなセリフに決めました。カメラ目線で一言話して、さっとハケていくほうが印象に残るかなと思い、わりと好きにやらせていただきましたね(笑)。『REAL×TIME』はシリアスなドラマが展開しましたが、僕やアキラ100%さん(野立万亀男役)、ゲストヒューマギアのみんなが適度にコミカルな部分を入れ込んで、観客のみなさんを飽きさせないようないいアクセントになったんじゃないでしょうか。

――『ゼロワン』出演を通じて、強く心に残った出来事を教えてください。

昨年「緊急事態宣言」で多くの人たちが外出自粛を余儀なくされていたころに、ひとりの高校生男子から応援のお手紙をいただきました。そこには「現在はコロナ禍のせいで学校にも行くことができず、心を病みそうになりましたが、『ゼロワン』の天津垓さんから勇気をもらって、立ち直ることができました」というメッセージが書かれていたんです。この手紙を読んだとき、しみじみと『ゼロワン』に出演することができてよかったと思いました。自分が演じたキャラクターが、誰かに勇気とか元気を与えられたんだと実感したからです。

現在もまだまだ厳しい状況ですけれど、こういう時代だからこそ、たくさんの人々にエンターテインメントの力、映像作品の力を伝えられるよう、もっと頑張っていきたいと思います。『仮面ライダーゲンムズ -ザ・プレジデンツ-』、どうぞよろしくお願いいたします。

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