長期に積立分散投資ができる「つみたてNISA」は、私たちの資産形成を支えてくれる税制優遇制度です。このつみたてNISAにはどのようなメリットがあり、どの程度節税効果が見込まれるのでしょうか。
本記事では「つみたてNISA」のメリット・デメリットを解説し、一般的なNISAやiDeCoとの比較をご紹介します。
iDeCoの節税効果はどれくらいなのか、計算してみよう!
つみたてNISAとは?
つみたてNISAとは、少額から積立・長期・分散投資ができる非課税制度のことで、2018年から始まりました。20歳以上なら誰でも利用でき、積み立ての途中でも自由に引き出しができます。
NISAとつみたてNISAの違い
つみたてNISAに先行して2014年から始まっているNISAも同じく非課税制度ではありますが、両者にはいくつかの異なる点があります。具体的にみていきましょう。
NISAは、年間120万円まで5年間にわたって非課税で投資ができます。5年が経過したら、ロールオーバー(非課税期間が終わった金融商品を新たなNISA口座に移すこと)で引き続き非課税投資を続けられます。投資方法も積立だけでなく、個別株式やJ-REITなどさまざまな金融商品を購入することができます。
つみたてNISAは年間40万円まで20年間非課税で投資ができますが、その方法は積立投資のみとなっています。また、20年の非課税期間が終わったら、ロールオーバーはできません。
NISAとつみたてNISAは成年後に利用できるため、2023年1月からは引き下げられた成年年齢の18歳から利用できるようになります。また、NISAは2024年になると新制度に生まれ変わり、NISAとつみたてNISAが2階建てになった新しい仕組みが取り入れられる予定です。
つみたてNISAの対象となる金融商品
つみたてNISAの対象となる金融商品は、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託、ETF(上場投資信託)です。しかも、「販売手数料がゼロである」「信託報酬が一定水準以下である」「信託期間は20年以上である」「毎月分配型ではない」といった厳しい要件を満たしたものに限定されています。
NISAとiDeCo、どっちが節税効果が高い?
iDeCoは運用益が非課税で、掛金も全額が所得控除となります。老齢給付金として受け取る際も、一時金で受け取れば退職所得控除が、年金で受け取れば公的年金等控除が適用されます。
一方で、NISAやつみたてNISAは運用益のみが非課税で、その他には税制優遇措置はありません。これらの点から、NISAよりもiDeCoのほうが節税効果は大きいといえるでしょう。
つみたてNISAのメリット
ここからはつみたてNISAのメリットとデメリットを見てみましょう。つみたてNISAのメリットとしてあげられるのは以下の5つです。
(1)運用益が20年間非課税になる
通常、運用益には20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%+地方税5%)の税金がかかります。その点、つみたてNISAでは運用益が非課税になり、その恩恵を最長20年間受けることができます。
(2)少額から始められる
資産運用というと、ある程度まとまった資金が必要になりそうで、運用初心者にとってはハードルが高くなりがちです。その点、つみたてNISAでは1,000円程度から始められ、金融機関によっては100円や500円から始められるものもあるので、利用しやすくなっています。
(3)低コストで運用できる
つみたてNISAの特徴の一つとして、コストがあまりかからない投資信託が対象になっている点があげられっます。コストは大きな負担になりますが、つみたてNISAなら気にせず安心して運用できます。
(4)ドル・コスト平均法を実践できる
資産運用で価格変動リスクを軽減させる方法の一つに「ドル・コスト平均法」があります。これは、毎月決まった金額ずつ金融商品を購入していく方法です。例えば、投資信託を毎月積み立てていく場合、基準価額が下がったときは多く購入し、基準価額が上がったときは少なく購入することで、平均購入単価を下げることができます。
平均購入単価が下がるということは、値上がりしたときに利益を得やすくなるということです。つみたてNISAでは、このようなドル・コスト平均法を実践できます。
(5)買いのタイミングを判断する必要がない
投資では、買い付けのタイミングも大事になります。そのため、タイミングをつかみきれない運用初心者には難しく、なかなかチャレンジしづらいものがありました。ただし、つみたてNISAは毎月積み立てて購入していく方法のため、買いのタイミングを判断する必要がありません。
つみたてNISAのデメリット
メリットがわかったところで、デメリットも理解しておきましょう。
(1)元本割れする可能性がある
つみたてNISAで利用できる金融商品は、日々基準価額が変動する投資信託です。場合によっては元本割れすることがある点は理解しておきましょう。
(2)投資できる金融商品が少ない
一般NISAでは、投資信託だけでなく国内外の株式やREIT(不動産投資信託)など購入できる商品は多岐に渡ります。しかし、つみたてNISAで投資できるのは、一定の要件を満たした投資信託のみとなっています。
(3)損失が出たときに税制優遇措置がない
一般的な金融商品の運用では、利益の出た商品と赤字になった商品があるとき、利益と損失を相殺できる「損益通算」ができます。ほかにも、損失が出た場合、翌年から3年間損失を繰り越せる「損失の繰越控除」も利用できます。しかし、つみたてNISAの場合は、損失が出ても損益通算や損失の繰越控除も利用することができません。
(4)所得控除の対象ではない
iDeCo(イデコ)は掛金の全額を所得控除できます。しかし、つみたてNISAでは積み立てた金額が所得控除になるという制度はありません。
つみたてNISAの注意点
つみたてNISAを利用する際は、注意しなければいけない点をきちんと理解しておく必要があります。ここでは、主な注意点を3つ解説します。
利用限度額(非課税)
つみたてNISAが非課税で利用できるのは、年間40万円までです。もし40万円を超える場合は、買い付けが行われなくなるので注意が必要です。1年間で40万円を投資に使い切りたい場合、月々の積み立て上限額は33,333円となります。
非課税期間終了後の運用
一般NISAでは、5年間の非課税期間が終了したときは、翌年から5年間、非課税で再投資ができます。これをロールオーバーと言いますが、つみたてNISAでは、残念ながら20年の非課税期間が終了したら、ロールオーバーをすることができません。
その後は特定口座か一般口座などの課税口座に移行して積立投資をすることはできます。しかし、移行後に得られた運用益は課税されるので注意しましょう。非課税期間に得られた運用益に関しては、課税されることはありません。
既にNISA口座がある場合の始め方
NISAとつみたてNISAは同時に口座を持つことはできず、どちらか一方を選択しなければなりません。すでにNISA口座を持っているようでしたら、5年間の非課税期間が修了したら、年単位でつみたてNISA口座に移行できます。その際、利用する金融機関に「非課税口座異動届出書」を提出します。
まとめ
つみたてNISAは、少額からの金額で20年間という長期にわたって積立分散投資ができる非課税制度です。金融機関によっては100円からでも始めることができ、運用益が非課税になります。
長期にわたりある程度の節約効果は得られますが、iDeCoのように掛金の所得控除の対象とはならず、損益通算などの税制優遇措置を受けられません。ただ、投資において価格変動リスクを軽減できるドル・コスト平均法を実践するこができるので、長い目で見て利用を検討してはいかがでしょうか。