iDeCo(個人型確定拠出年金)は運用益が非課税だったり掛金の全額を所得控除できたりと、節税が期待できる制度です。ただ、節税の恩恵を受けるには年末調整や確定申告が必要です。そこで今回は、iDeCoを利用した際の年末調整と確定申告のやり方や、つみたてNISAとの比較や節税をする際の注意点を解説いたします。

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iDeCoとつみたてNISAの違い

税制優遇を受けながら資金を積み立てていくiDeCoと、一定の投資信託に投資して得られる運用益や配当金が最長20年間にわたって非課税になる「つみたてNISA」。どちらも節税しながら、将来の生活費を補てんするのに役立つものですが、以下にあげたような項目において違いがあります。

  1. 最低投資金額
  2. 年間の投資可能金額
  3. 運用可能期間
  4. 非課税対象
  5. 資金の引き出し
  6. 投資できる商品
  • iDeCoとつみたてNISAのそれぞれの特徴(※)公的年金の加入状況により異なります

このうち、最低投資金額と投資可能金額、非課税対象をもう少し詳しくみていきましょう。

【最低投資金額】

iDeCoは5,000円以上から1,000円単位で掛金を設定しますが、つみたてNISAの場合、多くは1,000円程度から始められ、金融機関によっては100円からでも投資可能となっています。

【投資可能金額】

iDeCoの投資可能金額は、自営業者や個人事業主など国民年金の第1号被保険者は年額81.6万円まで、会社員や公務員の第2号被保険者は年額14.4万円から27.6万円まで、専業主婦(夫)の第3号被保険者は年額27.6万円までと、公的年金の加入状況や勤務先で加入する企業年金により異なります。その点、つみたてNISAは20歳以上であれば誰もが年40万円まで非課税運用が可能です。

【非課税対象】

非課税対象を見ると、iDeCoは運用益だけでなく掛金も所得控除が受けられることから、節税効果が高いと言えます。また、iDeCoは60歳まで引き出すことができないため、老後の資金を確実に貯められるでしょう。反面、つみたてNISAはいつでも引き出せるため、急にまとまった資金が必要になったときに利用できます。

年末調整の方法

iDeCoで節税の恩恵を受けるためには、年末調整もしくは確定申告が必要です。ここからは、年末調整と確定申告をするために準備しておく書類や、手続きの方法を解説します。

まずは年末調整からみていきましょう。会社員と公務員は、毎年年末調整をするときにiDeCoの手続きも一緒に行います。

【手順1:小規模企業共済等掛金払込証明書を入手する】

初回の掛金を払い込んだ時期が1月~9月の場合は、10月下旬ごろになると国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が郵送されてきます。これは年末調整に必要なので、必ず保管しておきましょう。

ただし、掛金の払い込みを開始した時期が10月以降の場合は11月下旬~翌年1月下旬ごろに払込証明書が届きます。この場合は年末調整には間に合わないので、確定申告で手続きをします。

【手順2:年末調整の書類を作成する】

年末調整の時期になったら、会社から「給与所得者の保険料控除申告書」をもらいます。その申告書の右下にある「小規模企業共済等掛金控除」の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の欄と「合計(控除額)」の欄に、郵送で届いている小規模企業共済等掛金払込証明書に記載してある「合計金額」を記入します。

【手順3:勤務先に提出する】

給与所得者の保険料控除申告書に必要事項を記載したら、小規模企業共済等掛金払込証明書を添付して勤務先に提出します。

掛金が給与天引きになっている人(事業主払込を指定している人)は、勤務先が手続きをしてくれますので、年末調整での手続きは必要ありません。

確定申告の方法

もしも年末調整に間に合わなかった場合は、忘れず確定申告で手続きをしましょう。

【手順1:小規模企業共済等掛金払込証明書を入手する】

国民年金基金連合会から郵送されてくる小規模企業共済等掛金払込証明書は、確定申告の時期まで保管しておきます。

【手順2:確定申告書を作成する】

会社員と公務員は「確定申告書A」を使います。自営業者や個人事業主は事業所得を申告する際、一緒に処理をします。申告書は「確定申告書B」を使用します。

まず、確定申告書の第一表の左側「所得から差し引かれる金額」の2つ目にある「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、小規模企業共済等掛金払込証明書に記載してある「合計金額」を記入します。

次に、第二表の右側にある「小規模企業共済等掛金控除」の「保険料等の種類」欄に「個人型確定拠出年金」と記入、「支払保険料等の計」と「合計」に合計金額を記入します。

【手順3:税務署に提出する】

確定申告書を作成したら、小規模企業共済等掛金払込証明書を添付して、確定申告期間(原則2月16日~3月15日)に住所地を管轄する税務署へ提出します。

確定申告書は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、ネット上で必要事項を入力するだけで確定申告書を作成できます。また、マイナンバーカードがあり電子証明書を取得している人は、e-Taxでの申告が可能です(電子証明書は役所で取得できます)。

その際の添付書類は、記載内容を入力することで添付に代えることができます。e-Taxで申告したときの添付書類は、法定申告期限から5年間保管しておく必要があります。

このように年末調整もしくは確定申告をすることで、iDeCoの掛金分に相当する所得税が還付され、翌年の住民税が減額となります。

年末調整をした場合は、12月か遅くとも翌年の1月には所得税が還付されます。住民税は翌年6月以降の納付分が軽減されます。確定申告をした場合は、4月~5月ごろに指定した口座へ還付金が振り込まれます。住民税は年末調整と同じく、翌年6月以降の納付分が軽減されます。

iDeCo(イデコ)で節税する際の注意点

iDeCoに加入すると老後資金の補てんができ、加えて節税ができます。とても役立つ制度なのですが、ぜひ頭に入れておきたい注意点が3つあります。

60歳まで引き出すことができない

1つ目の注意点は、原則60歳まで引き出せない点です。定期預金や積立定期預金、あるいはつみたてNISAなど、通常の預貯金や運用ではいつでも引き出しが可能です。急にまとまった資金が必要になったとき、自由に引き出しができるのはとても助かります。

しかし、iDeCoは60歳になるまではお金を引き出すことができません。もし急な出費が必要になっても、iDeCoの掛金は利用できないため、他の貯蓄も持っておいたほうが安心かもしれません。ただ、見方を変えれば、引き出しができないことは、老後資金を確実に貯められることにつながるので、利用価値はあるのではないでしょうか。

資産が減る可能性がある

2つ目の注意点は、運用成績によっては資産が減る可能性があることです。iDeCoで利用できる金融商品の多くは投資信託のため、価格が変動します。運用成績がよくなれば資産は増えますが、運用成績が悪くなれば元本割れする可能性があるのです。

ただ、定期預金や保険など元本確保型の商品もあります。資産運用でリスクを抑えるには、分散投資が有効です。そのため、1つの金融商品に絞るのではなく、投資信託でも株式や債券あるいは国内や海外など投資対象を確認し、複数の商品に分散するのがよいでしょう。

手数料がかかる

3つ目の注意点は、iDeCoは手数料がかかる点です。どれくらいの手数料がかかるのかというと、2021年3月現在では、加入時手数料として2,829円、口座管理手数料として毎月105円、資産管理手数料として毎月66円がかかります。

この他にも金融機関によっては運営管理手数料がかかる場合もあります。そのため、元本確保型の商品を選択したからといっても、必ずしも安心できないかもしれません。なぜなら、場合によっては手数料で資産が減る可能性もあるからです。金融商品を選ぶときは、異なる金融機関で手数料を比較したうえで決めるのがよいでしょう。

まとめ

iDeCoは節税効果のある制度です。とはいえ、掛金を納めるだけでは節税の恩恵を受けることはできません。節税のためには、会社員や公務員は年末調整で、自営業者や個人事業主は確定申告で手続きをする必要があります。

郵送されてくる小規模企業共済等掛金払込証明書は、年末調整あるいは確定申告の際に添付するので、必ず保管しておきましょう。会社員や公務員の人で年末調整の時期までに小規模企業共済等掛金払込証明書が届かない場合は、忘れず確定申告で手続きをしましょう。