沢田研二と菅田将暉がW主演を務める、映画『キネマの神様』(8月6日公開)の主題歌が9日、明らかになった。

  • 左から菅田将暉、野田洋次郎

    左から菅田将暉、野田洋次郎

  • レコーディング風景

    レコーディング風景

本作は、小説家・原田マハの同名小説を原作に、「松竹映画100周年記念作品」として山田洋次監督がメガホンを握る。ギャンブル漬けで借金まみれのゴウ(沢田研二)は妻の淑子(宮本信子)と娘の歩にも見放されたダメ親父だが、たった一つ「映画」を愛していた。若き日のゴウ(菅田将暉)は助監督として撮影に明け暮れる傍ら、食堂の娘・淑子(永野芽郁)に恋をし、映写技師・テラシンとともに夢を語らい、青春の日々を駆け抜けていた。しかしゴウは初監督作品『キネマの神様』の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。半世紀後の2020年、『キネマの神様』の脚本が出てきたことで、沈みかけていたゴウとその家族は再び動き始める。

映画劇中、撮影所で働く盟友として熱い絆を結んだ菅田と野田洋次郎が、RADWIMPS feat.菅田将暉として初タッグを組み、主題歌「うたかた歌」を歌唱することが決定。野田が作詞作曲を務め、ゲストボーカルとして菅田を迎えた本楽曲は、劇中のゴウとテラシンの役柄と重なり合うように、歌詞に合わせて歌い分けがされている。

野田は「撮影中に歌の言葉の断片みたいなものをちょっとずつためていました。全部の撮影が終わった時に、感謝の気持ちを込めて「監督にこのデモをお渡しください」という感じで贈ったのが一番最初です」と、初めは主題歌と意識して制作した楽曲ではなかったと明かす。野田からデモを受け取った映画のプロデューサーが曲に感銘を受け、「過去と現代、現実と虚構、そして天国を繋ぐこの特別な曲を、ゴウとテラシンを演じた菅田さんと野田さんに歌ってもらい、主題歌とすることで映画が完成すると確信した」と、主題歌に決定した。

野田と共に主題歌を担当することになった時、菅田は「いやびっくりしました。 謎でした」と驚いたという。初タッグとなる2人のレコーディングでは、1回目は難しくて表現しきれなかったという菅田に、野田がアドバイスのメールを送り、菅田は「2回レコーディングしたんです。それが良かったですし、今思えば、山田組っぽいですよね(笑)。良い作品にするためにリテイクするって」と縁を感じているようだった。

野田洋次郎・菅田将暉 コメント

・「うたかた歌」の曲のイメージはいつ頃から浮かんでいたのでしょうか?

野田:最初は主題歌になるとかならないとかそういう話は全く無く、撮影中に歌の言葉の断片みたいなものをちょっとずつためていました。全部の撮影が終わった時に、感謝の気持ちを込めて「監督にこのデモをお渡しください」という感じで贈ったのが一番最初です。

・撮影時の感情や想いも影響してますか?

野田:そうですね。とても影響してました。特に志村さんが亡くなったこともあり、それは一つ香りとして残したいと思いましたし、僕たちが通ってきた感情みたいなものを歌詞で残しておきたい、僕らが生きたあの撮影所の雰囲気を音にできないかと思ってました。

・菅田さんは野田さんと一緒に主題歌を担当することが決まった時どう思いましたか?

菅田:いやびっくりしました。謎でした。こんなありがたいことはないです。クランクアップした少し後に、野田さんから感謝の気持ちとして「こんなのできたから」ということでこの曲のデモを送ってもらって、それを聴いて「わぁ〜!」と思っていたので、なんだか不思議な気持ちでした。

・撮影中はゴウとテラシンという、撮影所で共に働く盟友として共演されましたが、そんなお二人で一緒に主題歌をレコーディングされていかがでしたか?

野田:そもそも作っていく段階で、自分はテラシンとして出演してるのにゴウの気持ちも歌として歌詞にしたためながら、すごい不思議な気持ちというか、難しいなという気持ちもありました。どこかでテラシンとゴウを行き来しながら歌詞を書いていたんですけど、二人に共通する想いもあるだろうし、そういった過程を経てこれでいけるなとなりました。レコーディングは楽しかったですね。菅田君が色んな表情や色んなテイクを見せてくれたので。
菅田:楽しかったですし贅沢な時間でした。2回レコーディングしたんです。それが良かったですし、今思えば、山田組っぽいですよね(笑)。良い作品にするためにリテイクするって。1日やって本当に難しくて表現しきれなかったこともたくさんあって、もう一回やることになりました。すると野田さんが「こういう風なリズムでやると歌いやすくなるかも」といったメールをくれて。それがとても良かったです。主題歌では野田さんが演出家で僕が演者みたいな気持ちでした。

・野田さんから見て菅田さんの歌い手としての魅力は?

野田:まず声が素晴らしいですね。人に届く声を持ってる。山田監督とも話したのですが、演技をする時の声もおそらく相手に届く声というのが間違いなくあって、それを間違いなく持っていて。どうやって声を届けたら相手に伝わるか、どんな風に相手の中に言葉を残していくか、という部分を本能的にやっていて、それは歌でも共通してあるので、「この歌を聞いた人の中に届けて残すんだ」という強さみたいなものを感じました。

・実際に完成した映画を観て、エンドロールでこの主題歌を聞いた時どう思いましたか?

菅田:本来なら自分が歌っているということで緊張感やドキドキがあるんですけど、その前に映画の内容が響いていたので、不思議とスッと聴くことができました。途中で「あっ、歌ってんだ!」と気づくみたいな。今思うと馴染んでいたのかなと、安心しました。お客さんとしては映画の内容と自分の人生と色々なものが繋がっていく感じで、聴いていて心地良かったですね。

・主題歌を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いいたします。

野田:「うたかた歌」がもうすぐ皆さんのところへきっと届くと思います。僕自身本当に大好きな曲ですし、『キネマの神様』があったから生まれた曲で、あの世界が音としてもこの世にずっと残っていって欲しいという願いがずっとあったので、本当に心から嬉しく思っています。あの映画で描かれている世界の美しさみたいなものがいつまでもいつまでも、あの曲を聴くことでよみがえってくれたら本当に嬉しいです。そして僕らの不思議なコラボレーションですね。菅田君の新しい魅力が詰まっていると思います。
菅田:本当に勉強になりました。完成版の楽曲は、映画のエンディング版とは曲の尺が違うので、フル尺でもぜひ聴いてもらいたいですね。

房プロデューサー コメント

「途中、作りながら志村さんのことやいろんなことを考えてしまいました。ゴウの気持ちで作りはじめたんですが、気づいたらサビはテラシンの気持ちのような言葉が出てきました。あまり深く考えず、まずは参加できたお礼としてお渡しします」
野田さんからデモとともに、このようなメッセージをいただきました。ゴウがまとう繊細な狂気や色気、それを包み込む淑子の愛情、二人を暖かく見守り続けたテラシンの葛藤。器用に、時に賢く立ち回れるような時代に対して、まっすぐな気持ちのこの歌がきっと多くの人の心を動かすと思いました。過去と現代、現実と虚構、そして天国を繋ぐこの特別な曲を、ゴウとテラシンを演じた菅田さんと野田さんに歌ってもらい、主題歌とすることで映画が完成すると確信しました。

(C)2021「キネマの神様」製作委員会