俳優の菅田将暉と有村架純がW主演を務める、映画『花束みたいな恋をした』が現在公開されている。脚本家・坂元裕二が書き下ろした初のオリジナル恋愛映画となる同作は、東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦(菅田)と八谷絹(有村)の5年間を描く。

それぞれの思いが丁寧に描かれたラブストーリーとなった同作は、公開されるや否や「傑作」との呼び声高く、「ボロ泣きした」「すごくリアル」という感想も。公開週の興行収入ランキングでは、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を抑え、興行収入&動員数それぞれ1位に輝いた(興行通信社調べ)。今回は菅田にインタビューし、同作に感じたことや、この時代に考えていることについて話を聞いた。

  • 映画『花束みたいな恋をした』に出演する菅田将暉

    菅田将暉 撮影:宮田浩史

■特別なことをしていない、自然な作品

――完成した作品を見て、菅田さんの感想はいかがでしたか?

本当に素晴らしかったです。自分が出演していると、初見から客観的に「いいな」と思えることって多くはないんですけど、今回は最初に観た時から素直に「いい映画だな」と思えましたし、自然な作品でした。坂元さんの脚本、土井監督の脚色が素晴らしかったのだと思います。僕たちは特別なことをしていなくて、脚本に書いてある通り、素直に演じただけなんです。「こういう人物にしよう」「こういう2人にしよう」ということは一切なくて、楽しい日々は楽しく、悲しい日々は悲しく、書いてあることをただ演じました。決して大きな事件があるわけでもないし、2人のどちらかが良いとか悪いとかでもないし、ハッピーエンドでもないけど、ハッピーエンドにも見えるという、削ぎ落とされた作品で、好きでした。

――「ラブストーリーをやりたかった」と坂元さんにおっしゃったと聞いていますが、何か理由があったんですか?

なんでなんだろう。この質問、よくされていて僕も不思議なんですけど、魔が差したのかな?(笑) 坂元さんのラブストーリーが好きというのありましたし、カルチャーとの距離感、現実との距離感がいい感じに入り乱れた作品を書いてくださる方だという信頼がありました。あとは、僕自身が日常に近い普遍的なラブストーリーをこれまでほとんど演じていなかったということもありました。瞬発力のある、衝動的なラブストーリーって20代特有のものだったりするから、「やりたい」と言った……のだろうなと思います(笑)。

――では、今回は思っていたラブストーリーになったということでしょうか。

そうですね! 思っていた以上のラブストーリーができました。

――W主演となった有村さんと、改めてがっつり共演しての印象はいかがでしたか?

本当に安心の塊でした。器の大きい方で、僕も共演していて楽しくて。こんなに自分の役のことだけを考えられる主演作ってなかったし、有村さん以外の誰が相手でも無理だったと思います。関西人だし同い年だし、キャリアも似ているところがあるから、得たものや悲しかったこと、いろんなことがマッチングするんです。感謝しかないです。

――この作品はカルチャー映画と言っていいのか、実在の映画や小説、音楽、お笑いや番組など固有名詞がバンバン出てくるところも面白いなと思いました。そういう点で共感するところも多かったでしょうか?

台本を読んだ時にも「すごいな」と思いましたし、伝わるリアリティも増えますよね。カラオケで歌っている曲ひとつにしても、きのこ帝国の「クロノスタシス」と提示されるだけで共感できるし、観ている方に伝わるものも明確で。演じる側としてもリアリティを持てるから、大きな要素でした。

――そういう文化的な空気の中で恋愛する感じは、実は観ている方が憧れちゃうところもあるのかな、と思いました。

面白いのは、いろんな方が感想を言ってくださる時に、大概の男性は絶望的に苦しくなっていて、女性はみんな「よかった」と笑顔なんです!(笑) 男性は現在進行形の辛い思い出のように受け取っていて、女性は一つの物語として受け取っている。これはやっぱり、何かあるんでしょうね。あんまり男女で分けるのは好きじゃないんですけど、この作品の反応に関しては100%に近いかもしれません。特に年代が上の方の男性は、みんな絶望したみたいに「僕も結婚する前に好きだった人がいて……」って、めっちゃ語り出す!(笑) 女性の方が、一種のエンターテインメントとして美しく楽しんでくれている感じがして、面白いです。恋愛の面白いところも、そこなのかもしれません。

――菅田さんはどっち側に近いんですか?

完全に、男性側ですね……絶望しかなかったです(笑)。ただ、関係者試写だと大人の方の感想しか聞けないから、10代の子たちが観た時にどう思うのかなというのは、ぜひ聞いてみたいです。冒頭の出会いや、付き合いが始まったばかりの時は想像できるだろうけど、その先の話が描かれているから、彼らが観た時に何を思うのかが気になります。別世界のものだと思って観るのかな? そんな君にもこういう日々が来るんだよ、というのも無粋ですし。カップルが観に行くのと、別れたばかりの方が観に行くのとでも全然目線が違うだろうから、どんな感想なのか楽しみです。

■俳優同士戦っている場合ではない

――今、世間は菅田将暉さんのことがすごく気になっているのかな、という空気も感じます。上の世代は素直に「すごいな」と思っていて、同世代はちょっと悔しいみたいな意見もあり、どちらにしても無視できない存在として大きいのかと思いますが、ご自身ではどのように感じていますか?

実際、そういった方の反応は全然わからないんです。同じ仕事をしている同世代の仲間は、ほぼ10代の頃から知っているから、そういうバチバチなものは何年か前に通り過ぎていて。今はもう、俳優同士、お互いに戦っている場合ではないと感じますし、「それどころではない」という感覚があります。だもちろんその中でも、個人のものづくりがお互いに刺激的であれば良いと思います。

――コロナ禍で、また違うステージにいったということでしょうか?

今はもう、そうですね……。いつまでコロナ禍なのかはわからないけど、以前の”当たり前”を1回忘れないと、滅入っちゃうから。できないことがたくさんあるのは仕方ないので、その中でできるものを全力で楽しんでいくしかないのかな、とは感じます。しかもこの状況は世界単位で、自分だけのものでもないわけで。

――今回の作品では、コロナ後の姿も少しだけ出てきます。改めてこの状況に思うことはありますか?

今の、この状況においての届け方って、本当に難しいです。でも僕としては、人と人が交わった時の面白さを忘れられずにいたらいいのかな、と思います。1人が楽で良いやというのももちろんあるけど、それだけだと寂しい。恋愛に限らず、仕事だったり友達だったり、他人とセッションする中で何かを生み出したいという気持ちは根源的な欲求だと思うから、今は減ってしまっているけど、今後のモチベーションにして頑張れたらと思います。

■菅田将暉
1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年に『仮面ライダーW』の史上最年少ライダーとしてデビュー。主演作『共喰い』(13年)で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞、『あゝ、荒野』(17年)で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞・第68回芸術選奨映画部門文部科学大臣新人賞を受賞。その他の主な映画出演作は『暗殺教室』シリーズ(15~16年)、『ディストラクション・ベイビーズ』『何者』『溺れるナイフ』(16年)、『銀魂』シリーズ(17、18年)、『帝一の國』(17年)、『アルキメデスの大戦』『タロウのバカ』(19年)、『糸』『浅田家!』(20)年など。公開待機作に『キネマの神様』(4月16日公開)、『キャラクター』(6月公開)、『CUBE』(21年公開)がある。