<テレビコントの台本作りは、まず放送作家やディレクターなど制作陣が練り、それを芸人側に提示するケースが多い。これまで自分たちの作ったネタを披露してきた芸人が多くを占める今回の番組では、どのように進めたのか。>

宮森:『ヤバいハートマーク』は、制作側で作ったものをベースにしつつ、芸人さんからのアイデアを盛り込んだコントもありますし、オンラインゲームをテーマにしたコントは、ニューヨークが普段「こういうやつヤバいよね」と思っている人をテーマにして作った感じですね。

橋本:『笑う心臓』は、作家として内村(宏幸)さんやそーたにさん、我人(祥太)さんというすごい方々に入ってもらってるんですけど、ちょっと濃い芸人さんにお声がけしてしまったので、持ってるものや匂いが強いだろうと思って(笑)、今回はいきなり当て書きするのではなく、芸人さんたちにわりとアイデアを出してもらってから作っていきました。ただ、その過程では作家さんや芸人さんと結構議論をしましたね。(ニッポンの社長の)辻くんとかは、夜1時間くらい長電話して「こっちで合ってるのかな」とか「どういうことがテレビコント的なものなんだろう」という話を真面目にしたりしましたから。

――“テレビコント的なもの”というのは、どんな部分なのでしょうか?

橋本:映像のコントって、テレビコントを経験していない彼らにとってはYouTubeなんですよ。そうすると、目の前にいるスタッフや演者を笑わせるというのを考えなくていいじゃないですか。でも、スタジオで撮るテレビコントっていうのは、スタッフが笑ったり、演者が笑ったりするという空気も含めて伝えていくものなので、その作り方はどうすればいいんだろうということも、結構議論しましたね。みんなわりと真面目だから(笑)

  • 『笑う心臓』「魔界バスケ」のセット (C)NTV

――『笑う心臓』で、野田クリスタルさんが台本を書いた「魔界バスケ」はすごい世界観ですよね(笑)

本田:最初の台本が来たときに、みんなで「何これ!?」ってなって(笑)。このままでは理解できなかったので、1対1で細かく話をしながら、野田さんの頭の中の世界を探る作業をしていく感じでした。それをまた美術さんに伝えてもポカンとされるので、「こういうイメージで…」と1つずつ説明しながら、どんな作品ができるのかワクワクしていましたね。

橋本:やっぱり、制作としては“見えないものをチョイスしたい”という思いがあるんです。特にコント番組においては、全部が見えるものではなくて、制作としてこれはどうすれば面白くなるのかと悩むものをチョイスすべきではないかと思うので、そこをやってみたんです。それは『有吉の壁』にも通じるものがあって、制作側が「これ面白くなるのかな…」という見えない企画を投げてみて、それに芸人さんがレスポンスしてくれて、こっちが編集で応えるという作り方。今回はそういう“遊びしろ”みたいなものを作っておくという実験なのかなと思ってます。

――ディレクターとして腕が鳴る、やりがいのある仕事ですね。

橋本:「魔界バスケ」は、野田くんに書いてもらったところからほとんど直してないんです。彼の頭の中そのものだから、あまり手を加えない方がいいかなと。ただ1つだけお願いしたのは、野田くんが原稿用紙に向かって書いている画を最初にワンカット入れるということ。つまり、“野田クリスタルの世界をみんなでやっている”ということが1つのメタの面白さになっているという構造で見せることにしたんです。

■チョコプラ長田、座長として番組を俯瞰

――『コントミチ』それぞれの番組で“座長”のポジションはどなたになるのでしょうか?

宮森:『ヤバいハートマーク』は、年次的にもチョコプラさんが一番上なので、自然と座長感がありましたね。最初にこの番組の企画を相談しに行ったとき、「令和の恋愛」をテーマにしてるのに、僕ら制作陣やご本人たち、作家さんも大ベテランの石原(健次)さんとかオークラさんとか、結構おじさんが多いので(笑)、長田さんが「このメンバーで、令和の恋愛を本当に切り取れるのか? その方法を考えないと」と、番組全体を俯瞰しておっしゃってくれたんです。確かに気をつけないとものすごいダサい番組になると思って、会議に20代前半のディレクターやそのお友達に入ってもらったり、今の若者たちはどういう恋愛をしているのかをおじさんたちで勉強会したりして、彼女たちの実体験もベースにしてコントにしていきました。

  • チョコレートプラネット

  • 野田クリスタル

  • (C)NTV

橋本:『笑う心臓』は、年次が上のマヂカルラブリーとシソンヌがそこそこおじさんだから(笑)、稽古のときからみんな大人で譲るところは譲って、お互いをちゃんと生かすという精神でやってましたけど、修学旅行のコントは、わりと野田くんがリーダーシップを発揮して仕切ってくれましたね。逆に、シソンヌはドーンと構えて見てる感じ。たぶん、シソンヌだけコント慣れのレベルが違うと思うですよ。『LIFE!』もやってるし、福田雄一さんの作品もやってるし、もうコントに関しては経験値が全然違うので、堂々と見守ってもらうイメージでした。

本田:僕もどんな感じで稽古していくんだろうと思ったら、野田さんが「こういうボケはどうだろう」とか、「こういう流れにしたらどうか」とか、いろんな案を出してくれて、すっごく真面目な印象を受けました(笑)

橋本:一番の収穫は、野田くんがめちゃくちゃ真面目に取り組んでくれるということでした。これ言ったら怒られるかもしれないですけど(笑)

■フワちゃんが見せた芸人魂

――ほかにも、新たな発見があった人はいましたか?

宮森:『ヤバいハートマーク』は、フワちゃんもユニットコントが初めてだったんですけど、彼女の中で芸人魂みたいなものがムクムクと大きくなっていたようで、今回チョコプラさんに対して、「こういうボケがしたいけど、本番まで絶対隠しといてほしい」と頑なに言ってたんです(笑)。芸人さん同士が本番にアドリブでやり合う感じに、自分も身を投じて勝負したいというのがあったみたいですね。

――『ヤバいハートマーク』は芸人さん以外でも、フワちゃんが乗り移った声優の内田真礼さんの弾けっぷりがすごいですよね(笑)

宮森:そうですね(笑)。稽古ではフワちゃんがフワちゃんの演じ方を内田さんへ直々にレクチャーするっていうおかしな時間があって(笑)。そのときは探り探りだったんですけど、本番までの1週間で完全に仕上げてきてくれて、僕らもびっくりするくらいフワちゃんが憑依してる感じでしたね。声優さんならではの演技力とプロ根性で、想像を超える仕上がりで臨んでいただきました。

  • フワちゃん

  • 内田真礼(左)と長田庄平

  • 『ハネノバス』草薙航基(左)と後藤拓実

  • (C)NTV

――新たな発見でいうと『ハネノバス』は、まさにそれが楽しめる番組ですよね。

本田:今回は第2弾なんですけど、もともとあの企画は、草薙くんと後藤くんというちょっとネガティブな性格を持っている2人で旅をしてみたらどうなるんだろうという発想で生まれたんです。でも、実際に打ち合わせしてみると2人がめちゃくちゃ仲が良く、後藤くんより5歳年上の草薙くんが、すごい“お兄さん肌”を出すのが新鮮で(笑)。テレビ番組ではいつもそうそうたる先輩や大御所の皆さんとやっているので、どうしても後輩のイメージが強かったんですけど、この2人になったら兄貴肌を出すのは新たな発見でした。そこを楽しめる番組にしようとなったときに、「羽根を伸ばして2人でプライベートの旅ができたら」ということで、後藤くんが「ハネノバス」というタイトルも考えてくれました。