両者後手番を制し、五番勝負の成績は1勝1敗のタイに

渡辺明棋王に糸谷哲郎八段が挑戦している将棋のタイトル戦、第46期棋王戦五番勝負第2局(主催:共同通信社)が2月20日に石川県「北國新聞会館」で行われました。挑戦者の糸谷八段が先勝して迎えた本局は、90手で渡辺棋王が勝利。両者1勝ずつを挙げ、改めて三番勝負となっています。

糸谷八段が先手番の本局は、両者得意の角換わりの戦型になりました。序盤で1筋の位を取った糸谷八段。普通ならこの位取りは先手のポイントになるはずですが、本譜は思わぬ攻撃を受けることになります。

渡辺棋王は早繰り銀で足早に仕掛けていき、銀交換を果たします。そして糸谷八段が右玉に囲った直後の42手目、なんと△1四歩と突いて糸谷八段の位を逆襲していきました。「持ち駒が角・銀・歩・歩になればこの仕掛けが成立することは知っていた」と渡辺棋王。先手に1筋の位を取らせたのも、渡辺棋王の周到なゲームプランによるものだったのです。

この仕掛けは予想外だった糸谷八段。「端が伸びているのがマイナスになってしまった。逆襲されるのはあまり考えてなかった」と局後率直に明かしました。

端攻めでペースを握った渡辺棋王は、飛車の入手に成功しました。右玉は自陣の最下段を飛車の横利きで守る戦法のため、飛車がいなくなると途端に陣形がもろくなってなります。それどころか逆に相手に飛車を下段に打たれると、利きを遮る駒がないため、一気に寄せ切られてしまいます。

実際、本譜も渡辺棋王が敵陣に飛車を打つことに成功し、勝負が決しました。何とか敵玉に2枚角で迫ろうとする糸谷八段でしたが、その攻めが渡辺玉に届くことはありませんでした。最後は渡辺棋王が竜を切り飛ばした後、自陣の飛車を成り込んで、糸谷玉を即詰みに打ち取りました。

この勝利で渡辺棋王は番勝負成績を1勝1敗のタイにしました。また、公式戦の連敗も3で止めることに成功しています。この3敗は棋王戦第1局、朝日杯準決勝、王将戦第4局といずれも大きな勝負ばかり。悪い流れを2月最後の対局で断ち切ることができました。

棋王戦第3局は3月7日に新潟県「新潟グランドホテル」で行われます。渡辺棋王はその前の3月1、2日に王将戦七番勝負第5局が控えています。こちらはあと1勝で防衛というところ。渡辺棋王としてはここで決着させて、棋王戦に専念したいところではないでしょうか。

周到な準備で勝利を収めた渡辺棋王(提供:日本将棋連盟)
周到な準備で勝利を収めた渡辺棋王(提供:日本将棋連盟)